三日月 秋

趣味で小説を書いている、関東在住のおっさんアマチュアギタリストです。好きなギタリストは松原正樹さん。15年以上前からのサガン鳥栖サポーター。

三日月 秋

趣味で小説を書いている、関東在住のおっさんアマチュアギタリストです。好きなギタリストは松原正樹さん。15年以上前からのサガン鳥栖サポーター。

マガジン

  • 長編恋愛小説 ヨコハマ・ラプソディ

    ある男子大学生と小さな秘密を抱えた女子高校生との出会いと別れ、そして長い時を経ての不思議な再会を描いた長編恋愛小説。

  • スケバン刑事シークエル 麗しき毒蛇の復讐

    スケバン刑事テレビシリーズのその後を描いた長編アクション小説

最近の記事

ヨコハマ・ラプソディに出てくる80年代初期の楽曲集

私が書いた「ヨコハマ・ラプソディ」という恋愛小説には、1980年代初期に流行った楽曲の名前がいくつか出てくるのですが、それらの曲を小説に登場する順番通りに載せた楽曲集なるものを、戯れにちょいと作ってみました。 一部を除き、基本的には80年代になってから発表された曲を載せています。 小説の舞台となった1982年当時の雰囲気を懐かしく思ったり、あるいはへえと新しく興味を持っていただけたら嬉しく思います。 まずは、私が女性アイドルとして初めて好きになった歌手、松田聖子さんの曲から

    • スケバン刑事主演女優さんにまつわる思ひ出

      初代 斉藤由貴   私はかつて、斉藤由貴さんのファンだった。 ファンクラブにも加入していた。「斉藤由貴友の会」。 しかし1990年、「Moon」というアルバムが発売された頃から、いつの間にか私は、彼女に対する興味を次第に失っていった。 まるで、砂浜から潮がスーッと引いてゆくように。 自分のことなのに自分でも不思議だった。多分あの頃、「Moon」はほんの数回しか聴いていない。 「Moon」発売の直前までは、やれコンサートだ、ドラマだ、映画だ、舞台だ、ニューアルバムだと騒い

      • ヨコハマ・ラプソディ 20 氷川丸

        二十.氷川丸 すべては、はるか遠く過ぎ去った、懐かしい過去の思い出。 俺は今、ほぼ三十年ぶりに、山下公園を訪れている。 一人で、もうかれこれ三時間近く、氷川丸が見えるベンチに座っている。 ここでまた志織と出逢ってからの日々のことを、雪山での出来事について、静かに追想に耽っていた。 山下公園から見る景色は三十年前と比べ、ずいぶんと変わった。 当時はまだ横浜ランドマークタワーも、大観覧車もなかった。建設中のベイブリッジは、まだ無骨な土木建造物に過ぎなかった。 山下公園に来る前

        • ヨコハマ・ラプソディ 19 富樫岳

          十九.富樫岳   志織に逢えなくなってから長い歳月が過ぎてゆき、あれは確か、東日本で大震災が起きる二年前の冬。いや、暦の上ではすでに春だった。     「おかしい……」 また、一層強い横殴りの風雪が俺を襲う。 あまりの強烈さに、ゴーグルを付けているにもかかわらず、俺は思わず目をつぶった。 もうとっくに樹林帯に突き当たるはずだった。俺は歩みを止め、ぐるりと周りを見渡した。 俺の前後左右、すべてが雪と厚いガスに覆われ、ほぼなにも見えない。視界は約七、八メートル。良い時でせいぜい

        マガジン

        • 長編恋愛小説 ヨコハマ・ラプソディ
          20本
        • スケバン刑事シークエル 麗しき毒蛇の復讐
          9本

        記事

          ヨコハマ・ラプソディ 18 赤い電話器

          十八.赤い電話器   横浜から帰ったあと、魂の脱け殻と化した俺はまた自分の部屋の中でゴロゴロと無為に過ごすようになった。大学の授業にもまったく出なくなり、小説にもあまり手を付けず、ただ漫画だけを読んで長い一日を潰していた。 そんな、志織と別れてから三ヶ月が経とうとしていた頃の、朝から降っていた冷たい雨が夕方には雪に変わった日の夜。 来月から始まる今年の入寮情宣について話し合っていた執行委員会は、思った以上に長引いていた。 本来なら、情宣ビラの文面を確認するだけですぐ終わるは

