不穏な十三夜
今宵、「十三夜」。
古来の人は「中秋の名月と並ぶ月」と称したとか。
一方しか見ないことを「片見月」と呼ぶ風流も。
☆
カメラを構えたが雲がぶ厚く見えない。
しばしベランダで待つ。
妻と五歳息子は部屋の中。
私は「仲直り」を思案する。
十分程前。
私は妻の言葉を無視した。
すぐに不機嫌に気がつくも「ごめん」が言えず今に。
一度ベランダに出るときに「月が奇麗らしいよ」と誘うも反応はなく。
雲間に光。大きな星が先ず姿を現した。(※木星)
部屋に声を掛ける。駆けてきた息子がママを呼んだ。
「月だって!」
……が返答はない。
息子は「ママ!」と呼びに戻った。
月が現れる。 ――出たぞ!
……反応なし。
複雑な気持ちでもう一度。
――すごい奇麗。隣の星も!
と、部屋から「良かったね」と絶望の拒絶。
こういう時はママの味方になる息子。
異変を察したか、もう戻って来なかった。
ご利益のある月もこれじゃ……
私は切ない「一人見月」にシャッターを切る。
後の月出でよ凛々しき木星と
(のちのつきいでよりりしきもくせいと)