【メビウスの迷宮・制作記録①】 カードゲームをつくりたい編
前置き
みなさまお久しぶりです。数年ぶりの制作記録です。
2024年6月にリリースした『メビウスの迷宮』ですが、公開から一ヶ月ほどが経ちました。
公開当初はバグの嵐だったりバランス調整に追われていましたが、ようやく落ち着いてきた(※)こともあり、このゲーム制作活動を振り返ることができるようになりました。
※厳密には終わってない
というわけで、作者の頭が創作モードの内にゲーム制作の振り返り記事をしたためようと思った次第です。
作品のダウンロードはこちら。
本作を作るきっかけ
寸劇
「なんか最近デッキ構築系のゲーム流行ってんなぁ」
「ちょっとやってみるか」
「なんや、普通におもろいやんか」
「ワイもこういうゲームつくりてえなあ…」
「え!! RPGツクールでカードゲームを!?」
「できらぁっ!」
おわり
つまりどういう話なのさ
RPGを作り終えた作者は、自分好みのゲームを作るという目標を達成しまい、次回作の方向性を見失っていた。
厳密には色んなジャンルに手を出そうとしていたのだが、なかなか実を結ばず試行錯誤を繰り返す日々が続いていた。
そんな中出会ったのがカードバトルの短編同人ゲームだった。
おそらくSlay the Spire(※)を参考に作った作品と思われるが、当時の自分はその手のジャンルは初めてプレイしたため、非常に新鮮な体験だった。
※デッキ構築系ローグライクゲーム。この記事では詳細な説明は省く
そこからRPGツクールでも似たようなシステムは作れないかとプログラミングの勉強がてらに着手したのが本作のきっかけである。
せっかくなので最初に作ったときのプロト版のような動画も載せておきます。
この時の自分はゲームを完成させようという気持ちなど全く無かったのだが、それが完成に至ってしまうのだから人生何が起こるかわからないものである。
ところで前作の話って?
こちらの記事で散々語ってます。良かったら見て下さい。
制作の方針
制作の方針として、既存のデッキ構築系ゲーム(※)を踏襲することにした。
※影響を受けたゲームについては別記事で語るため、ここでは省略する。
理由は以下。
ローグライト系ゲームをあまりプレイしないので、ノウハウがない
アイデアを出すのが大変
ゲーム制作の楽しいところだけをやりたい(重要)
ゲーム制作のモチベーションを保つのは大変なんです!
変にオリジナリティを出そうとしてエターなっては本末転倒。ゆえにオリジナリティを出せない部分は遠慮なくパクろうの心意気で制作した。
おそらくこのゲームを遊んだ人は、かなり既存のゲームに近い設計だなという印象を抱いたと思われるが、実際その通りである。
世の中にはパクリを気にしてしまう創作者は結構いると思われるが、大事なのは「自分が何を作りたいか」なので、その点だけブレなければ穏やかに創作ライフを送れます。
余計なことを言ってくる外野も気にならなくなります(^o^)
全体的な設計
自分はそこまでローグライト系のゲームはあまり得意ではない。
どちらかというと、色んな装備やスキルを吟味して戦略を考えてから戦闘に挑むオーソドックスなRPGの方が好きである。
ローグライトが苦手な理由はランダム要素にあって、戦術を思いついても望み通りアイテム等が引けないと単にやり直しみたいな状況に陥るケースがよくあるからである。
このようなランダム要素をアドリブで乗り切ったり、展開の振れ幅を楽しむのがローグライトの醍醐味であるのは理解しているが、自分はとにかくバトルを楽しみたい人間なので、それ以外の部分で思考を割きたくない。
まとめると戦闘以外のランダム要素を薄くしつつ、カードバトルの楽しい部分を全面に押し出したシステムにすることが、自分の作るゲームの目標になった。
ここで言うランダム要素を薄くとは、戦略を確立できたらある程度プレイヤーの意思でゲーム展開をコントロールできる、という意味である。
前置きが長くなったが、ここから本作のメインであるバトル設計に入る。
バトル設計
ただ強い技を連発するだけでは爽快感など生まれない。それはタダの作業である。大事なのは緩急だ。
そうして生まれたのが本作の肝となるシステムである。
dustゲージ
カードを使用することで溜まっていく特殊なゲージ。
このゲージが4つ溜まると覚醒状態となり、この状態で覚醒効果のあるカードを使うとカードの威力やシールド(防御)の数値が2倍または3倍になるというもの。
カードによっては覚醒時に特殊な効果が付加されており、各キャラクターが持つ初期カードの「アタック」「ガード」もそれぞれ異なる性能を持っている。
例.カードを1枚引く、デバフ付与…など
終盤になるとダメージの振れ幅も大きくなり、文字通り桁違いのダメージが出せるようになる。
この爽快感が本システムのウリである。
このシステムの特徴として覚醒状態は維持できないことにある。
覚醒効果のあるカードを使用するとdustゲージは強制的に消費されるため、覚醒効果を狙って発動したい場合はちょうどdustゲージが最大になるようタイミングを意識してカードを使っていく必要がある。
