おとなの渋谷探索「麗郷」 台湾料理
台湾料理に目がない。
にんにくと塩味のきりりと利いた味付けが好きだ。そして、麗郷は渋谷駅から出て、道玄坂小路という細い坂道の途中にある、老舗台湾料理店だ。どうやら渋谷の凄まじい再開発も、ここまでは及ばなかったらしい。雑多な、猥雑なむかしの渋谷の雰囲気が今も残っている。
カウンター付近には腸詰が吊り下げられており、注文すると、腸詰をスライスしたものに白髪ねぎを添えてささっと出してくれる。ビールに合う。
店の看板メニューといえば、やっぱりしじみの炒め物。しじみを炒めて食べるなんて知らなかったが、これがまたしょっぱくて酒に合う。
台湾料理って、結局、酒に合うと思いませんか?キンキンに冷えたビールでのどを潤し、で、しじみをちゅっとすすって…そのエンドレス。しあわせが染み渡る。
ただ、私がこの麗郷に心奪われた一品は、腸詰でも、しじみでもないのです。
枝豆炒め
枝豆ってあるじゃないですか。みんな好きじゃないですか。枝豆をゆでて、そのまま食べたい気持ちをぐっと押さえるじゃないですか。そしてそのひとふさひと房(?)を手で押さえて、中身の豆を出すじゃないですか。面倒くさいけれど、小どんぶり一杯になるまでその作業を続けるじゃないですか。(お店でここまでの作業をしているかは不明笑)
ここからは私の想像なのだが、刻んだにんにくを鉄なべに油とともに放り、さっと香りを引き立てたら…ザーサイか、野沢菜か、高菜か、何かある種の中華菜の漬物を刻んだのを加えて、様子を見ながら一気に枝豆を投入する。
味付けは塩コショウかしょうゆ。若干スープのようなものも加えるかもしれない。
それで終わり。
乳酸発酵系の漬物のかすかな酸味とこの店の突き抜けるしょっぱさが織りなすハーモニー。あとは、冷えたビールをゴクっと飲み干すだけ。ビール、枝豆、ビール、枝豆、しあわせ、ビール…枝豆!
あまりの旨さに、どれ、家でもやってみようとチェレンジしたことがある。(だってこれならできそうだから)漬物は高菜漬けを使った。
豆を用意するのがほんとうに面倒くさい。いくつの枝豆をむけばよいのか、途方もない作業である。しかも仕上がった枝豆炒めは、…それらしい姿にはなっても、何か一味足りない物足りなさだ。それが何なのか、いまだにわからない。
麗郷は懐の深い店ですが、ひとりで行くと、枝豆炒めだけでおなかがいっぱいになってしまうので、2、3人で行くのが良いかと。
腸詰としじみと、枝豆と、…ビールと。腸詰としじみと、枝豆と、…ビールと。
…三人組のおじさんたちが、しじみを三皿頼んで、それぞれに酒を酌み交わしている風景も見かける。しじみの身をちゅっとやりながら酒を飲むなら、なるほどそのほうが効率が良い。