慢性腎不全の原因、所見、症状、現代医学の治療、東洋医学の治療(漢方など)をまとめてみました。
慢性腎不全とは?
原因疾患に関係なく腎機能が進行、障害がおこり、体の水分など体液の恒常性が保たれなくなった結果、高リン血症、高カリウム血症などきたして、末期の腎不全(尿毒症)になってしまう一連の病態の事を言います。
慢性腎不全が起こる原因は?
原因疾患としては、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、多発性嚢胞腎、慢性腎盂腎炎の順に頻度が高いとされています。また腎不全を悪化させる要因としては高血圧、高タンパク食、高リン食、脂質異常症などがあります。
慢性腎不全の所見、症状は?
慢性腎不全が進行していくと、クレアチニンの上昇、eGFR(糸球体濾過量)の低下などの血液所見の他、尿毒症物質がたまる、エリスロポエチンやレニンの産生低下、ビタミンD活性化の障害などが起こることで、様々な症状が出てくる。
様々な症状の例として
疲れやすい、集中力低下、不眠、昏睡、末梢神経伝達速度遅延、高血圧、クスマウル呼吸、貧血、出血傾向、掻痒症などが起こると言われています。
慢性腎不全の診断方法は?
診断で有用なものとしては、尿検査でタンパク尿、血尿など。血液検査では、BUNの高値、クレアチニン高値、ナトリウム低値、カリウム高値、尿酸高値などが認められます。
慢性腎不全の一般的な治療法は?
保存療法として、薬物療法で降圧薬などを使う対症療法。タンパク質制限などを行う食事療法、腎不全の重症度によっては人工透析、またドナーがいれば腎移植も考える。
慢性腎不全での食事で気をつけるべき事は?
腎臓病の患者さんは、特に腎臓にかかる負担をできるだけ軽減するように、食事に気を配ることが重要です。以下は、腎臓病の管理に役立つ食事のアプローチと、選ぶべき食品についての一般的なガイドラインです。ただし、具体的なアドバイスは医師や栄養士に相談することが最も重要です。
バランスのとれたタンパク質: 高タンパク質の食品が腎臓に負担をかけることがあるため、適切なタンパク質の摂取量を心がけ、鶏肉、魚、卵、乳製品などの高品質なタンパク質源を選ぶようにしましょう。
ナトリウムの控えめな摂取: 高血圧や浮腫を防ぐために、食塩(ナトリウム)の摂取を制限することが役立ちます。加工食品や缶詰、調味料に含まれる塩分にも気をつけましょう。
適度な水分摂取: 腎臓病患者は水分摂取にも注意が必要ですが、具体的な量は医師の指示に従って調整します。逆に、摂りすぎも避けましょう。
リンの摂取量の調整: リンを多く含む食品(加工食品、缶詰、一部の肉類)を控えめに摂るようにしましょう。高リン血症の可能性に配慮しています。
野菜と果物の適量摂取: 適度な量の野菜と果物は、ビタミンやミネラルを摂る上で大切です。ただし、カリウムの摂取量にも気を配り、低カリウムの選択肢を考えましょう。
心臓に優しい脂質: 健康な脂質(オメガ-3脂肪酸など)を摂り、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を制限することが大切です。
これらのガイドラインは、腎臓病の一般的な管理のためのものであり、具体的な状況によって異なることがあります。具体的な食事プランは、医師や栄養士との相談に基づいて指導してもらいましょう。
慢性腎不全の予後は?
予後は原因疾患によるとされていますが、Iga腎症や嚢胞腎では数十年の経過をたどると言われてます。進行性の糸球体腎炎などでは1年以内に末期の腎不全になると言われています。
慢性腎不全の東洋医学的な考えは?
慢性腎不全は様々な原因疾患があるため、東洋医学的に当てはめることは難しいと思いますが、多くは生活習慣病病などから考えると瘀血(血液がどろどろの状態)や腎虚などと表現されてることがあります。
五行説の中で考えると腎虚の場合は肝の病態悪化にも関連があり、西洋医学的に考えても、腎臓が悪くなると、排出できなかった毒素は肝臓により解毒されることになるので、結果的に肝臓の負担になってしまいます。
慢性腎不全に東洋医学を取り入れるメリットは?
