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【レッスン編】ビーチ・ズーク・ランバダ ・フェスティバル
※「ビーチ・ズーク・ランバダ ・フェスティバル」は、スペイン・バルセロナ近郊で行われる、国際的なランバダ・ズークのフェスティバル。ズークは「踊るヨガ」とも言われる、カリブ諸島、ブラジルを中心に発展したペアダンスで、先にランバダズーク、その後にブラジリアン(リオ)ズークが出来た。今は2種類とも、ヨーロッパを中心に様々な世代に人気を博している。これは、完全な趣味でこのダンスを細々と楽しんでいる、フォロワー女性視点で書かれている。
※2 リーダー=踊りをリードする人。主に男性が多い。
※3 フォロワー=リーダーの踊りについて行く(フォローする)人。主に女性が多い。
参加者は経験者ばかり?!
全記事の通り色々な知識不足のため、私は「ブラジリアン・ズークをして1年、ランバダ・ズークを始めたばかり」という状態でスペインのズークフェスティバルに参加した。
さあ、実際に会場に到着したら、ヨーロッパ中の参加者、イスラエル人、ブラジル人、アルゼンチン人達で活気に満ちている。
彼らは「再会」を喜んでいるようで、初心者は全くいなさそうだ。
日本人でフェスティバルに参加していたAさんは、ランバダ・ズーク歴が10年以上で見るからに踊り方の美しさが違うし、もう一人の参加者Tさんも、ズーク経験は1年ながらも、地方や東京のパフォーマンスの経験をしっかり積んでいて、決め所をしっかり押さえて来ている様子だ。
「ズーク楽しい!」
となんとなくイベントやレッスンに一年参加し、ノリだけでやって来たのは、自分一人かもしれない……。
「それでも、食らいついて行こう!ブラジリアン・ズークは一年やってるしね!」
ドキドキとワクワクが同居する中で、私はレッスンスタジオへ向かった。
レッスンの比率
さて、ドキドキワクワクのレッスンは、Ariel&Leticiaからスタート。
ブラジリアンズークではなく、いきなり、完全なランバダスタイルである。
「ぎゃ〜〜〜、落ち着け、私!!」
この前東京で初めて覚えたステップが次々と出て来て
「本当に東京で教えてもらっておいて良かった……」
と、心の中はいっぱいいっぱいだったが、なんとかステップには倉らいつけていたようだった。
その後もずっとランバダタイルのレッスンが続き、結局ブラジリアンズークのリズムやステップが出て来たのは、2日間のJade& Pauloの時だけだった。ランバダスタイルとブラジリアンズークスタイルの比率は、そういうことから9:1といった所か。
もはや「ブラジリアン・ズーク1年やった記念」ではなく、「ランバダ・ズーク始めた記念」でのフェスティバル参加になってしまった。
「ま、でも楽しまないとね。ランバダズーク始めたばっかりで3日間踊って、どこまで上手になるか……これはある意味、面白い実験になるぞ」
そう思うと、自分自身が実験物のような気がして、愉快になって来た。
レッスンスケジュール
このフェスティバルでは全日3時間のレッスンが確保されていて、結構ぎっしりした充実の内容だったと思う。
一番多い土曜日は、
10:45~3時間、1時間のレッスンが3コマ
16:00~4時間、1時間のレッスンが4コマ
その前後に朝ご飯、昼食、夕食、そしてパーティーという訳だから、全てに参加したら、完全にナポレオンのような生活スタイルになる。
睡眠不足はキゾンバフェスティバル同様、覚悟で乗り込んだ方がいい。
体調が心配な場合は、朝寝、昼寝、夕寝をこまめに取るのが吉だろう。
言語は幸い、英語ばかり
嬉しかったのは、言語が全て英語だったこと。
先述したカルガ・キゾンバフェスティバルは、スペイン人インストラクターの時はほぼスペイン語だったけれど、このフェスティバルでは、ブラジル人、アルゼンチン人、イギリス人、フランス人、スペイン人、ポーランド人、どこのインストラクターも英語を使ってくれたから、分かりやすかった。
20歳代前半のブラジル人のインストラクター達は、レッスンの始め、こう言っていた。
「私達は、このバルセロナに来たのは初めてで、しかも私達の英語は上手じゃないんです。緊張もしています。
だから、どんどんフィードバックをちょうだい。“はい“、“いいえ“、質問、これらに私達は元気をもらいます」
You Tubeで見ていた超人達が、こんな可愛い挨拶を素直にして始め出すのだからキュンと来てしまい、私以外の参加者達も、ますます彼らの味方になったようだった。
でもこのようなアナウンスをしてレッスンに入った、ブラジル人インスラクター達、Otavio &Sara、Pedro & Cibeleをはじめ、全てのインストラクターの英語は十分よく分かったし、私のようにランバダ・ズークを始めたての入門者でも、注意する点なども含めて、彼らの英語はよく理解できた。
音楽をかけて踊る時間が長い
日本でもウォーミングアップはリラックスして、かつ楽しく行われるけれど、それはヨーロッパのインストラクター達もよく用いていた。
そして、楽しいウォーミングアップを短くした後、
「どんなこと教えるかを考えたいから、踊ってみて」
と言われることもあった。
特にPedro & Cibele達のレッスンは序盤はまるでパーティーの時のように、一曲の半分位を参加者と踊ったのだけれど、この時間がとにかく楽しい!
