火曜日しばらく雑記帳・11:バンドリン奏者 Lucas Neves Melo, Jacob Do Bandolim
先週は、月曜日と火曜日に川崎にあるオフィスに、金曜日に六本木ヒルズのオフィスに顔を出した。2年と半年ぶりに顔を合わせた同僚に出会ってやぁやぁやぁ、あるいは、しょっちゅうミーティングをしているけれど顔を合わせるのは半年ぶり、というような偶然の出会いがいくつもあったりした。
ちょっと難しい問題をF2Fで気軽に相談できるのはやっぱりいいものだ。
問題を自分でうまく特定できず、ずばりと書き言葉で質問できないことでも、曖昧なままエキスパートと会話しているうちに、次第にうまく問題を定義できて、なるほどの答えを導くことができる。
あるいは、ちょっとした雑談をきっかけに思わぬ技術論議になって、議論白熱のうちに話題の中心がずれていき、最近に悩まされたトピックに発展し、関連した関連資料を教えてもらったりして有意義だった。
通勤時間は無駄だ、という声もきくが、私にとっては読書の時間をしっかりと確保できるし、気が向かなければ居眠りしてもいいし、考え事をしてもいい。一日のリズムをしっかりと作る作用もあるので、前向きにとらえている。とはいえ、切れ目なくミーティングが続いたり、技術ディスカッションのチャットやメールに参戦するなどで、移動のタイミングを逃してしまうと大変なので、その点は注意している。
会話も仕事もキャッチーボール。ボールを投げて、投げ返されるまでの間にうまく移動するのがコツといえばコツだ。
■先週、プーレ・オ・ヴィネーグルを作って食べた。要は鶏肉のヴィネガー煮というわけだが、比較的簡単に(しかもお財布に優しく)ちょっと本格パリのカフェ風に出来るので、よく作る。これまで作ったなかで見映えが比較的いいやつを貼っておこう。
鶏肉をぽってりとした酸味で食べる、といえば手羽元をお酢と醤油の和風味でことこと煮る(圧力鍋があれば一発)というのもポピュラーだし、レモンとガーリックにバジルとビールで炒め煮など、そういえば似たようなバリエーションは多いと思う。
■先週、レーダーにひっかかった音楽を少し。
1.Lucas Neves Meloと Michael Pipoquinha のシングル、"Baião de 3"は、私にはちょっと新しいサウンドでよかった。
ブラジルの素晴らしいベーシスト、ミシェル・ピポキーニャについては以前記事にした。
ミシェル・ピポキーニャをフォローしている関係でひっかかってきたわけだし、もちろんベースの素晴らしい演奏やソロも聴きどころだ。それからどこかアフリカやポルトガルの雰囲気を感じさせる楽曲もいい。マンドリンやポルトガルギターのような音色の弦楽器の、高速でパーカッシブ、流れるような演奏が心地よい。
ちょっと調べてみたら、ブラジルのショーロという歴史の古いポピュラー音楽で使われるバンドリンという楽器があるらしい。2弦づつの4コースで全8弦で涙粒型の小さい胴を持つマンドリンということだ。Lucas Neves Meloは、5コース10弦のバンドリンを弾く名手らしい。
まだ、大々的に売り出されてはいないようで、Spotifyでは今回のこのシングルが一曲だけ、YouTubeでは、プライベートな録音っぽいのが2011年からいくつか上がっているが、視聴回数もまだまだ少ないようだ。
こうして聴くとかなりのテクニシャンではないかと思うがどうだろう。なかなか聴かせる。
これからブレークするかもしれない。
バンドリンについて軽く調べたところでは、Jacob Do Bandolim (ジャコー・ド・バンドリン wikipedia ) という名手がいるらしい。1918生まれで1969年没だということで、ショーロ、バンドリンの歴史的レジェンドといったところのようだ。
Spotify でもたくさんのアルバムを聴くことができるが、Original Classic Recordings を選曲しておこう。古い録音だと思うが、どの曲を聴いてもなかなか心地よい。
ショーロもあまり聴けていないのだが、これから聴くことが増えていきそうだ。
2.小曽根真と彼が率いるビッグバンド、No Name Hoses のベスト盤がリリースされていた。
チックコリアのRTFの名曲、La Fiesta もいい演奏だ。後半で Spain のフレーズが入ったり、いろいろ楽しめる。
3.梅雨空の土曜日、朝のうちにジョギング 13.8km をすませ、午後は、ビールを飲みながら、読書しながら、小曽根真の3枚目のアルバム、1987年の Now You Knowを聴きながら、うたた寝していた。
このアルバムは、ジョン・アバークロンビー (g)、マーク・ジョンソン(b)、ピーター・アースキン(ds)、私が愛してやまないジョン・アバ・トリオがバックを固めて、そしてフルートのスティーヴ・クジャラが参加している。小曽根真のファンにはどうだろう、あまり受けはよくなかったかもしれない。
ジョン・アバークロンビー、マーク・ジョンソン、ピーター・アースキンといえば、1988年の Getting There はずっと愛聴盤だ。美しいジャケ写もいいが、すべての曲が静かで毅然とした迫力を持っている。
タイトなリズムセクションの上を縫って闇を切り裂いていくようなギターシンセの音色がいいし、1曲目 "Sidekicks" や6曲目 "Furs On Ice" のマイケルブレッカーのサックスも最高だ。
静まり返った午前3時、しとしと雨が降って高圧線がジジジとかすかにうなる深夜に、何かもの思いにふけるとき、Getting There、何度聴いたことだろう。
4.バジ・アサドのシングルがリリースされていた。
聴いていて楽しく、自然に笑顔になる。なかなかよい。
5.ポムの新しいシングル "Tombeau" もよかった。
ポムは愛しているので「世界の歌姫たち」に加えようと思っている。が、記事にクレモンティーヌを合わせて書いたので、ちょっとそのへんどうしようかな、と思って逡巡しているところだ。いずれ書き直すつもりだ。
■ 偶然というのはいい。
バランスがとれた現状で必然が支配し予測可能な未来ばかりなら、仕事はしやすい面もあるかもしれないし、変化を嫌う人にはそのほうがいいかもしれない。
が、そこから外れた新しい何かは生まれにくい。アンバランスで不確定で予測のできない未来は少し怖いし、自分のペースを乱されるのはストレスかもしれない。しかし、偶然の出会いや会話から新しい地平が開けたときの楽しさは代えがたいものがある。
とかく効率をとバランスを求める世の中の風潮はあるかもしれないが、無駄かと思っても偶然を求め、時には大きくバランスを崩すことは、新しい知識の獲得のためには大事なことだ。
■関連 note 記事
ずばり関係していそうでいて、あまり関係ないかも、だが。
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