【メビウスの迷宮・制作記録④】振り返り編
制作記録ラストです!
これまではゲーム設計の話がメインでしたが、テーマも語り尽くしましたのでゲーム制作全体の話を振り返っていきます。
ゲーム公開後も継続的にアップデートを行っていましたので、その内容についても触れていきます。
例によって話題が逸れることもありますが、ここは作者の自由帳なので好きに語ります。
開発初期
ゲーム制作でいちばん楽しい時期
制作記録①で語ったようにカードバトルのプロトタイプを作った後は、ゲーム全体の骨組みを作っていった。
初期はローグライトではなく事前にセットしたデッキを使い、ダンジョンを攻略していく方式だった。キャラクター強化も可能で、比較的RPGに近い作りだったと思う。
スクショはほとんど残ってないが、過去のポストがあったので貼っておきます。カード部分の表示など今とけっこう違いますね。
この頃から既にdustシステムなど本ゲームの根幹となる機能は存在しており、ちゃんとストーリーが完成すれば(一応)世に出せる代物ではあった。
だが肝心のクオリティはイマイチで、なんか自分でプレイしても面白くなかったため制作は中断してしまった。
原因は自分の中でもハッキリしていて、ゲームのテンポが悪く途中でダレやすかったのとストーリーとキャラがイマイチだったからだと自己分析している。
開発中期
ゲーム制作で必ず訪れる停滞期
ゲーム開発のモチベーションが尽きた後はインプットに集中し、フリゲや市販のゲームを遊んでいた(おそらく1年近く)。
いっぱい遊べてよかったね。
この頃はカードゲーム自体にモチベーションを失っていたので、普通にRPGを作ろうかと気まぐれにRPGツクールを触っていたりしたが、やっぱり気分が乗らなくてゲームは完成に至らなかった。
方向性を見失っていたことは自覚していたので、自分の作りたいモノは何かという原点に立ち返り、独自性を出す部分とそうでない部分をハッキリさせ、ゲーム制作に臨んでいった。
(どのような方針で制作したかは制作記録①の話に戻る)
方針が定まった後はストーリー制作も順調に進み(※)、無事4人キャラクター実装に至った。
※ずっと順調だったかと言われるとそんなことはない
自分のゲーム制作を振り返ると、ストーリーがイマイチだとモチベーションが上がらないので、システムとストーリー(≒キャラ)の両輪で作らないとゲームを完成できないのだと思う。
事実、過去作のアンケートを見ても自分の作品はゲームシステムとキャラクターを評価している方が多かったので、自分の強みを理解した上でゲーム制作を行っていくのは本当に大事だと思う。
余談だが本作のシナリオはかつてノベルゲームを作ろうとしてポシャった企画のリファインだったりする(真面目に語ろうとするとこの記事では収まらないのでそれはまた別の機会に…)。
開発後期
テストプレイ依頼とフィードバック
なんやかんやあってゲームが完成! さっそくテストプレイだ!
この時はゲーム制作が本当にしんどかったのでガバガバゲームバランスの状態で依頼した。
てっとり早くモチベーションを上げたい時は他者からのフィードバックが大事! ゲーム制作はさらに加速した。
この時期はカードの性能の強弱や機能面で不十分な点が多かったので、そのあたりを中心に改善していった。
制作後期に追加した機能
誤操作防止機能
APが残っている時に間違ってターンを終了しないよう、ボタンを長押しさせる機能。言及している人をあまり見た記憶はないが、たぶん役に立っていたはず(既に満足している人は何も言わないからね)。
フレーバーテキスト
主に作中の設定の補完をするために実装した機能。カードゲームと言ったらやっぱりフレーバーテキストだよなぁ!
作業自体は楽しかったが、このせいでテキストがおかしいぐらい増えた上にリリースが二週間くらい延びた。
中断セーブ機能
1-2時間程度で終わるボリュームとはいえ、小休憩を挟むことは想定されると思ったので実装。セーブデータ周りの処理は初めての経験だったので不安はあったが、特にトラブった話は聞いてないのでたぶん大丈夫のはず。
しかしオプション機能の中に入れたせいで気付かない人がいたので、あとでチュートリアルに書いた。
プレイ履歴
ゲームリザルトだけでは味気ないと思って追加。
作りはシンプルだが、バックにキャラクターが表示される演出は結構気に入っている。
イベントシャッフル
既に語ったので省略。
難易度の追加
当初はVETERAN相当の難易度でゲームを制作しており、難しさを抑えたBASICは制作後期に追加した。
インディー界隈では浸透してきたジャンルではあるが、それでも初めて遊ぶという人は多いだろうと思い、低難易度は必要だと考えた。
ジャンル経験者の方でも、まずは難易度BASICでゲーム全体のボリュームやキャラクターの使用感を掴んでもらう意図も含んでいる。
なお本作はVETERAN相当の難易度でも意図的に難しさを抑えている。デッキ構築ゲーに遊び慣れた方であれば、ラスボスでも完封勝利できるバランスにした。
このような調整にした理由は、ゲームの難易度に対する自分なりの考えに基づいている。
高難易度コンテンツとはどうあるべき?