「初めまして」
が言語だけじゃなくて踊りというのは、すごく新鮮な感覚だ。
きっと相手達は、一発で私を
「始めたてだな」
と見抜いたかもしれない。
それでも
「ランバダズークの魅力を始めたばかりの子にこそ、伝えたい」
と思ってくれていたのか、リーダー達はレッスンの時から、びっくりする程気持ちの良いターンを何度も入れてくれたり、リフト技を入れてくれたりして、
「え、ランバダ・ズークってなんて楽しいの!」
と思える技で私を喜ばせてくれた。
他のペア達もみんな、とても楽しそうに踊っていた。
彼らをはじめ、他のインストラクターのレッスンでも、まず教える内容が決まって来て、みんなでステップの完成に取り組んでいる間も、途中段階でも音楽はとてもよくかかった。
音楽がかかるとなぜか気持ちがほぐれ、難しいステップでも出来てしまったりするから不思議だ!
リーダー達から
「いいね!楽しいし、ナイスフォローだよ!」
と言われると、ますます調子に乗りノリノリで踊っていたが。
フェスティバルが終わり、Facebookなどで友達になった後に知ったのだが、このヨーロッパ各国、アメリカ、アフリカ、ブラジルなどから来ていたダンサー達の多くは、なんと各国で活躍している先生がとても多かった……。
組む相手のほとんどが、各国の先生やコンペの勝者
先に知っていなくて、良かった。
きっと、恐れおののいていたかもしれない。
「どうして、始めたてなのにここまで楽しめるんだろう?」
何か魔法のようなものを、音楽をかけたレッスンから感じていた。
時々、そのリーダー達の中には、優しくアドバイスまでしてくれる人までいる。
Wi-Fiという、少し遠くから相手を操作したりされるステップがあるが、たとえばその技の場合、
「いい感じ!ただ、手の向きがこっちだともっとスムーズにフォローできると思うよ!」
「遠隔操作、成功!ただ、もうちょっと近い方が操作は楽かもしれないし、コンタクトがしやすいと思うよ!」
という感じに。
誰一人として、怪訝そうな顔をしたり気難しい顔をすることなくアドバイスしてくれるから、素直に従えてしまう。
「素敵なアイデアをありがとう!やってみるよ」
ランバ・ズークの王様Brazと女王様Rominaのレッスンの時には、個人単位でのウォーミングアップをした後に
「ペアを組んで」と言われ、
笑顔がとびきり素敵なブラジルの男の子に誘われた。
笑顔は伝染するのか、そんな笑顔を向けられて、私も相当な笑顔だったようだ。
「Hi!君、いい笑顔だね。どこから来たの?」
「Hi!日本だよ。あなたは?」
「僕は、ブラジル出身だよ」
「行ったことある!ブラジルなら、ズーク上手でしょ?」
「さぁ、どうかな。ベストを尽くすよ!ブラジルのどこに行ってたの?」
「えっとね……あ、ステップが分からなくなっちゃう」
「ごめん!うんと、この手をこうして、それでWifi になって……」
お喋りしてあまり説明を聞けていなかったのに、まるで先生のようにステップが分かってすごいなぁと思っていた。
しかし、王様Brazと女王様Rominaの模範ステップの時、なぜか先ほどのブラジル男の子が彼らに乱入し、踊り明かしている。
「ちょっと……!さっきの子じゃん」
「まだ小さかった男の子が、ここまでに成長した……。これからのランバ・キゾンバの後継者、Emanoelに拍手を!」
王様が、そう言って男の子、というか後継者を紹介した。
「後継者、そうら、ズークが上手だし教えるのも上手だよね」
私は、自身の間抜けな質問を思い出して、穴に入れたら入りたくなった。
また別のレッスンで組んだ、順番が回って来た、とても陽気なベテランリーダー。
レッスン中に踊っているとは思えない位、びっくりするほど陽気に踊り切ることが出来た。
「よく着いて来れてる!君、プライベートレッスン受けたらどんどん上達するよ。このフェスティバル中も、積極的に受けてみて」
とプライベートレッスンを提案してくれた。
「プライベートなんて、予算的にも無理です〜!着いてこれたのは、あなたのリードがいいからですよ。パーティーで、踊ってほしいです!」
なんてノリで答え、「ペア交代!」の合図の時には
「イエーイッ」
とハイタッチで別れた。
レッスンが終わった後、そのベテランリーダーの所にたくさんの参加者だけでなく、インストラクターまでもが挨拶に行っていた。
冒頭に書いた、同じ日本人で仲良くなった、10年以上ランバダズークを踊っているダンサー、Aさんと合流した時、Aさんが教えてくれた。
「あの人、ランバダズークを世界に広めてくれた立役者の一人だよ。Gilsonっていうの」
「ええっ!そんな世界的に有名な人と、普通にお喋りしてたなんて……!」
そう、マエストロ・Gilson や、後継者・Emanoelのサプライズを筆頭に、レッスンで組んだ人達は、半数以上が各地で活躍している先生達だった。