          ヨコハマ・ラプソディ 18 赤い電話器

          ヨコハマ・ラプソディ 17 ビルの角

          十七.ビルの角   港警察署からは、一度だけ呼び出を食らった。聞かれたことは前回と大差なかったけど、俺の言うことを百パーセント信じている訳ではないが、一応事件解決の立役者である俺に免じて、細かいことは不問にしてやる、という雰囲気だった。 それと安心したことに、監禁されていた女の子は、柴田という黒服野郎から裸の写真を何枚も撮られたけど、性的暴行は受けていなかったと警察から聞いた。 そのことを早く志織に教えてあげたかったが、最後に逢った日から二週間過ぎても、三週間が経っても、彼

          ヨコハマ・ラプソディ 17 ビルの角

          ヨコハマ・ラプソディ 16 絆創膏

          十六.絆創膏  一か月半ぶりに志織と逢った日は、朝から冷たい秋雨がしとしと降っていた。 いつものようにMoonで久しぶりに逢った志織は、やけに明るかった。 「機嫌よさそうじゃん。なにかいいこと、あった?」 「このあいだの全国模試がね、結構いい成績だったの」 「ほう、さすが志織。よかったね」 「へへへ」 「でも志織。少し痩せたように見えるけど、ちゃんとご飯食べてんの?」 「ほんと? ちゃんと食べてるよ」 それでも、彼女の笑顔にどことなくぎこちなさを感じた俺に、微かな不安が残っ

          ヨコハマ・ラプソディ 16 絆創膏

          ヨコハマ・ラプソディ 15 白いスカートの少女

          十五.白いスカートの少女  俺の手が届かない遠くの先に、薄いピンク色のカーディガンに白いスカートをはいた、少女の後ろ姿が見える。 俺は女の子に声をかけようと思った。でも、なぜか声が出ない。 少女は前を向いたまま、ゆっくりと歩いていく。 待って! どこへ行くんだ! 待ってくれ! そう言いたいのだけれど、声にならない。おまけに足も動かせない。 待ってくれ! 俺を置いていかないでくれ! でも、女の子は俺の方を振り向いてくれない。 くそっ! なぜ、声がでない。なぜ、足が動かないんだ

          ヨコハマ・ラプソディ 15 白いスカートの少女

          ヨコハマ・ラプソディ 14 雨やどり

          十四.雨やどり  「ソーダ水の中を貨物船が通るのよ」 志織が片目をつぶり、グラス越しに外の景色を見ようとしている。 「へー」と言いながら、俺も後ろを振り向き窓の外を眺めてみたが、確かに海は見えたけど、貨物船らしき大きな船の姿は俺の目には映らなかった。それよりも手前の住宅やマンションが若干気になる。それらがなければ、港の景色がもっとよく見えるのに。 八月も終わりに近づいた日の午後、ランチを取るために志織と共に訪れた根岸にあるレストランは、多くの客で賑わっていた。志織の話では

          ヨコハマ・ラプソディ 14 雨やどり

          ヨコハマ・ラプソディ 13 母親

          十三.母親  世間がお盆休みに入ると同時に、俺は佐賀に帰省した。 佐賀駅に着き、公衆電話で実家に到着を知らせてから北口のロータリーで両親の迎えを待つ。 気のせいだとは思うが、やはり佐賀は東京に比べて少し暑いような気がする。というか、太陽の日差しが強烈なのだ。子供の頃はこの暑さをろくに暑いとも思わず、友達とはしゃぎ回っていたのだが。 見覚えのある白いカローラで佐賀駅まで迎えに来てくれた両親は、二人ともすこぶる元気そうで俺は安心した。 「元気しとったね?」と母親が尋ね、「うん。