ゲームの高難易度コンテンツについて、頭を悩ませるゲーム制作者は多いだろう。
そもそもとして高難易度が必要なのかという意見もあり、大多数のプレイヤーが求める難しさは「多少苦戦することはあっても、ゲームオーバーになるほどではない」程度かと思う。
考えなしに強い敵を実装してしまえば、作者の独りよがりなってしまいかねない。そういった事情を考慮して高難易度を実装するのであれば、方針を定めた上で作るべきと考える。
高難易度コンテンツの調整
難易度ノーマル相当からさらに難しい難易度を実装するならどういう方向性にするか? 個人的な見解になるが「同じ戦術が通用しないこと」であると考えている。
プレイヤーが高難易度を求める理由は「ずっと同じ戦い方でやってたら勝てちゃったよ。なんか達成感ないな〜」というマンネリさなので、制作サイドから提供すべきなのはプレイヤーに対する新しい攻略法、すなわち新しい体験であると考える。
たまに「ハードモード」という体で敵のパラメータだけ上げて実装するゲームを見かけるが、その場合プレイヤー側のパラメータを上げばいい(※)だけの話なので、やっていることは通常の難易度とさほど変わらない。
※ ローグライト形式だと育成リソースに限りがあるので話が変わってくるが、テーマの本質はそこではないので割愛
強敵に相対したプレイヤーは、新しい戦い方を模索する。そうした体験の中で達成感が得られるのだ。
『メビウスの迷宮』の難易度
高難易度コンテンツに対する作者なりの考え方を述べたところで、本作の難易度の話に戻る。
難易度を上げる場合、敵の攻撃を激しくしたりギミック等を増やしてプレイヤーに圧をかけていく調整になる。そうなるとプレイヤー側が取れる手段は敵に何もさせずに速攻撃破する方向になってしまいやすい。
本作は爽快感を重視しているため、戦略がハマると高いパワーを発揮するよう作っているので、必然的にキャラパワーを押し付けるのが最適解みたいな感じになる。
いちおう敵のギミックを増やして、プレイヤーの行動を阻害することもできるが、プレイヤーはやれることが減るのを嫌うので、そういったギミックは作らなかった。
もちろん作り方次第でやりごたえのある高難易度を提供できたかもしれない。だが今の難易度を上げたところで窮屈なバランスになる未来しか見えず「そんなゲーム面白いのか?」という思考が拭えなかったため、これ以上作り込むことが出来なかった。
つまり結局のところ…?
高難易度を実装するモチベーションが上がらなかったという話になる。
過去作の場合やたら高難易度なところが(悪い意味でも)話題になったが、作者がコマンドRPG大好き人間なので、たとえプレイヤーの反応が薄くても作ってる本人が楽しかったので高いモチベーションで制作に臨めた。
だが先に述べた通り、高難易度の適正バランスが自分の中で定義できない状態で作り込むのは難しい。
また苦労して作ったとしてもプレイヤーが反応してくれるとは限らない。作ってる方も人間なので、モチベの薄い作業を続けるのはツライのじゃ……。
……という具合で制作終盤はどこで区切りをつけるかと悩みに悩んだ末、VETERAN相当で十分と判断した。
ゲーム公開後の対応
バグ修正とかはいつもの話()なので特に触れません。
テキスト修正
カード説明でわかりにくい部分の改善。誤解を招く表現や記載不十分な点などなど…
仕様を熟知している作者だと改善しにくい領域なので、もう少しテスターに意見を聞いておけばよかったと反省。
チュートリアル改善
一部、説明不足な機能や多少ヒントっぽい要素をチュートリアルに入れた。公開前からチュートリアルは不十分という自覚があったので、公開後に色々意見が飛んできて「やっぱりそうかー」という感じではあった。
言い訳がましい文章はここまでにしておいて、大変参考になる動画を貼っておきます。
桜井さんの動画は言葉の説明だけでなく、実際のゲーム動画をダイジェストで流しているので、コンパクトな内容ながら密度が濃くて素晴らしいですね!
