LayerXで実現する”AI-Driven” なSales Enablement
みなさん、こんにちは
プロダクトマネージャーの米田です。
私は現在、「すべての経済活動を、デジタル化する。」株式会社LayerXで、いくつかのプロダクトを担当させていただいております。
今回は、私がLayerXで実現を夢見る「AIドリブンなSales Enablement」について考えていること、そしてLayerXで既に実現されていることについて書きたいと思います。
バクラクについて
まず先に、LayerXが提供する「バクラク」というサービスについて簡単にご紹介させてください。
バクラクは、請求書処理や発行、経費精算、稟議申請、法人カードなどの支出管理をなめらかに一本化する法人向けのSaaSです。
これまで累計で1万社以上の企業様にご利用いただいています。
私含め、LayerXの人たちは「圧倒的に使いやすいプロダクトを届け、ワクワクする働き方を」という想いでこのバクラクを開発しています。
お陰様で、この「圧倒的に使いやすい」点で非常に好評をいただいており、私も同席した商談の席で「こんなにラクになっていいですか?」という驚きの声を頂戴する現場を何度も目の当たりにしております。
人口減少社会である日本にとって、今後労働生産性を上げることは死活問題であり、私たちは、圧倒的に使いやすいプロダクトを開発することでより良い日本の未来に貢献したいと考えています。
ただ、圧倒的に使いやすいプロダクトを開発するだけでは、日本社会の労働生産性を上げることはできません。
どんなに良いプロダクトも、使ってもらえなければ存在しないようなものです。
私たちの想いを遂げるためには、「作る」と同じくらい「届ける」ことが重要、つまり「セールスめちゃくちゃ大事」ということです。
Sales Enablement
多くのお客様にバクラクを届けるため、LayerXのセールス組織はどんどん規模を拡大しています。
しかし、一般的に規模の拡大は生産性の低下を招くため、並行して生産性を向上させる取り組みが必要となります。
セールスの生産性向上の取り組みは「Sales Enablement」と呼ばれます。
Salesforce社のサイトによると、以下のように定義されています。
LayerXでは、毎月多くのNew Joinerがいらっしゃいます。キャッチアップや育成、そして拡大する組織に合わせたプロセスやオペレーションの改善は重要な課題であるため、イネーブルメントチームが存在し、日々、様々な仕組み作りや育成が行われています。
しかし、実はLayerXには、もう一つ、全く違うアプローチでイネーブルメントをしているチームがあります。メンバーはエンジニア数名とPdM(私)という非常に小さな構成です。
このチームで取り組んでいるのが”AI-Driven” Sales Enablement(仮)です。(何か良い名前が見つかるまで(仮)としておきます)
”AI-Driven” Sales Enablement(仮)とは
昨年、LayerX代表の@fukkyさんが、このようなnoteを書いています。
と書かれているのですが、実際このnoteが発信された頃からスモールチームを組成してLayerX流のSales Enablmentを模索し始めました。
LayerXのセールスは、お客様と毎日かなりの数のお電話や商談を行っています。加えて社内コミュニケーションや勉強会などにも非常に積極的なため、どうしても業務過多になりがちでした。
そのためまずは業務を自動化して業務を減らすことから始めようと考えました。
しかしこのアプローチは一旦頓挫します。セールスの皆さんの業務を詳細に観察すると、大まかな業務は同じでも実は各々やりやすい進め方がありました。簡単に自動化できそうな業務は小粒かつ一部の人にしかフィットしないため、非常にコスパが悪く、このままでは永遠に業務は楽にならないだろうなと感じました。
業務の効率化は、まずは型作りやプロセスの改善など、従来のSales Enablementの手法でアプローチすべきです。
未来志向・テクノロジー志向で全く新しい営業組織を作るアプローチでまず取り組むべきこと、それは「データ」である、というのが今の考えです。
ほとんど活用されていないセールスのデータ
セールスに関連するデータって、どこにありますか?多くの人がまず思い浮かぶのがセールスフォースでしょうか。私もです。
実際、セールスフォースには多くのデータがありますが、セールスに関わるデータが全て入っているかというと、実はほんの一部でしかありません。セールスフォースに登録されている内容と商談で話された内容を実際に比較してみると、かなりの情報が削ぎ落とされています。
同じようなものに、お客様との電話やメールのやり取りなどがあります。
お客様とのコミュニケーションから発生するデータだけではなく、社内のSlackやミーティングでの会話、スライドやnotionなどのドキュメントも、私たちのセールスに関わる重要なデータです。
なぜ活用できていないのか。
理由は、バラバラの場所に、バラバラのフォーマットで、全く構造化されずに散在しているからです。
動画、音声、テキストといったデータが、ローカルやクラウドのストレージ、複数のサービスのデータベースにあり、活用する以前に見つけることすら困難です。
”AI-Driven” なSales Enablementのイメージ
この課題を解決し、データをフルに活用できるようにすることが、”AI-Driven” なSales Enablementのアプローチです。
例えば商談。
LayerXではオンラインでの商談はお客様の許諾をとって録画させていただいているのですが、この動画内の音声はWhisperを使って文字起こししています。ただ単に文字起こしするだけではなく、LLMなどを活用して精度を上げたり、重要情報の抽出や要約を行い、それらを発話者や時間データと紐付けています。
電話の音声データも同様です。
これまでストレージに全く整理されていない状態で蓄積されていた商談のデータは、テキストデータに変換し、時間や人などメタデータに紐づけ、構造化されたデータにすることで、Salesforceなどにある情報とも連携し、活用可能なデータとなります。
実際に社内で活用されているアプリケーション
LayerX社内では、こういったことが既に実用化され、日々活用されています。
