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長編恋愛小説 ヨコハマ・ラプソディ

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ある男子大学生と小さな秘密を抱えた女子高校生との出会いと別れ、そして長い時を経ての不思議な再会を描いた長編恋愛小説。
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記事一覧

ヨコハマ・ラプソディ 1 おさげ髪の少女

澄みきった青を背景にゆっくりと東に流れる、刷毛でサッと伸ばしたような細く薄い巻雲の下に、…

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ヨコハマ・ラプソディ 2 山下公園

二.山下公園  とうとう約束した日曜日がやってきてしまった。待ち合わせの場所は、初めて会…

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ヨコハマ・ラプソディ 3 深夜の電話

三.深夜の電話  それから俺と志織は、ほぼ毎週のように、主に横浜市内で「デート」をするよ…

ヨコハマ・ラプソディ 4 馬車道

四.馬車道  四月も半ばを過ぎ、暖かいというより、日によっては少し暑さも感じるようになっ…

ヨコハマ・ラプソディ 5 江の島

五.江の島  ついにゴールデンウイークを迎えた俺たちは、横浜から少し離れた江の島まで出か…

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ヨコハマ・ラプソディ 6 ダイアモンドは傷つかない

六.ダイアモンドは傷つかない  国立寮自治会では、六月から新体制が発足する。五月の後半に…

ヨコハマ・ラプソディ 7 チョコパフェ

七.チョコパフェ  志織と「タップス」を見に行ってから数日経った日の夜、俺が珍しく大学の必修科目である、第一外国語の英語の勉強をしていた時だった。 「コンコン」 誰かが部屋をノックする音がした。 「はーい」 「なあ、松崎。お前、彼女いたよな。二人でうちらのライブに来ない?」 ドアを開け、無精ひげが妙にサマになっている顔を覗かせたのは、同じ学年で社会学部の富田だった。いつも部屋でエレキギターを弾いているやつだ。 「ライブ? ああ、お前バンドやってたっけ。なんの曲やんの? そも

ヨコハマ・ラプソディ 8 国立寮

八.国立寮  とうとう関東地方も梅雨に入った六月中旬。ある日の電話で、志織は大学へ進んだ…

ヨコハマ・ラプソディ 9 夏休み

九.夏休み  関東の梅雨明けが発表されたあとの最初の土曜日も、朝から太陽がじりじりと照り…

ヨコハマ・ラプソディ 10 いちばん長い日

十.いちばん長い日  迎えた約束の月曜日は、朝からとにかく蒸し暑い日だった。 暑さのせい…

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ヨコハマ・ラプソディ 11 気分転換

十一.気分転換  その遅く帰った日のお昼近く。 あんなことのあったあとだから、どうせ当分…

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ヨコハマ・ラプソディ 12 城ケ島

十二.城ケ島   迎えた城ケ島へのデート当日。この日も暑く、朝から抜けるような青空が広が…

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ヨコハマ・ラプソディ 13 母親

十三.母親  世間がお盆休みに入ると同時に、俺は佐賀に帰省した。 佐賀駅に着き、公衆電話…

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ヨコハマ・ラプソディ 14 雨やどり

十四.雨やどり  「ソーダ水の中を貨物船が通るのよ」 志織が片目をつぶり、結露したグラス越しに外の景色を見ようとしている。 「へー」と言いながら、俺も後ろを振り向き窓の外を眺めてみたが、確かに青い海は見えたけど、貨物船らしき大きな船の姿は俺の目には映らなかった。それよりも手前の住宅やマンションが若干気になる。それらがなければ、海の景色がもっとよく見えるのに。 八月も終わりに近づいた日の午後、ランチを取るために志織と共に訪れた根岸にあるレストランは、多くの客で賑わっていた。