火曜日しばらく雑記帳・2024 CW37
IEEE の Spectrum を読んでいたら Rogue Planets という耳慣れない言葉を見た。直訳すると「ならず者惑星」あるいは「流れ者惑星」といった感じだろうか。日本語での学術用語は「浮遊惑星」(浮遊惑星 | 天文学辞典 (astro-dic.jp))ということだ。宇宙空間を孤独に旅する惑星だ。
通常、惑星といえば恒星のまわりを回っているのを想像する。それがどうやら、地球くらいの質量をもった惑星がもとの恒星系からはじき出されて、孤立して存在している、そんな Rogue Planets というのがあるらしい。記事に出てくる OGLE-2016-BLG-1928 はその一つだ。
恒星ではないから自分で発光することはなく、また、太陽系の惑星のように近くの恒星の光を反射して輝くこともない。
では、どのようにして観測できるのだろうか。それは重力レンズの作用を利用するのだそうだ。つまり、遠くにある恒星をRogue Planetが横切ったときに、惑星の重力場で遠くの恒星の光を曲げてレンズのように働くのを観測するのだ。この重力レンズ効果によって恒星が一瞬明るくなる( OGLE-2016-BLG-1928 の場合、ある星の明るさを 20%明るくし 6 時間持続)、それを捉えるわけだ。
CCDチップに映った何百万の星の輝きの変化を長い時間監視する必要がある。そして発見できる可能性を増やそうとするならば、分解能を落とさずに視野を広くする。もちろん宇宙から観測するのがよい。それが、The Roman Space Telescope (ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡 - Wikipedia) 広視野赤外線宇宙望遠鏡による観測計画だ。
理論そのものは100年くらい前のものだ。一般相対性理論は1915年、重力レンズは1936年だという。当時アインシュタインは「対象物、重力源、観測者が一直線上にならぶ現象は発生する可能性が低いため観測は不可能だろうと考えていた」(重力レンズ - Wikipedia)とのことだった。しかし、1979年にはクエーサーによる重力レンズ効果が観測され、さらに近年の目覚ましい技術発展によって、Rogue Planetsによって発生するものも観測ができるようになったのだ。
そんな宇宙の真理を解き明かそうとする人類の執念もロマンティックだが、想像してみてほしい。宇宙空間をあてもなく旅している地球や木星のような惑星が無数にあるという。そのなかのいくつかが、滅亡する恒星系から逃げてきた異世界の宇宙船かもしれない。
どんな世界なのだろうか。ジェームス・ティプトリーJrの書いた短編小説の一つにあったような世界、例えば地中からの発熱と放射線放射によって地表は常温に保たれ、奇妙な植物が生い茂り、空を覆う雲が一日中ぼんやり輝く、そんな世界だったりするのだろうか。
■先週も仕事のプレッシャーが徐々に高まり余裕なく、食事は簡単にできるものばかりだ。
たとえば、9月10日は鶏のモモ肉があった。
鶏を皮目から焼いておき、にんにく・玉ねぎとトマト缶少々を炒めて頃合いを見て鶏を戻してさらに煮て火を通し、生クリームとマスタードを入れてソースにすれば、見た目も良くリッチにとても美味しくできる。マッシュルームがあるともっとよかった、と今、写真を見て思った。
12日はメカジキでスパゲティ。
オリーブオイルとニンニクを効かせて、青唐辛子でピリっとアクセント。カボスを絞るとまた爽やかでよかった。
前後するが、11日は茄子とパスタのオーブン料理。
トマトとピーマンにタマネギ、鶏、パスタ、それらに素揚げにした茄子をオリーブオイルで絡めてチーズを振ってオーブンで30分ほど焼く。
適当に作ったわりには、これは美味い。というか、材料の組み合わせを見れば、これも失敗しようがないほど単純だ。あっという間にご馳走様。
先週のカリーはカボチャのカリー。
スパイスはスターターにマスタードシードとカルダモンシード、メインは自分で挽かずにMDHのチキンカリーマサラ。米はいつものとおりバスマティライスにアジョワンホールを散らして少し薬くさいアクセント。カボチャのカリーは、ねっとりとしつつ繊維を感じる食感に、自然な甘さとコクで美味い。
先週も今週も少しレシピめいたものを記述したが、レシピをちゃんと書ければもう一つ高いレベルで魅力が伝わるかも、と思っていたら、プロの方のこんな記事を読んだ。いろいろ考えさせられる。
レシピづくりは難しい。特に見知らぬ第三者に向けて書くレシピは難しいし作成までの労力は並大抵のものではないと思う。調理器具の差異や計量のクセやばらつき、材料の大きさや質のばらつき、そういったプロセス上のばらつきはとても大きい。味覚も人によって大きく違う。そういった変動要素に影響されにくい(=再現性の高い)、そんなレシピを作ろうと思えば、時間も労力もコストもさらにかかることであろう。
そういうと、アウェーでの料理、というのはかなりチャレンジなものだ。次回は、私の浅い経験ー出張ビストロしまむらーからちょっとそんな話を書いてみようと思う。