商談動画の文字起こし
商談後、録画されたデータは文字起こしと要約が行われ、社内のnotionのデータベースに自動連携されます。
要約を見ると素早く商談内容を把握できるだけでなく、連携されたデータはnotionの検索機能で検索が可能となるため、文字起こしされた全ての商談から特定の話題に触れられた商談を抽出したり、テキストにコメントをすることで、商談内容に対するフィードバックなどをすることができます。
動画プレーヤー
商談内容は、notionだけではなく、このような専用の商談プレーヤーで確認することもできます。
商談中の会話が、発話者ごとに分離されてテキスト化されており、特定の部分のみ音声含めて動画を見たい場合は、テキストをクリックするとその場面をすぐに再生することができます。
また、会話内容からこの商談で会話されたトピックを抜き出して一覧化しているため、どのような内容の商談であったかはそこを見るだけで一瞬で把握することができます。
画面に投影していた資料なども一覧化可能で、特定の資料についての会話部分だけ動画や文字起こしを確認することもできます。
この商談データは、商談後にセールス担当者が改めて内容を確認したい時であったり、メンターからメンティーへのフィードバックなど、様々なシーンで活用されています。
コールプレーヤー
お客様などとの電話の内容も、自動的に文字起こしと要約が行われ、専用のプレーヤーで確認することができます。
動画と同じく、電話中の会話が、話者ごとに分離されてテキスト化され、任意の箇所の音声を素早く再生することもできます。
会話内容は、セールスが必要な項目ごとに要約が自動的に作成されます。
AIアシスタント(社内情報)
バクラクにはたくさんのプロダクトがあり、日々多くのアップデートがあるため、New Joinerに限らず誰にとってもキャッチアップが大変です。そのため、LayerXでは分からないことは「そぼぎ(素朴な疑問)」としてSlackでカジュアルに質問することができ、分かる人がすぐに拾って答えてくれるカルチャーがあります。このカルチャーに私も日々助けられているのですが、同じような質問がいろんなチャンネルで何度か出てくることもあります。誰かの親切がストックされずに流れてしまうのは勿体無い、とはいえ毎回notionにFAQまとめましょうというのもあまり現実的ではありません。
そのような課題を解決するため、LayerXには「そぼぎ」に答えてくれるAIアシスタントがいます。
AIアシスタントに質問をすると、Slackの複数のチャンネルから過去に行われた質問を参照して回答をしてくれます。
Slackだけではなく、過去のお客様からのお問い合わせを参照したり、利用規約やお客様向けのガイドを参照して回答してくれるAIアシスタントもいます。
AIアシスタントであれば、いつでも気兼ねなく質問することができ、すぐに回答してもらうことができます。
AIアシスタントでは答えられない新しい質問があれば、Slackで質問して誰かが回答してくれると、また次回から同じような質問にはAIアシスタントが答えてくれるようになります。
AIアシスタント(Web情報)
インサイドセールスの電話、フィールドセールスの商談合わせると、毎日ものすごい数のお客様と会話をさせていただいていますが、会話の前には必ずお客様の情報を確認します。
事業内容や所在地や従業員数などの基本的な情報はもちろん、ニュースや資金調達状況などお客様の最新の状況をキャッチアップしておく必要があります。
これらの情報はコーポレートサイトだけではキャッチアップすることができないため、様々なサイトを検索して情報を取得していました。
1回あたりの調査時間はそこまで多くないとしても、毎日の調査時間をトータルすると中々大きなコストとなります。
そこで、Web上の情報を調査してくれるAIアシスタントを開発し、「情報を探す」コストを限りなく0にしようとしています。
企業名を入れると、AIアシスタントが複数のサイトを探してセールスに必要な情報を集め、適切な要約をレポートしてくれます。セールスは、お客様との会話前にこのレポートにさっと目を通すだけで、お客様について十分に把握することができます。
LayerXで実現する”AI-Driven” Sales Enablement
ご紹介したようなアプリケーションは、既に多くのセールスの方々に利用され、生産性の向上に大きく貢献しています。
ただ、私たちがLayerXで実現したいことは、こういった便利なアプリケーションをたくさん開発することに留まらず、データを統合的・総合的に活用することで実現される、営業革命です。
ここまで述べさせていただいたように、バラバラの場所に、バラバラのフォーマットで、全く構造化されずに散在しているデータを統合的に活用できるようにすることで、例えば以下のようなことが可能になります。
「ねぇ、AIアシスタントさん」
「商談中のお客様でこういう課題を持っている会社様ってどれくらいるの?」
「業態はどういうところが多いの?」「従業員規模は?」
「具体的にどういう言葉でその課題についてお話しされていた?」
こういったことが一瞬で確認できます。
「同じような課題を持ったお客様に刺さった商談ってどの商談?」
「具体的に何を評価していただけたの?」
「その時に使った資料は?」
こういったことを簡単に横展開できます。
その他にも、過去の商談データを元に、経験が浅い方の商談をAIが分析してフィードバックしたり、セールス全体でNew MRR(新規売上)の期待値が最も高くなる商談アサインを自動化したり、お客様に合わせた商談資料を自動生成してくれたり、Salesforceなどへの営業記録を自動化したり・・・
めちゃくちゃ夢が広がりませんか?
しかし、これらはただの夢ではなく、データとAIの活用により既に実現可能なものであり、実際一部は既にLayerX内で実現されています。
未来のセールスについて語りましょう
LayerXがデータとAIにより実現しようとしている未来のセールス、ワクワクしませんか?
興味を持っていただき、もっと詳しく話聞きたい、と思っていただいた方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度カジュアルにお話ししましょう。
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