おとな女子こそ南イタリア⑤ナポリを見てから死ね
例え現地を訪れたことは無くても、この町の名前だけは聞いたことがあるでしょう!南イタリアを代表する都市:ナポリは、私たち日本人の多くが『イタリア』と聞いて良くも悪くも想像する、イタリアの諸々が沢山あるところ。ナポリピッツァ、ナポリ民謡、フニクリフニクラ、ヴェスヴィオ火山、SSCナポリ(ナポリを本拠地とするサッカークラブ)、そしてナポリタンと名の付くいろいろ(スパゲッティ・ナポリタンは日本食ですけれど)。
かのゲーテにさえ、『See Naples and die=ナポリを見てから死ね(美しいナポリの景色を見ずに死んでしまったら、生きていた甲斐がないであろう)』と言わしめた町には、知るべき歴史、観るべき景色、経験すべき美食&遺産、などなど、観光の目玉となるものが沢山あり過ぎて、全てを網羅しようとしたら1週間滞在しても足りないでしょう。
今回訪れた際は、コロナで自由に旅行が出来なかった反動による旅行人気で、そもそも人気都市だったナポリは凄いことになっていました。これぞオーバーツーリズム!警察だけでは足りないからか、迷彩服を着た軍の兵士も、街中で警備に当たっていました。もちろんライフルを持って。この光景は、過去に経験ないかも?
パッと見たところ、アメリカ、ドイツ、スペインからの団体ツアーが多かったですね。観光場所の駐車場はどこも、大型のツアーバスがズラリ。プラス、個人旅行者が世界中から押し寄せているので、もはやカオス。旧市街の細い路地裏にまで、観光客がうろうろしていましたから。
ただ、今回のナポリに関しては、オーバーツーリズムに助けられた所もあります。
サレルノから一番近い大都会ナポリへは、サレルノ通いを始めてから何度足を延ばしたか判らないほど訪れておりますが、これまではイタリアの家族の誰かしらと一緒。今回初めてイタリア人なし、ナポリ2度目の夫(しかも大型カメラ数台持ち)と2人きりのぶらりナポリ歩き。どうしても安心感に欠けるところがあり、とにかく無事に次の町へ移動できるよう、ずっと神経を張り巡らせていたのが本音。イタリア人でさえ、ナポリに遊びに行く時はいつも付けている貴金属を外したり、ファスナーで口が閉まるバッグ(脇の下に収まるサイズだと理想的)を選んだりするのは、もはや常識なので。
ナポリの‟怖さ”を知らないで来ているのか、もしくは軽く見ているのか、良く言えばあけっぴろげな団体客が多かったので、地元の‟そっち系を生業にしているプロ”にとっては、警戒心丸出しな初老のアジア人夫婦よりも、良いターゲットが沢山いたのかもしれません。お陰で、丸2日間ぐるぐるブラブラ歩き回ったけれど、私はもちろんのこと、標的になりやすい大型カメラ2つ持ちながら歩いている夫も、何の被害も無く、予定通り過ごせたことは良かった!姉Rosaも心配していたらしく、『今どの辺?問題ない?』と日中何度かメッセージが来てました(笑)。
オーバーツーリズムの大きなマイナス面は、宿代の高騰でしょう。今回はフェリーに乗る予定があったので、フェリーターミナルまで大型スーツケースありの移動が難なく出来る場所、という立地から港近くで宿を探し、イタリアでは初めてB&Bに泊まってみました(そのカテゴリではラグジュアリーと謳っているところ)。イギリスなど他の国のB&B事情に詳しい人にとっては、ビックリする料金!でも、ラグジュアリーと言うだけあって、部屋は広いし、キレイで良かったですよ。チェックアウト時にオーナーと会いましたが、いかにもナポリ富裕層という感じの品のあるご婦人。ナポリには貴族が現存していますし、その家系に連なる人も多くいるのですよね。オーナーは正にそんな感じの素敵なマダムでした。早めに全額支払ったからか、部屋もアップグレードしてくれたり。
高台から見るナポリ湾越しのヴェスヴィオは、一度は見ておいて損はない美景のひとつだと思います。そして、先に触れた‟気をつけて歩く必要がある”旧市街の中心部には、細い路地でナポリっ子が織りなすカオスな街並みがある一方、サンタ・キアラ修道院の中庭の、平和で静寂な世界があります。治安が宜しくない中央駅の東側には、新市街:Centro Direzionale、高層ビルが立ち並ぶナポリっぽくないエリアがあったり。
光と影が背中合わせ、他では見ることが出来ない混沌としたOnly Oneな魅力。決して能天気にブラブラできる町ではないかもしれないけれど、独特のカオスの中に自分がいるという高揚感は、旅好きの人にとってはクセになる味なのでしょう。新旧そして貧富のピンからキリまで、ここまでごちゃ混ぜに共存している町は、他にはあまり思いつかないくらい。それだけ、ナポリには特別な魅力があるということ。
おとな女子には不向きなんじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。でも、ナポリ現地でしか味わうことのできないグルメが沢山ある場所と聞けば、旅のグルメを重要視するおとな女子旅にとって、外せない場所と言えるでしょう!例えばCaffe(いわゆるエスプレッソコーヒー)でも、ナポレターノは一味違うんです。地元のメーカーの味が良いというのもありますが、淹れ方も他とはちょっと違うので、イタリア人にしても『ナポリコーヒーは別格』と言わせる味なんですよ。
ナポリピッツァは、ナポリで修行してきた日本人料理人も多く、日本各地で本場と変わらぬ味を食べられるお店が沢山ありますが、現地は美味しいだけでなく、安い!美味い+安いが、本場のピッツァ。マルゲリータ発祥の地と言われるレストランでさえ、6~8EURとか。今ちょっと日本円が弱すぎるのでアレですが、例えば1EUR≒120円の頃なら、800円でお釣りがくる訳で。あの大皿からはみ出るサイズで。
今の食ブームとしては、ナポリ伝統菓子のSfogliatella:スフォリアテッラが、若い子たちを中心に再流行中だとか。第何次ブームなのでしょう?街中に新しいお店も沢山見かけました。若者向けなのか、フレーバーもいろいろ多く出ていましたけれど、やっぱりクラシックな味が一番美味しいんじゃないかと。唇に刺さるほど硬いパリパリのパイ生地タイプで、ほんのり甘く温かいリコッタチーズのフィリング。50半ばの胃袋には、結構ヘヴィですが、ここでしか味わえない品は、やっぱり食べておくべきだと思います。今回、3時のおやつに食べたら、夜ご飯なしでも大丈夫でした。若い頃は、全然平気だったんですけどね~。