Research Fund 3.0 #02 開催レポート
2021年4月7日(水)、オンラインにて【Research Fund 3.0 #02 海外日本人研究者、クラファン挑戦への道】を開催しました。
この記事は、イベントの内容と得られた考察について書いたものです。
ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
そもそも、Research Fund 3.0とはなにか?
「牧野さん、Research Fund 3.0ってどういうイベントなんですか?」
最近ちょくちょくこちらの質問をいただくようになりました。身近な人ですら抱く疑問ですから、初見でこのnoteを読んでいる方は、ますますそう思いますよね。簡単に説明させていただきます。
Research Fund 2.0について気になる方は、末尾の関連リンク集をご覧ください。
このように、学生時代に単発で開催したイベントだったのですが、改めて社会人になった今、コアの問いかけに解決解を見出したくなったのです。
その第一弾として、2021年12月26日(土)に、【Research Fund 3.0 #01 研究費のイマを言語化し、ミライを予想する】を開催しました。こちらについても関連リンクを末尾に載せておきます。
本イベントのアーカイブ動画をYouTubeで公開中
イベント全編をアーカイブ動画としてYouTubeに公開しています。2時間弱と長い内容でしたので、細かくチャプターを付けました。ぜひ気になる部分から観ていただけますと幸いです。
歴史的瞬間だったので、竹内先生がサポーター100人突破した瞬間を切り抜き動画にしてみました。1分動画なので、ぜひ見ていただきたいです!
ゲストはデンマーク・オーフス大学、独立准教授の竹内倫徳先生
今回は、デンマーク・オーフス大学、独立准教授の竹内倫徳先生をゲストにお招きしました。竹内先生は、アカデミストでクラウドファンディングに挑戦中(※)で、目標金額400万円に向けて様々な広報活動をされています。
(※) 2021年5月27日(木)に終了しました。
資金調達のリアルを直撃
これまでのイベントでは、株式会社アカデミストの柴藤さんやiPS財団の渡邉さんといった、資金調達を助ける立場の方々にご登壇いただいていました。
次のイベントでは研究者張本人に資金調達のリアルを直撃してみたい。その思いで、竹内先生に様々な質問をさせていただきました。アーカイブ動画的には、01:12:56以降からの雑談タイムが該当します。本記事では、マインドマップを用いて内容を可視化してみました。黄色の部分が、牧野が特にポイントだと思ったところです。
直撃から見えてきたこと - 考察とネクストアクション -
なぜ、研究者は起業家のように資金を集められないのか?
前述の通り、これが本イベントの根底にある問いかけです。竹内先生のお話を聞いて、牧野なりに考察し、これからどんな行動を起こしていきたいかを書き記しました。
考察① 研究者の資金は、支援額と支援期間が決まってしまっているから
まず、「支援期間が過ぎたらお給料を払えないため、研究員や技官の方に辞めてもらうことになる」というお話しから、起業家との大きな違いは、資金調達先の支援額と支援期間がすでに決まっていることにあると気づきました。
例えば、起業家の主な資金調達先はベンチャー・キャピタル(VC)であり、支援額も支援期間もVCによります。一方、研究者の主な資金調達先は科研費であり、支援額も支援期間も公募の時点で決まっています。その結果、竹内先生がおっしゃっていたような、やむを得ず優秀な仲間をリストラする事態が起きてしまいます。
もちろん、起業家においても資金繰りが苦しくなるリスクはありますし、科研費は公募の時点で額と期間が確定しているからこその安心感はあります。VCと科研費の良し悪しを論じたいのではなく、私が真に課題だと思うのは、「研究者にとって資金調達先のメインが依然として科研費であり続けている」ということです。もっと自由に、柔軟に、資金調達先を探しに行くのが当たり前の世界にしたいと思いました。
② 研究者の「熱」に投資されていないから
次に、「研究計画より、竹内先生のことが知りたい」というフィードバックをもらったというエピソードに衝撃を受けました。
なぜならば、科学技術に関心を寄せる国や企業よりも、一般の人のほうが、「研究活動が生み出す価値は、研究結果だけではない」ことを無意識のうちに知っていることを示唆していると感じたからです。
私がこのような考えに至ったのは、2つの文献に触れたからです。1つ目は、近藤哲朗さん著のビジネスモデル2.0図鑑。こちらでは、「バランスシートに載らない価値」の重要性について言及されており、まさにここで説明されている創造性や社会性こそが、研究活動において日の目を浴びにくい価値だと思いました。
2つ目は、経済産業省が発表している産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン【追補版】です。この中で、研究者等や研究成果として創出された「知」への価値付けに関する課題と現状が述べられていました。端的に述べますと、「そういった価値の評価と報酬化が難しい」という話です。
これら2つの文献でのインプットがあった上で竹内先生のお話を聞きましたので、「クラファンは「知」の価値付けへの大きな社会検証になっているのかもしれない」と思いました。
そして実は、起業家の世界では、起業家自身の価値に対してお金が調達できる文化が当たり前に存在しているんです。
僕は君の「熱」に投資しよう。私はANRIの佐俣アンリさんが大好きなのですが、この著書タイトルがまさにそれを物語っていると思います。
研究者の「熱」に様々なステークホルダーが投資する世界。それを実現するために、課題の見極めや解決策をこれからじっくり考えたいと思いました。