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100歳のラブレター
100歳の祖父が
「ラブレターを見せてあげようか」と分厚いファイルを取り出した。
その中には妻へ宛てた手紙がたくさん入っていた。
祖母は晩年、認知症になり老人ホームにお世話になっていたので、祖父が毎月手紙を送っていた。祖母が亡くなって、施設の方が取っておいてくれたものをまとめたらしい。
「元気にしてますか」から始まる手紙は、ユーモアと哀しさと祖母への愛に満ちていた。
元気にしてますか。
昨日は久し振りに直接の面会でタカコの元気そうな姿を見て嬉しかった。ところで先月お医者さんからデイケアを奨められたけど、どうしようかと迷っているところ~。年とると人は皆「余生、余生」と言うけれど、人生に余りの人生なんてないよね。最後まで自分の人生だから、元気出して生きていこうね。タカコ。
「天高し卒寿の流れ唄を呼ぶ」
元気にしてますか。この間お医者さんに「年のわりには元気ですね」と言われてね、ちょっぴり安心したよ。でもね死亡適齢期には変わりないけどね。タカコも若くはないから体に気をつけて暮らしなさいよ。わかったね、タカコ。
「夢に出づ笑む妻若し今朝の秋」
元気にしてますか。この頃やっと涼しくなって体も少しは楽になったね。然し体力がだんだん落ちて「へま」をすることが多くなったよ。それで息子が「年の所為、心配せんでよか」というけど、心肺がないと生きられんけんね!
そんな事こんな事で生きているよ。
タカコも元気を出して生きていこうね。
「逸品の干柿食うて皺摘む」
今日は何の日でしょう!
答えはタカコの誕生日でした。
この日は忘れません。
タカコと会えたことが1番幸せです。
今日はどっかの誰かさんの誕生日。
息子夫婦が刺身を買ってきて祝ってくれて嬉しかった。タカコが側に居てくれたら、もっと、もっと嬉しかった。
私が仕事に熱心だった頃、職場に電話をかけてきたタカコに、「そんな事でいちいち電話せんでよか」と冷たく切ったことがあったね。大変心を痛めたことを後から教えてくれたね。本当にごめんね。もっと話を聞いてあげたら良かったね。
祖父は、今でも「何もしてあげられなかった」と泣く。
認知症の祖母が手紙の返事を出すことは一度もできなかったけれど、祖父ができる最大のことをしていたと思う。それは、天にいる祖母には伝わっている気がする。
死別の悲しみを、私には癒してあげることができないことを歯痒く思う。
「何もしてあげられない」という無力感。
ならせめて、私も手紙を書こうか。
ありったけの愛をこめて。
私が泣きながら書いているような心の深い所の記事は【TOMOの鍵付き日記🔒】みたいな有料マガジンで分けようかなぁ…。
パーソナルなことを多めに含んでいたり、感情が伝わりやすい方の気持ちを揺らしてしまったら申し訳ないし…。
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