■先週にひっかかった音楽を少し。
1.ダンス音楽にフラメンコギターが心地よい、パコ・ヴェルサイユ(Paco Versailles)。
名前の由来は、フラメンコの巨匠のパコ・デ・ルシアからパコ、フランスののヴェルサイユから来ているということだが、コンビを組むのはアルメニア出身のフラメンコギタリスト・バハグニ(Vahagni)と、シンガー・ソングライターにしてプロデューサだというライアン・マーチャント(Ryan Merchant)。
新しいアルバム "Ole Maca" からのシングルだ。
軽く聞き流してよし、踊ってよし。少し物憂くけだるい感じで熱っぽいLA西海岸の風を感じる音作りにフラメンコギターがなぜか合う。
2.セネガルのコラ奏者、セク・ケイタの新しいアルバム "Nay Rafet" もよかった。
セク・ケイタについては以前に書いたし、何度も書いている気もする。
3.マイルスバンドでデビュー、80年代から活躍しているジャズ・ギタリストのマイク・スターン。この雑記帳ではたびたび取り上げているが、ブレッカーブラザース・リユニオンや、そのほか広く様々な国のミュージシャンのアルバムに参加したり、活躍しているし、奥様のレニ・スターンとともにツアーにも出ている。大好きなギタリストの一人だ。
少し久しぶりだろうか、リーダーアルバムがリリースされた。"Echoes and Other Songs"
レニ・スターンのンゴニのイントロから始まる "Connection" にまず引き込、まれる。
マイク・スターンらしく、テーマはサックスが表に出て後ろに隠れて支えるような演奏だ。耳慣れたフレーズ連発のギターのソロに続き、サックスのソロも軽快でいい。この人のギターはテレキャスターっぽい形だが、ヤマハの特注モデルということだ。音も演奏も昔から変わらず、好きなことを好きなようにやっているだけさ、というそんなオープンでこだわりのないところが魅力だ。
とはいえ、今回のアルバムはこれまでとちょっと違うような気もする。いつもよりカラフルだし、エスニックな要素もあってバラエティに富んでいる。
バンドのメンバーは、クリス・ポッター(sax), クリスチャン・マクブライド(b), アントニオ・サンチェス (ds) の一組(track 1, 2, 3, 6, 7, 8, 10, 11)と、ボブ・フランチェスキーニ(sax), リチャード・ボナ(b), デニス・チェンバース(ds), の一組 (track 4, 5, 9 )、という豪華な布陣だ。さらに Arto Tuncboyacian(perc)が加わり(track 1-5, 8-11)、そしてレニ・スターンが 3曲 (1, 5, 8) でンゴニ (*1) を弾いている。
キーボードで、ジム・ベアードが参加しているが、何か月か前に天国に旅立ってしまった。マイク・スターンにとっては盟友を失った悲しみを超えてのリリースということになるだろう。
5曲目 "I hope So", 9曲目 "Curtis"ではリチャード・ボナのボーカルもフィーチャーされ魅力たっぷりだ。タイトル曲の "Echoes"もいいが、"Gospel Song"も美しい曲だ。
4.久しぶりにマライカを聞いた。この曲はいつ聴いてもいい。
5.YouTubeのおススメでフラメンコギタリストのヴィセント・アミーゴのTVでのライブ演奏があがってきた。こちらも楽しめる。
まずは、Callejón de la Luna (A Juan Habichuela)
そして、Limón de Nata (Rumba)
6.ギリシャのダフネ・クリトハラスのシングル "Xapa"
3年ぶり3枚目のアルバムが出るのではないかと思う。楽しみだ。
■金曜日の早朝に京都の自宅に帰り、金曜日は朝から一日仕事。土曜日は午前中に京都の洛北を走るいつものコースを 13.0km 走ってきた。13.9kmのコースだったのだが、最後 1km 弱手前でギブアップ。1か月前よりもだいぶんマシだったが、やはりまだまだ太陽の光は強烈で消耗した。
まだまだ暑い。京都では猛暑日が50日を超え国内で観測史上初、熱帯夜も50日を超えているので一足お先に 50/50 となったということだ。
とはいえ、夕方にふと空を見上げるとやはり秋の空。
土日月の三連休は京都の自宅で仕事を気の向くまましながら読書をちょい、のん兵衛だらりと、ゆっくりと過ごした。昨日(17日火曜日)は日中は京都の自宅で仕事、夜遅くの新幹線で京都の自宅から新横浜の事務所に戻った。ちょうど中秋の名月、明るい綺麗な月がよく見えた。
血で血を洗う地上のいざこざと、それをじっと空から見ている数々の衛星群、ルビジウムで時刻を刻み世界をつなぐ通信網、そして星々の輝きの微かな変化をとらえようと、じっと天空を見ている望遠鏡。
こんなことをいつまで続けるつもりなのだろうか。即時かつ永遠の停戦を求める。
私達はどこから来てどこへ行くのだろうか。
■注記
(*1) ン・ゴニは、ひょうたんや木で作られた細長くくびれた共鳴胴の表面にヤギなどの動物の皮を張ったギターのような西アフリカの楽器で、似た形の弦楽器はアフリカから中近東に広く見かけるように思う。