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不穏な十三夜

今宵、「十三夜」。
古来の人は「中秋の名月と並ぶ月」と称したとか。
一方しか見ないことを「片見月」と呼ぶ風流も。

カメラを構えたが雲がぶ厚く見えない。
しばしベランダで待つ。
妻と五歳息子は部屋の中。
私は「仲直り」を思案する。

十分程前。
私は妻の言葉を無視した。
すぐに不機嫌に気がつくも「ごめん」が言えず今に。
一度ベランダに出るときに「月が奇麗らしいよ」と誘うも反応はなく。

雲間に光。大きな星が先ず姿を現した。(※木星)
部屋に声を掛ける。駆けてきた息子がママを呼んだ。
「月だって!」
……が返答はない。
息子は「ママ!」と呼びに戻った。

月が現れる。 ――出たぞ!
……反応なし。
複雑な気持ちでもう一度。
――すごい奇麗。隣の星も!

と、部屋から「良かったね」と絶望の拒絶。 
こういう時はママの味方になる息子。
異変を察したか、もう戻って来なかった。

ご利益のある月もこれじゃ……
私は切ない「一人見月」にシャッターを切る。


後の月出でよ凛々しき木星と

(のちのつきいでよりりしきもくせいと)

季語(仲秋): 後の月、十三夜、名残の月、豆名月、栗名月

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