東洋医学の強みとしては慢性疾患を含めた現代医学では対処できにくい病気に対して、五臓六腑のバランスを整える事によって、原因部分から病気の改善にアプローチできる事ではないでしょうか。 原因不明の症状にも、お客様に寄り添って一緒に改善できることも、東洋医学のメリットだと思います。
また東洋医学を併用することで以下のような事も目指せます。
症状の緩和: 漢方などは、慢性腎不全に伴う一般的な症状の軽減に役立つことがあります。これには、浮腫、高血圧、貧血、吐き気、嘔吐などが含まれます。
腎機能のサポート: 漢方は、一部の人々にとって腎臓の機能を改善または維持するのに役立つ場合があります。これにより、病気の進行を遅らせることができるかもしれません。
副作用の軽減: 漢方などは一般的に天然成分から作られ、副作用が少ないことが多いため、他の医薬品に比べて副作用のリスクが低い場合があります。
東洋医学で考える慢性腎不全にアプローチできるポイント
①:体を温める
慢性腎不全の方は、血液をろ過することが困難な状況から体内に老ハイツ物が溜まり、血流が良くない状態と考えられます。その状態の場合、血流の悪化から冷えを伴うことがあるので、体を温める事を考えます。
②:血流の改善
血液の流れを良くすることを考えます。血流がよくなれば良い栄養、酸素が腎臓に行き渡り、人間の体と同じように元気に出来ると考えられます。
その他の慢性腎不全の治療法
漢方
漢方でも寒熱、虚実など患者の方の体質を見極め、適切に組み合わせること
で体の栄養状態を高めたり、血行を良くしたりすることで五臓六腑のバランスを整えることによって体全体を含め腎臓にアプローチも可能と言われています。
また漢方では腎臓病に関連する文献等も出ているようです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/64/1/64_10/_pdf
慢性腎不全に対する漢方医学のアプローチは、従来の西洋医学とは異なり、体のエネルギーのバランスを調整し、腎臓の機能を改善しようとするものです。以下は、漢方医学が慢性腎不全に対してアプローチする一般的な方法となります。
漢方は、天然のハーブ、植物、動物の部位などから作られます。これらの漢方は、体のエネルギー(気)の流れを調整し、腎臓の機能をサポートすることを目的とします。
また、漢方医学は食事にも重点を置いており、特定の食品や食材を摂取することで腎臓の健康をサポートしようとします。たとえば、腎陰虚(腎臓の不足)の場合、食事に滋養性のある食材を取り入れることが勧められます。
適度な運動、ストレス管理、規則的な生活リズムの確立など、生活習慣の調整も重要と考えられていますので、取り入れることをお勧めしています。
慢性腎不全に関連する漢方の値段・価格の相場は?
慢性腎不全に関連する漢方の価格は、およそ1万~3万円/月程度と、値段に幅があります。
なぜ漢方の値段に開きがあるのか?
漢方は、患者さんの体質や病歴、置かれている状況等を考慮して組み合わせるもので、状態によっては漢方の種類が増えるため、どうしても皆同じというわけにはいかず価格に差があります。
予算に合せることもある程度は可能ですが、最初から予算を聞いてきたり、とくに問診もせずに上記のような体質や状況を考えず、一般的な古来の漢方薬を選んで出してくる漢方薬局もあるので、その点は注意した方がよいでしょう。
値段が気になっても、腎不全の漢方を相談する際は、まずはベストな提案をしてもらい、後から予算の調整をしたほうが賢明です。
食事療法
腎不全ではタンパク質の摂りすぎや、リンの摂りすぎは腎臓に負担がかかるため、なるべく低タンパクやリンの少ない食事を心がける必要があります。
いまさら訊けない!CKD患者栄養・運動療法の考えかた,やりかたQ&A
鍼灸治療
鍼灸治療でも血行を良くすることや体を温めたりすることでアプローチが可能とされています。、また腎不全で起こる様々な不定愁訴にも役立つと言われています。腎不全に鍼灸治療を取り入れた文献もあるようです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1955/27/3/27_3_171/_pdf/-char/ja
東洋医学的に慢性腎不全の治療を始める場合は?
東洋医学的治療は、体質の調査から始まり、陰陽のバランスを整える食事療法や漢方などを用いて体全体の機能を改善します。健康管理と生活指導も重要であり、個々の症状や体質に合わせたアプローチが必要です。そのため専門家への相談が重要になってきます。