Valeur 6 -steel gray-
小さな丘
手を引いてともにのぼれば
あたりには新緑のうつくしさ
おもむろにひざまずくあなたの手から
誓いのてがみをもらう
すこし照れながらそれを受け取り
ふたりで丘をおりていく
ちいさな池に青色の鳥がいる
のどをふるわせ
春の終わりを告げる
足元に届く波紋は
ふたりのはじめての心
黒煙はうすらぎはしても
まだひとの心にひっかかり
あまり遠くには行けない
機械のなか
互いの大切なひとたちを巡り合わす
遅れて届く言葉たちのとまどいを超えて
読みとり、感づき、呼応するのは
行間にただようひとの心
はるか上空に黒い煙を感じながら
見失っていた星たちをかえりみる
目を閉じ みつめればみえる
ただそこにあったものたち
ただそこで生きていたものたち
古屋朋