【人事に効く論文】新しい職場で活躍できるか不安? 自己効力感があれば、何とかなるっ!
1. 3分で分かる論文の概要
職場における新人(新卒社員とは限りません)の組織社会化とそのアウトカムについて、本人の自己効力感やプロアクティブ行動が与える影響を中心に研究した論文です。カナダの大学生(フルタイム勤務経験あり)140名によるアンケート回答を元に、以下の仮説が検証されました。→ 仮説が多くて読むのが面倒なので、結論だけ知りたい人は「2.私的な解説/感想」に飛んでください。
仮説①:
新人の自己効力感は、プロアクティブ行動と正の相関がある
→ 支持された。具体的なプロアクティブ行動として、フィードバック希求(feedback-seeking)・情報希求(information-seeking)・一般的社交行動(general socializing)・ネットワーキング(networking)・上司との関係構築(boss relationship building)と相関していた
仮説②:
a. 制度化された社会化戦術は、新人のプロアクティブ行動に相関する
b. 個別化された社会化戦術は、新人のプロアクティブ行動に相関する
→ a.の制度化された社会化戦術がプロアクティブ行動に相関していた
仮説③:
新人の自己効力感は、(a)仕事の習熟度(task mastery)・(b)役割の明確さ(role clarity)・(c)社会的一体性(social integration)・(d)人と仕事の適合性(person–job fit)・(e)人と組織 の適合性(person–organization fit)・(f)職務満足度・(g)組織コミットメント・(h)帰属意思(intent to return)と正の相関がある
→ (a)仕事の習熟度・(c)社会的一体性・(d)人と仕事の適合性・(e)人と組織 の適合性・(f)職務満足度・(g)組織コミットメントと相関していた
仮説④:
制度化された社会化戦術(Institutionalized socialization tactics)は、(a)仕事の習熟度・(b)役割の明確さ・(c)社会的一体性・(d)人と仕事の適合性・(e)人と組織 の適合性・(f)職務満足度・(g)組織コミットメント・(h)帰属意思と正の相関がある
→ (b)役割の明確さ・(c)社会的一体性・(d)人と仕事の適合性・(e)人と組織 の適合性・(f)職務満足度・(g)組織コミットメント・(h)帰属意思と相関していた
仮説⑤:
新人のプロアクティブ行動は、(a)仕事の習熟度・(b)役割の明確さ・(c)社会的一体性・(d)人と仕事の適合性・(e)人と組織 の適合性・(f)職務満足度・(g)組織コミットメント・(h) 帰属意思と正の相関がある
→ (b)役割の明確さ・(c)社会的一体性・(d)人と仕事の適合性・(e)人と組織 の適合性・(f)職務満足度・(g)組織コミットメント・(h)帰属意思と相関していた
仮説⑥:
新人のプロアクティブ行動は、(a)仕事の習熟度・(b)役割の明確さ・(c)社会的一体性・(d)人と仕事の適合性・(e)人と組織 の適合性・(f)職務満足度・(g)組織コミットメント・(h) 帰属意思について、自己効力感と社会化戦術との関係を媒介する
→ (c)社会的一体性と(g)組織コミットメントでは完全媒介していた。他のすべてのアウトカムについては部分媒介が見られた
仮説⑦:
新人のプロアクティブ行動は、組織社会化戦術とそのアウトカムの関係を調整する。 制度化された社会化戦術は、プロアクティブ行動をとらない新人にとってはアウトカムと正の相関があるが、プロアクティブ行動をとる新人にとってはそうではない
→ 制度化された社会化戦術とアウトカムとの相関は、プロアクティブ行動(フィードバック希求や情報希求)をあまり行わない新人ほど強いことが分かった
2. 私的な解説/感想
この論文の重要なポイントをシンプルにザックリと分かりやすく箇条書きにすると以下の通りです。
自己効力感が高い新人ほど、プロアクティブ行動を取る
組織による制度的社会化施策は、新人本人のプロアクティブ行動を促す
新人のプロアクティブ行動が、社会化アウトカムに対する自己効力感と社会化施策の関係を媒介する
組織による社会化施策と本人の自己効力感・プロアクティブ行動が独立的/相互作用的に機能することによって、新人の社会化アウトカムをもたらす
念のため、「1.3分で分かる論文の概要」を読み飛ばした方のためにプロアクティブ行動と社会化アウトカムがどんなものなのかを補足しておきましょう。
プロアクティブ行動・・・フィードバックや情報を求める行動、上司・同僚との人間関係を形成する行動が該当
社会化アウトカム・・・仕事の正しい理解や習熟、組織との一体感、組織・仕事とのフィット感、仕事への満足などが該当
こんな感じです。
3. 読後の余談
自職場に新たなメンバーを迎える際、自己効力感をいかに維持・向上してもらうかが鍵であると、以前から考えていました。自己効力感を失って委縮してしまい、負のスパイラルに陥るケースを何度か見たことがあるからです。管理職の端くれとしての経験に基づく「持論」だったのですが、それがこの論文で裏付けが取れたので、個人的には大満足でした。
2023年11月3日 初稿作成