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《詩》赤い空

空が伸びている
今立っているこの地が
惑星であることの証のような
目まぐるしく変わりゆく空の顔
歩き出そうとしても泥濘む足もと
誰かが引いているのか
沼のなかに次第に落ちていく

空の端にみえる白い手
遠い記憶にいたあの人のものか
必死に沼地を這い出ようとし、
細い、白く光る五本の指を手探りする

誰かの理想になりはしない
濡れ衣も、まやかしも
本当はすべて知っている
透明な私に花束を持たせた
誰かの顔を覚えている
あの、やわらかな暗雲を
形相に浮き出ていた暗雲を
すべて、すべて覚えている

せせらぎが
変わらない速さで素足を濡らし
さらっていく
ときに月を反射させながら。
大きな思いを小さな船に乗せ
泣いている子らに渡しに行く
もう何も、足を取るものはないのだ
泣きやんだ子の空は美しく
赤く燃えるように光っていた
火は、濡れた頬にこそきらめくものだった

古屋朋

日本現代詩人会 詩投稿作品第34期
雪柳あうこ様選 佳作

多少変更あります。