(逆に言うと、覚醒効果の無いカードはdustを消費しないため、一概に下位互換とは言えないところもポイントである)
不自由さはあるものの、この仕様によりターンごとで状況が目まぐるしく変わる効果を生み出している。
余談だが、テンポ重視のためにアニメーションのウェイトを省略しているが、覚醒効果の時だけはアニメーションが終わるまでウェイトがかかるようになっている。
モッサリを回避するためにはウェイトは極力抑えた方が良いが、要所に挟まれるウェイトは盛り上がりを演出するので効果的に使っていきたい。
バランスは大味に、大胆に
大半の覚醒ダメージ(シールド)レートは3倍に設定されている。
この手のゲームにおいて、3倍という値はかなり大きめに設定されていると感じる人は多いだろう。
当初から既存のゲームと差別化を図るつもりで制作はスタートしている。
そのため、小さな数字をやり取りするゲームだと既存のゲームプレイ感は変わらないと思ったので、思い切って3倍という破格の設定にした。
ダメージ2倍で設定した事もあったのだが、覚醒の恩恵が実感しにくく、まったくカタルシスの無いバランスになってしまったので、この判断は間違いではなかったと思う。
dustゲージの最大値
dustゲージの最大値は4で固定されている。
この値はわりと絶妙なラインで設定されており、AP(カードの使用に必要な行動力)の初期値が3に対して最大が4であるため、基本的には1ターンで溜まらないようになっている。
そのため、
覚醒を溜めるターン → 覚醒を放つターン → 覚醒を溜めるターン …
というサイクルになりやすく、緩急のある展開を作り出すことに成功している。
「敵の攻撃が激しくて攻撃できない…けど覚醒で一気にダメージを与えられる!」
「防御カードしか引けねえ! でもdustは溜められるからまあいいか…」
という具合で、無駄となるターンがほぼ存在しなくなるのが大きなポイント。この体験はプレイした方からも非常に好評だったので、自分の狙い通りの感想を貰えて手応えを感じている。
1vs1の戦闘
本作は当初から複数の敵を出す予定はなく、1vs1のシステムで戦闘を作るつもりでいた。
理由は主に以下。
敵が増えると情報量が増えて画面がごちゃごちゃする
ターゲットを選ぶ操作を増やしたくない
作るのが大変(重要)
敵の行動表示を行うシステムは前回もやったが、今作はダメージの計算やdustシステム、カードを切る順番など考える要素が多いので、敵の数を増やすと相当頭が疲れるシステムになるだろうと考えた。
1vs1でも十分おもしろさは担保できるし、自分はなるべくシンプルな作りのほうが好みだ。
また複数敵が出てくるシステムにすると、それに応じてカードの種類も増やす必要性が出てくる(全体攻撃用のカードなど)ため、開発リソースが厳しいと考え1vs多数のシステムは早々に諦めた。
画面の設計
最後に持ってくる話ではない気もするがちょっとだけ触れる。
基本的に重要なオブジェクトは動的に表示している。具体的にはカードとdustゲージ(厳密にはバトルログもあるが)。
RPGツクールでこういう表現をすると結構手間なのだが、カードが「シャシャシャッ」と流れてくる演出は見ていて気持ちいので頑張って実装した。
カードがシャッフルする時も地味に演出を付け足してわかりやすくしている。
ちなみに初期はdustゲージは点滅しない仕様で、テスターから「すげえ分かり辛いのでもっと自己主張しろ」と言われたので現在の形になった。
運良く過去のポストがあったので、参考までに載せておきます。
(間違い探しレベルだが細かいところで違う)
これは反省点なるが、カードやdustゲージを左下、敵の攻撃を右上に配置してしまったせいで、視点移動がやや忙しくなってしまった。慣れればそれほど苦ではないが、初見の人にはちょっとわかりにくい構成だったと思う。
実際世の中のゲームを観察してみると、大事な情報は中央寄りに配置されていていることがよくわかる(参考画像がなくてすまん)。
自分は文字が小さいのが嫌いでフォントを大きくするために画面いっぱいに情報を配置してしまったのだが、せめて敵の行動は中央、カードも中央寄せに配置してもよかったなーと反省。
雑感
こうして振り返ってみると、作るのが大変だと思った部分は早々にオミットしていることがよくわかる。
個人制作に限った話ではないですが、作るものの取捨選択はとても大事ですね。
まとめ
今回の記事は本作のメインであるカードバトルの設計について語った。
実際のところ、本作のゲームの面白さ・独自性はバトル部分にほぼ集約しており、その他のシステムはバトルを引き立たせるオマケのような位置付けだったりする。
もう少しアイデアを練ってオリジナリティを出したかったのが本音だが、完成することを優先したのでこのような形となった。
ちょっとしたノリから始めたカードバトル制作ではあるが、最終的に自分が遊んで楽しい! と思えるシステムを完成できたので、その点には満足している。何よりエターなるよりマシだからね。
今回の記事は以上です。
次回は他のシステム設計について語る予定です。
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