エンタメとマーケティング5 刀剣乱舞ミュージカルNHK出演に見る顧客反応
皆さんは「刀剣男士 team三条 with加州清光」というアーティストを知っているだろうか。NHKのMJこと「MUSIC JAPAN」(以下:MJ)に近々出演するグループでのことである。
実はこのグループ「刀剣乱舞」という女性に人気のインターネットゲームを「2,5次元ミュージカル」にしたそのキャラクターの演者さん(以下:刀剣男子)がキャラクター名義で出演するそうだ。
2,5次元ミュージカルとは、前回のテニプリに関する記事でもご紹介したように、2次元のアニメや漫画などのイラストレーションのキャラクターを、3次元である実際の俳優が演じる、2010年代に入り大変な盛り上がりを見せている演劇ジャンルである。
このゲーム、コアターゲットはヲタクとしての趣味趣向を問わず女性のヲタクがターゲットだ。
2015年の冬に行われたコミックマーケット(通称:コミケ)でのサークル数は1694件と言われている、旬のジャンルである。
そのゲームのキャラクターである刀剣男子達がMJに出演するという第一報が先日、刀剣乱舞の公式Twitterから流れた。
『@musical_touken
【お知らせ】刀剣男士 team三条 with加州清光 が、テレビ初出演!
NHK「MUSIC JAPAN」に出演が決定しました!!
番組収録の観覧募集はこちら pid.nhk.or.jp/event/PPG02731…
公式HP musical-toukenranbu.jp #刀ミュ 』
元ツイート:https://twitter.com/musical_touken/status/687146241038262272
基本的にヲタク、特に女性のヲタクは自分の仲間以外にはヲタクの話題に触れて欲しくないと考える傾向が強い。しかし、この出演に刀剣乱舞ユーザーは歓迎していると思われる反応がネット上で多く見受けられた。
なぜ、このテレビ出演が受け入れられたのか。
なぜ既存顧客に受け入れられる、新しい広告メディア展開ができたのか。
MJ出演が受け入れられた理由の1つに放送局がNHKである事があげられるだろう。
マスメディアにおけるヲタクの扱い、と言っただけで理解する人も多いだろう。
ヲタク文化というものは、日本の誇るサブカルチャーとして多くのメディアに扱われている。
しかし同時に、ヲタクを引きこもり、性犯罪などに結びつけ、殺人事件が起きて犯人宅からアニメのDVDが押収されれば、こぞって「アニメのDVD」と書き立てるなど、ヲタク達のメディアに対する不信感は大きいものがある。
特にマスメディアに対する不信感が募ったのは、黒子のバスケ作者脅迫事件の時期だろう。この事件は作者とは関係ないコミケを含めた二次創作中心のイベント等にも脅迫状が送りつけられた事件である。
そのイベントを取材する際に、ファンアートやイベント参加者を許可無しで、モザイク無しで民放の一部ニュースが放映していたのだ。芸能人の街ブラ番組ですら通行人にモザイクがかかる時代に、明確に撮影している撮影の対象者に許可すら取らなかったのだ。
メディア、ヲタク以外の人に対する不信感でいえば「TVタックル阿川佐和子事件」が記憶に新しいだろう。
2014年9月1日に放送された「ビートたけしのTVタックル」で「アニメ規制」について扱った回での出来事だ。3人のヲタクを招いてヲタクとはどんな物で、規制は必要なのかというテーマで話し合われている中、阿川佐和子が「ヲタクなのに就職するの?」と発言したことで、ヲタクには大きな衝撃走った。阿川佐和子という知識人、平等な論客、という印象があっただけに、一般人のヲタクに対する差別的な意識はここまで酷いものなのか、と。
もちろんNHKがヲタクを差別した内容を放送しなかった訳ではない。最近の話題になったものではEテレで放送された「ウワサの保護者会」という番組内で一般の人に聞いた「どんなオタクだったら安心ですか、どんなオタクだったら不安ですか」というアンケートで当然のようにゲーム、アニメ等は不安なオタク趣味に分類されていた。最も不安なオタク趣味はネット動画はボカロの歌詞が心配という理由であった。
しかしインターネット上の反応を見る限り、NHKやアンケートに答えた一般人に大きな怒りを向ける人は少なかった。むしろ、安心なオタク趣味に含まれていたエレベーターオタクという内容を見て「エレベーターが一番にヤバだろう」と冷静なコメントしていたくらいだ。
何故NHKに対しては大きな怒りや不信感を抱いた反応が見られないか。
それは上記にも見れるヲタクを取り上げる時のスタイルだろう。
一見ヲタクを問題視しているNHKのこの番組だが「オタクを問題視している保護者がいる」という客観的事実を元に番組が作られている。そしてアンケート結果もあくまで「一般の人にとったアンケート」である。
このように、NHKは一般的な世間の意見を元に番組を作っており、番組の作り手側に明らかな差別の意思が無いことがうかがえる。
NHKはヲタクに対して偏見が少ない、という事が刀剣乱舞ミュージカルのMJでのテレビ出演が受け入れられたのではないかと考えられる。
この出演を決めた広報や戦略担当者も、NHKに対するファン層のイメージや心理も加味しての決定をしたのだろう。
今後も、演者の俳優としてではなく、刀剣男子として民放を含めたマスメディア露出が考えられるが、どのような番組に、どのようなスタンスで出演をするのか楽しみだ。
more ヲタク×NHK
ヲタクがNHKがヲタク文化を扱う事に否定的ではないのには、NHKにヲタクとして育てられたと考える人達が少なからずいるからではないだろうか。
刀剣乱舞のターゲット層である20代〜30代が子供の頃、NHKで放送していたアニメは未だに根強い人気がある。「飛べ!イサミ」「カードキャプターさくら」「YAT安心!宇宙旅行」「コレクターユイ」「十二国記」「ツバサ・クロニクル」、古い民放を含めたアニメを放送する「アニメ劇場」、特に天才テレビくん内のドラマやアニメは中二病を助長させられた良作揃いとされ、バーチャル三部作と呼ばれた「恐竜惑星」「ジーンダイバー」「救命戦士ナノセイバー」、ドラマの「魔界探偵」「ザ・ゴーストカンパニー」等は私自身もまた見たいと思っている。
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