エンタメとマーケティング8 舞台ブームと商品開発
先日、とある舞台の観劇に行った。
その舞台は2,5次元系舞台の役者さんが多く出る舞台だが、内容は小劇場系の劇団がやるようなストーリー内容の舞台だ。
価格帯は特別席9000円程度 一般席7000円程度と、2,5次元系舞台以外の普通のミュージカルや舞台と変わらないか、少し高いくらいである。
主に顧客層は2,5次元系舞台から役者さんのファンになった女性のヲタクがメインの客層と言ったところだ。
このような2,5次元系舞台から端を発した若手俳優系舞台の収益状況を支えているのが2,5次元系舞台の「グッズ販売益」がある。元々の客層がヲタクという事もあってコレクター気質の人も多くグッズ展開も多く、さぞ収益をあげていのだろうと思うだろう。残念ながら否なようだ。
ヲタクの中にはコレクター気質の人間がいることは間違いない。ここ数年「痛バッグ」と呼ばれる収集したグッズを付けて持ち歩くバッグが流行るなど、グッズ熱は高い。
しかし、主催者側のマーケティング分析、グッズ展開が顧客に追いついていないのだ。
今回、私自身が観劇をしたのは完全な2,5次元系舞台ではないが、他の2,5次元系舞台だとしてもパンフレットと、役者のブロマイド程度しかない。もう、江戸時代の歌舞伎からさして進化していないのだ。
他にはトートバッグ、オリジナルTシャツ、舞台のロゴのステッカー等インディーズバンドのライブと変わらない商品ラインナップである。他に変わったものを販売している舞台ではガチャポンでランダムに缶バッチが出る舞台などがあった。
では、どんなグッズなら良いのだろうか。
今回のターゲットは20〜30代の女性。ヲタク活動の趣味で、そちらにも高額の出費をしていると考えられる。類似した条件の女性数人にインタビュー調査を行った。
・ポスター
一番多くの要望が出たのがポスターだ。実は地味に売られていないのが役者さんのポスターである。アイドル売りをしている役者さんでもポスターも売っていない。雑誌の付録の折り畳み線がついたポスターが唯一のポスターである。なので、舞台の役でもあれば嬉しいという意見が多く出た。
面白い意見としては
「ポスターサイズはA3とか少し小さめがいい」
という意見が出た。
多くのポスターを買いたいし飾りたいが、一枚が大きいと飾れないからという事だった。あとはA3までならコレクターアイテムとして飾りたい人ならではの意見もあった。
今回のターゲットの二次元系のヲタク女性以外にも、部屋をポスターまみれにする女性は案外多い。ジャニーズや韓流、アニメ好きは祭壇と呼ばれるグッズ置場の中心にポスターを飾るケースが多い。
・再二次元化グッズ
あえて役者さんの顔のイラストで再二次元化したキャラクターグッズが欲しいという意見は、どのインタビュイー(インタビューを受けている側)でも盛り上がる話題であった。
先日、日本限定で「ハリーポッター」のキャラクターをイラストにしたグッズの展開が発表され話題にもなっていた。
意見の中には「生身の人間のグッズは持ち歩くのは抵抗がある」という声もあった。
これを使えばアクリルキーホルダー、缶バッチ等の「痛バッグ」向けの展開ががしやすくなる可能性もある。
・シルエットグッズ
先ほどの意見の中にあった「生身の人間のグッズ」への抵抗の話だが、それでも役者さん作品への応援の気持ちもあり持ち歩きたいという意見もあった。
どうすれば持ちやすいかの提案で一番インタビュイーの反応が良かったのは、役者さんの写真のシルエットを使ったシルエットのグッズだった。
ファン心理として「役者さんへ少しでもお金が行けば良い」という感覚があるようで、役者さんの写真等は持ち歩きにくいが、役者さんへの分配がありそうなグッズを望んでいた。
逆に、今まで見た中で必要ないグッズは何だったか?という質問もした
・ロゴステッカー
舞台のロゴのステッカーだが
「役者さん目当てで行ってるので、必要ない」「学生の頃なら学校用ケースに貼ったけど、今は貼るところがない」「バンドのロゴはカッコいいけど、舞台のロゴは大体ダサい」「貼るところがない」
という意見があった。
中には「シリーズ化している舞台であれば、各公演でステッカー等あってもいい」という意見があったが基本的に、あまり人気がないグッズのようだ。
・筆記具
「ヲタクを私生活で悟られたくない」「あったら使いそうだとつい買ってしまうが、ロゴだけグッズは必要ない」
・Tシャツ
「ライブ感覚で買ったが次の公演がないので着ない」「パジャマになった」「どうせパジャマなら長袖Tシャツが欲しい」
音楽好きの人はよくあるだろう、普段使い用になった大量のマフラータオル、夏用パジャマになった大量のライブTシャツ。
それでもライブグッズを買ってしまうのは
『その日のライブで使うから』という自分への言い訳ができるから。
Tシャツに着替え、タオルを振り回す。この行為で得られる満足感のために購入している人は多いだろう。
しかし、舞台はどうだろう。基本的にはいくら2,5次元系舞台と言えど観劇だ。グッズはその場では使わない。ライブで得られる臨場感という価値が失われた分、ライブTシャツを買いたいと思う人も舞台観劇では購買意欲も減るだろう。
以上のような面白く、手厳しい意見を聞けた。
その中でも特筆すべきキーワードが3つあった。
・実用性
・お布施
・可愛さ
・実用性
飾れるかも含めた、使えるのかという点であった。どこに飾るか、持ち歩くか、コレクターとして集めるに値するか、これを買った後の日常生活を想像し、購入の決定打としていることが共通していた。
実用性として言えば、ブロマイドの購入理由に「コスプレ衣装やイラストを描くときの参考にしたいから」という意見も多くあり、衣装全体が見えるかが大事な購入判断基準にもなっているようだ。
・お布施
お布施というのは本来宗教的な意味だが、自分がどんなダメなグッズだろうが応援のために買ってしまう事を皮肉って「お布施」と言うネット用語のである。
そのお布施が誰に対するものなのかを重要視していた。役者さんのお金になりそう、この舞台の次回作のためにも、という考え方でグッズを買うようだった。
なので、作品としてイマイチの場合は好きな役者さんにお金が確実に入りそうなブロマイドだけ買って他のロゴやTシャツ等のグッズには使わない傾向が見受けられた。
・可愛さ
この可愛さの項目が、男性社会で運営されている日本の演劇の主催者には理解が難しい所だろう。
今回のインタビューで見られた可愛さは「萌え」ではなく雑貨やポスターとしてのオシャレさやセンス的なものに関しての意見が多かった。
「この舞台のブロマイドは役者さんの良さが出てないものが多い」「同じ角度の同じ顔ばかりだ」「この写真の構図は悪い」「背景がダサい」「このグッズは便利だけど使えない」「ダサいから買っても飾らない」
と、こだわりの感じられる意見が帰ってきた。それについて聞いてみると「自分自身が絵やコスプレで構図を考えるから気になる」という意見がでてきた。
今回はインタビュー調査という手法を用いて、明確に何が欲しいか、必要ないのかの意見と、その理由を聞いたが、2,5次元系舞台のような、顧客ターゲットが絞りやすい場合は顧客の他の趣味や、私生活などを推測調査する事から、商品開発に大いに生かすことが出来る。
是非、お客様が本当に欲しいと思う「買いたい商品」を提供してほしい。
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