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ポップコーンは買わない派です。vol.92
ダウン・バイ・ロー
本当なら、ストレンジャー・ザン・パラダイスを先にみるべきだったと思うんですが公開順を把握してなかったので、こちらが先になってしまいました。
どうやらストレンジャー・ザン・パラダイスからの文脈が繋がっているようで、これはちゃんと順番に見るべきだったなといろんなサイトを巡回して後悔しているところだ。
本作はジム・ジャームッシュの作家性がよくあらわれてる作品と思った。
モノクロ映像、楽曲、精神性。インディペンデントだからこそ強く表すことのできる作家性をまざまざと見せつけられた。
あらすじ
刑務所で同房になった3人の男が奇妙な友情で結ばれ、やがて脱獄してそれぞれの道を歩み始める(?)までを独特のユーモアで描く。ウェイツが担当した音楽、ロビー・ミューラーのモノクロ撮影も話題になった人気作。
モノクロ
モノクロ映像に関してはこんな逸話が残されている。
ストーリーを書き上げて配給元を探していたころ、カラーだったらもっと金を出すのにと言われ続けてむきになってより一層モノクロでとる意欲が掻き立てたられたんだ。子供に思えるかもしれないが、実際にこの作品はモノクロだという美学的な確信があったんだ。
それはきっと自分の中にしか存在しない美学なのだろう。
意固地になってしまった部分はなんとも言い難いが、ともかくそれによってモノクロで撮る意味が確定したのは表現のエネルギー源としては間違っていないはずである。
もちろんカラーで作るという選択肢が間違っているというわけではない。
ただ、今回の場合はモノクロの方がより作家のエネルギーが乗っかって来るはずであるから、美学的確信を持って作品づくりをすることができたのだろう。
楽曲
トム・ウェイツは本作の主演かつ楽曲も手がけている。
本職はミュージシャンであるが、1978年から俳優業にも活動の幅を広げ、初期のころはフランシス・フォード・コッポラの作品に出演していた。
ジェームス・ブラウン、ボブ・ディラン、ライトニン・ホプキンス、セロニアス・モンク
から影響を受けていると公表しており、その音楽性の豊かさをうかがわせる。
本作のオープニングとエンディングを担当している。
どちらも不安定というか不気味な雰囲気をまとっている。
まさにミステリートレインで紹介した
ジュニア・パーカー版のmystery trainを思わせるブルース。
最高です。
1985年に制作されたこちらのアルバム「Rain Dogs」はトムウェイツの最高傑作と言われている。
余談だが、本作中にトムウェイツが口ずさんでいる鼻歌は全て即興の曲らしく、というのも鼻歌ごときでも楽曲の使用量がかかる上にその額もばかにならないため経費削減の意味をこめてその場のアドリブで歌っていたらしい。すごすぎ。笑
作家性
なんとなくみただけで監督はこの人かなと思った時に、クレジットをみて当たってた時に小さくガッツポーズすることってありません?
アニメや漫画ではわかりやすく作家性が現れている作品は多いと思いますし、わかりやすいと思う。
それと同じ感覚でジム・ジャームッシュ監督の作品はみただけでわかるような独自の世界観を持っているように思える。
それは彼自身の生活に由来しているものであり、インディペンデントな世界に身を置いていたからこその表現があったとも言えるかもしれない。
ダウンバイローという言葉ももともとは黒人社会や刑務所のなかだかで口にされていたスラングで、「アウトサイダーだからこそ信用できる」という意味として70年代まで使われていた言葉で、現在はミュージシャンに受け継がれ、「気の合う仲間」「頼りになる仲間」というアウトロースラングとして使われている。要するに「システムに縛られず自由に生きる連中」の血が流れた言葉。
ジム・ジャームッシュにぴったりな言葉であるとここで気付かされるのだ。
そして彼はそれをタイトルに採用した。
精神性の表れを見事に示している。
最後に
インディペンデントな作品にこそ作家の魅力が表されているように思えるし、エネルギーがまるで違うと感じる。
完全分業ではなしえないエネルギー、それは綺麗に作ることではなくその人の魂が乗り移った作品表された結晶なのである。