先生じゃなくても、例えばレッスン時から動きが綺麗で見惚れていたイスラエルの女性は、国際コンペティションで上位に入賞していたりしていた。
私は改めて、相当レベルの高いフェスティバルに引き寄せられていたことを知った。
「魔法のようにレッスン序盤から気持ちよく踊らせてくれるのは、それでだったのね……!」
各レッスンのレベルの高さ(それでいて、入門者でも着いていけるという考え抜かれた内容)、参加者達の相当な向上心や熱心さ(そう。パーティーで6時まで踊り明かしてメンバー達でも10:45のレッスンに定時で参加している率が高い)も、妙に納得できた。
本気であればある程、このフェスティバルのレッスンでは上達が約束されていると思う。
レッスン後、声をかけられて復習することも
レッスンが終わった後は、そのレッスンの技を使ってインストラクター達が一曲を通してデモストレーションを見せてくれるのだけれど、デモストレーションの準備が整う時や、デモストレーション後、次のレッスンまでの休憩時間に、復習ができる時間がある。
ランバダ・ズークは本当によく動くから、水分が摂りたくなるけれど、こういう時にトントンと引き留められることもあった。
後ろを振りかえると、イスラエルの男の子がこんな風に聞いて来る。
「Hi!さっきの技の復習、一緒に付き合ってもらえるかな?」
「いいけど、私でいいの?」
「もちろん!やってみよう」
このイスラエル君とは、レッスン序盤の自由に踊る時間から
「踊ろう!」
と言われ長く踊っていたが、とにかくダイナミックな動きに魅せられ、リズムの取り方も独特だったから、復習も既にパーティーで踊っているような、自由で楽しい時間だった。
入門者とたくさん踊ることでリード力も鍛えられると思ってくれているのか、奇跡的な位、レッスン時も待ち時間も、私を練習台にしてくれる人がいて嬉しかった。
こんな感じで先生レベルの上級者達が、びっくりする程気軽に入門者にも声をかけ復習もしてくれるから、そういう時は、喜んで受けて立って行きたいものだ。
組み立て式で、入門者でもいつの間にか出来ている
最終的にはだいぶ難しいステップを、どのインストラクターのレッスンでも完成させることになった。
どの先生も陽気で明るく、少しずつ、いつの間にかレベルを上げてくれているからか、入門者でもレッスンの終わりには、ステップをなんとか完成させられていた。
「え、ちょっと私達出来たよね?」
「僕達、パーフェクトだよ!イェイッ!」
私達は、両手を合わせて喜ぶ。
こんな感じで、自国ではチラシに載っているような先生と、始めたばかりの入門者が、ペアになって喜びを共にするのだ。
インストラクターの教えるレベルの高さ、リーダーのレベルの高さがあってこんなことが成し得られたんだと思うけれど、こうして完成していく各レッスンはなんだかマジックのようで、自分が宇宙船で一気に天井まで上げられたような、特別な気分がした。
ショーのようなデモストレーション
そして大事なのは、デモストレーションを目に焼き付けることも含まれる。
レッスンの時はゆっくり分かりやすくやってくれていたステップを、彼らはデモスレーションで芸術品であったり時にアバンギャルドな作品に昇華させる。
動画で数人の、人間業と思えない踊りは見ていたが、生の迫力はもう言葉に出来ないものだった。
「さっきのステップで、ここまで発展させられられるなんて……!」
世界各国の歓声がこれまた重なり、最高の盛り上がりを見せる。
この感動的な瞬間が、キゾンバフェスティバル同様、レッスン時間の中でも特に好きだった。
共通のポイント
最後に、たくさんの先生が伝えてくれていたことがある。
ランバダ・ズークは、後に伸びがやってくる。
その時床に足をつけて近づけて来ることを、何度も色々な先生から教わった。
「タンゴやキゾンバでも床とのコネクションは大切と教わっているけれど、ズークもそうなんだ〜。しかも、ランバダでは伸びが後になるけど、気を抜かないようにすることが大切なんだな〜」
と毎回頷いていた。
リズム遊びや抜くことも、特にブラジルのインストラクター達から教わった。
間が空いている時には、喉を鳴らす。
実際にエクセサイズで全員でやったのだが、全員の喉の音が会場に音響よく響きわたり、なんとも可愛いハーモニーだった。
「力まず、抜くこと」
踊るヨガということで、ここはブラジリアンズークと同様とても大切なんだと知れた。
Otavio&Saraのレッスン時にやったリズム遊びは、手を合わせたり、小さくジャンプをして表現する。
まるで南米の少女のような気分になれて、びっくりする程愉快だった。
スケートをするかのような床とのコネクション、抜く所は抜くこと、そして各所でリズムを表現すること。
世界的なダンサー達と学んだ、とても思い出深く大切なこと。
なかなか日本の地方でランバダ・ズークが踊れる所はまだ少ない、という、私の住んでいる町では今のところ皆無だが、機会ができたら復習したくてしょうがない……!