          ヨコハマ・ラプソディ 13 母親

          ヨコハマ・ラプソディ 12 城ケ島

          十二.城ケ島   迎えた城ケ島へのデート当日。この日も暑く、朝から抜けるような青空だった。 出かける前に見た、寮のロビーにあるテレビでの天気予報も、山沿いを除き雨の降る心配はないと言っていた。 横浜駅、京浜急行の改札口前で待ち合わせた俺たちだったが、俺にはまだ複雑な感情が残っていた。 志織は相変わらずの、無邪気な愛らしい笑顔を俺に見せてくれた。でも俺はその時、上手く笑えていただろうか。 志織の服装は、白系の爽やかな印象のワンピースだった。それと彼女がかぶる、淡いピンク色のつ

          ヨコハマ・ラプソディ 12 城ケ島

          ヨコハマ・ラプソディ 11 気分転換

          十一.気分転換  その遅く帰った日のお昼近く。 あんなことのあったあとだから、どうせ当分、志織から連絡は来ないだろうと思い、俺はしばらくアルバイトでもしようと考えていた。けれどその時、寮に来ていたアルバイトの募集はどれも肉体労働系だった。 寮の掲示板に張られていた三枚のアルバイト募集の張り紙を、さてどうしたものかと、寝不足でボーッとした頭で見ていた時、俺宛に電話が来ていると寮内放送で呼び出された。 「もしもし」 「あっ、信也さん? 志織です!」 受話器から聞こえてきたのは

          ヨコハマ・ラプソディ 11 気分転換

          ヨコハマ・ラプソディ 10 いちばん長い日

          十.いちばん長い日  迎えた約束の月曜日は、朝からとにかく蒸し暑い日だった。 暑さのせいで朝の六時半頃には、俺はすでに目を覚ましていた。枕元の目覚まし時計を見て、もう一度寝ようと思ったが、それからはもう暑さで眠れなかった。 仕方がないので溜まっていた洗濯物を片付けようと、朝から寮の一階にある洗濯機を回し、干した洗濯物は午前中には全部乾いていた。 ベランダから外を見ると、所々に雲はあるが空はよく晴れている。午後に向けて、これからさらに暑さは増すだろう。でも、そんなことは大した

          ヨコハマ・ラプソディ 10 いちばん長い日

          ヨコハマ・ラプソディ 9 夏休み

          九.夏休み  関東の梅雨明けが発表されたあとの最初の土曜日も、やはり暑く空は快晴だった。 志織は昨日の午後から高校の夏休みに入っていた。うちの大学は一部の学部以外、すでに夏休みに入っている。これからは曜日に縛られることなく志織と逢うことができる……はずだった。 だが俺は生憎、今日は寮の行事があり志織とは逢うことができない。それどころか、俺にはやるべきことが目白押しだった。 俺は、この土曜日と翌日の日曜日に近所の地域センターで行われる夏祭りに、国立寮自治会として参加する綿菓子

          ヨコハマ・ラプソディ 9 夏休み

          ヨコハマ・ラプソディ 8 国立寮

          八.国立寮  とうとう関東地方も梅雨に入った六月中旬。ある日の電話で、志織は大学へ進んだらいずれ一人暮らしがしたいと話していた。その話の流れで、志織が国立寮の俺の部屋まで遊びに行きたいと言い出し、結局次の日曜日、寮に来ることになった。もちろん彼女が俺の部屋まで来るのは、今回が初めてのことである。 この日の俺は朝早くに目が覚めた。じっとしていられなくて、やたらコーヒーが飲みたくなり、ロビーの自販機まで何度も往復した。吹かすタバコの本数もついつい増えてしまう。 自分の部屋に女

          ヨコハマ・ラプソディ 8 国立寮

          ヨコハマ・ラプソディ 7 チョコパフェ

          七.チョコパフェ  志織と「タップス」を見に行ってから数日経った日の夜、俺が珍しく大学の授業の勉強をしていた時だった。 「コンコン」 誰かが部屋をノックする音がした。 「はーい」 「なあ、松崎。お前、彼女いたよな。二人でうちらのライブに来ない?」 ドアを開け、無精ひげの生えた顔を覗かせたのは、同じ学年で社会学部の富田だった。いつも部屋でギターを弾いているやつだ。 「ライブ? ああ、お前バンドやってたっけ。なんの曲やんの? そもそもどんなジャンル演るんだっけ?」 富田がギター

          ヨコハマ・ラプソディ 7 チョコパフェ