舌は忘れない:自家製出来立てリコッタ(Ricotta Fresca)
出来立てホヤホヤのリコッタチーズを食べたことありますか?イタリアのフレッシュチーズで、カッテージチーズに似ているアレです。ホエー(乳清)から作られるので、チーズの中ではカロリー低めにつき、良く食べるという方も多いと思います。
近頃は国産の品もだいぶ増え、気軽に買える値段のモノも多くなりましたが、私が初めて食べた1990年代の始め、国内で手に入るイタリアチーズはほぼ輸入品しか無かった!だから高額だった!パック詰めされた輸入品しかお目に掛れなかったのですよ、イタ飯ブームから本格イタリアンが人気となった初頭は。
そんな中、私の出来立てリコッタ初食体験は、1994年に初めてサレルノの家族:カルディナーレ家の山の家があるモンテサノ:Montesano sulla Marcellana(→パパ&ママの出身地)へ連れて行かれた時。
山間の小さな村には、パパ&ママのほとんどの親戚筋が住んでいます(今も)。サレルノで暮らすカルディナーレがここで過ごすのは主に、夏と冬の長い休みだけ。頻繁に顔を合わせることがないからか、村に入ればあちこちから声を掛けられます。多くの人が庭先で仕事をしていることもあり、車で通過する時には必ず見つかってしまうのです。
その度に車を止め、近況報告をし、最後に何かしら貰う、ということを何度か繰り返し、やっと自分たちの山の家に着くというのがお決まり。『これ持って行きなさい!』とくれるのは、多くが自家製の食品で、その中に出来立てリコッタがあったという訳。
軒先でリコッタを作っていたのは、ママのはとこ。丁度ザルからひっくり返したところに通りかかったので、何とも良いタイミングでした。リコッタって家で作れるんだ!というか、家で作るモノなんだ!とちょっと感動した私。
手渡されたリコッタは、まだかなり温かく、家に着くなり味見させてもらったのですが、ミルクの甘みが強くあり、それまで食べていたスーパーの品とは風味が全然違う。この時のリコッタは羊乳から作られたもので、出来立ての温かみによって、何だか母羊の体温を感じてしまった感覚にもなり、生々しい命というものと、美味しい食べ物の有難みを、同時に感じたことを鮮明に覚えています。
そもそもリコッタは、日持ちのしないフレッシュチーズというカテゴリの品。市場へ出すために塩漬けしたモノが作られ、更に日本などへ輸出するために、クリームを添加した乳で工場生産されるようになったので、スーパーで買うものと、自家製の品と、味が違うのは当たり前の話。
実はリコッタチーズって、乳そのものではなくホエーから作るため、日本では法令上はチーズではないんですよー。乳または乳製品を主原料とする食品、というカテゴリ(→チーズアドバイザーの資格、あるのです)。
モンテサノの親戚の9割が、この地で生まれ、生涯この地で暮らす人々。カルディナーレ家の様に、都会に出て行く人はほんの一握り。ナポリに比べたら鄙びた町のサレルノだって、モンテサノの人々にしたら立派な都会なのです。それ故、ここに住む親族の自給自足率はかなり高めで、家畜として何かしらの動物も飼っています。自分の家の家畜の乳からチーズを作るので、羊乳のところと牛乳のところ、山羊乳のところ、それぞれ味もチーズの種類も違います。たまに帰省するカルディナーレ家は貰う専門、しかも一度の帰省で食べきれないほど貰うのが常。その恩恵に長年あやかってきた私は、大変な幸福&口福者ということで。
ちなみに、パパの長姉は(90歳超えてもまだ元気)いつも、自分が飼っている鶏を生きたまま一羽くれます。断っても『持って行きなさい!』と強引にくれます。さすがにサレルノの家には持って帰れないので、山の家に滞在中にママが血抜きをし(このプロセスは、未だに同席できずにおります)、その数日後にディナーのテーブルに上がってくるという。これもモンテサノの山の家に行った際の、お決まりの流れです。
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