ヘルプ追加
バランス調整
詳細は省くが、イマイチな性能のカード改善・強すぎるカードのナーフ処理を行った。一部キャラは根本的に問題を抱えているところもあったので、大幅な改善を行っている。
実のところもっと改善したい点は山ほどあるのだが、ゲーム公開直後にそのような対応を行うとプレイ感が大きく変わってしまうので、大きく手を加えるようなことはしていない。
もし大幅なバランス調整を行う場合は、Ver 2.0 のような形になるかと思う。
◆ バランス調整の心構え ◆
以下は調整案を考える時に意識したことです。
意図的に実装しなかった機能
アンロック要素
本作のアンロック要素はキャラクターのみ。
厳密には段階的に開放される機能(音楽室など)はあるが、ゲーム本編に関わる要素で隠しコンテンツは存在しない。
ゲームをプレイするたびにカードが解禁されていくとワクワクする人もいると思うが、身も蓋もないことを言うと作者は「最初からカード全部使わせてくれ」と考える人間なので実装する気はまったくなかった。
実績機能
トロフィーやアチーブメントなどと呼ばれる機能。
XXダメージ突破! とか アイテムを使わずにクリア! とかそういうやつ。
目標を設定することによってプレイヤーのモチベーション向上や達成感を与える効果があるので、好きな人は多い。
この機能自体は悪くないと思っている…が、作者がやりこみ要素に興味がないので実装しなかった。
プレイスコア
最初から実装する気がなかった機能。
これも一種のやりこみ要素で実績機能に似ているが、この機能を実装しなかった理由は別にある。
自分のポリシーとして、プレイヤーには好きなプレイスタイルでゲームを遊んでほしいと考えている。
だがスコアという要素を足してしまうと、必然的に効率的なプレイを強いてしまうため先に述べたポリシーと反する。
(同じ理由で縛りプレイみたいな要素もあまり好きじゃない)
そういった理由から本機能は実装しなかった。
コンテンツはどこまで増やす?
これまでの制作方針からなんとなく察せられると思うが、作者はものすごく飽きっぽい人間である。
ひとつのゲームをやり込むという行為に興味が薄く、ある程度ゲームを楽しんだら早々に他のゲームに移ってしまうので、一つのゲームに沢山のコンテンツが詰め込まれても、大抵遊び尽くさずに終了してしまう。
そんな人間がゲームを作っているため、この作品にもやりこみ要素・隠し要素がほぼ存在しない。
ありがたくも「もっと遊べる要素が欲しかった!」という声を頂いており、期待に応えれない申し訳なさもある……が、そういう人間が作っているのでご了承ください。
これは完全に制作側の意見になってしまうが、作っている側が楽しくないままゲームを作っても、プレイヤーとの関係性が悪化しお互い不幸になるだけなので、割り切りは必要だと思っています。
影響を受けた作品
あまり語りすぎてしまうのも野暮だが、ちょっとだけ触れておく。
Slay the Spire
言わずとしれたデッキ構築型ローグライク。
ここから数多くのフォロワー作品が生まれているが、面白さの根幹は本作が唯一無二であると思う。
ちょいちょいセールをやってるので、未プレイの方はぜひ遊んでみてほしい。
一番好きなキャラはデカ&ドヌー。かわいい
Alina of the Arena
剣闘士の少女が主人公のデッキ構築ゲー。一番影響を受けた作品。
ヘキサ式のマップを移動しながら戦うため、防御だけでなく位置取りも重要。最初こそ難しいが、慣れると色んな無法ムーブができてたのしい。
作品の雰囲気、盛り上がるBGM、大味目のバランスなど、いろいろな要素が個人的に刺さった。この手のジャンルでは一番好きなゲーム。
バテン・カイトス
カードバトルをテーマにしたRPG。星座や神話の要素が強く、独自の世界観が魅力的な作品。ストーリーがとても良い。
作者がカード形式のRPGを遊んだのはこの作品が初めてで、カードのデザインとかは強く影響を受けている。
最近HDリマスター版が登場したので、興味のある方はどうぞ。
メギド72
戦闘システムや非常に凝った世界観が特徴のRPG。
カードゲームじゃないのになんで? と思われそうだが、dustシステムはこの作品の覚醒ゲージから着想を得ている。本作に限った話じゃないが、キャラクターの設計も影響を受けていたりする。
非常に面白いシステムだが、真面目に語るとそれだけで記事が書けてしまうので割愛。
あとがき
今回の記事で『メビウスの迷宮・制作記録』は最後となります。
長かった! がんばった!
ゲーム制作という大きなテーマを扱ったせいか、記事が後半になるにつれ思想強めな文章になっていきましたが、ここは自分の城なので好きなように語れてわたくしは満足です。
『メビウスの迷宮』は作者にとって2作目となる作品です。
制作記録は以前も書きましたが、内容を見返すとゲーム制作に対する考え方も少し変化が生じたのではないかと思います。
記事の個数は4つと前回よりも少ないですが、内容の濃さは負けていないと自負しています。
ゲーム制作とは終わりのない旅で、人によってゴールは様々だと思います。
公開した後も終わりではなく、アップデートを重ねてコンテンツの追加や完成度を高めるのも一つの選択でしょう。
ですが、これは私個人の価値観になりますが、いつまでも同じ作品に拘り続けるというのはあまり健全ではなく、新陳代謝が必要だと考えています。
そういった考えもあり、この振り返り記事を執筆するという行為はゲーム制作に区切りをつける大きな意味を持ちます。
今後の予定は未定ですが、この制作記録を書ききったことでまた新たな一歩が進められそうです。
それではここまでお付き合い頂きありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう!
おわり