#7 複数のスポーツを体験することで得られる子どもの運動能力向上効果
子どもがスポーツを行う場合、
早い段階で種目を限定するよりも多くのスポーツに触れる(マルチスポーツ)方が良い
ということが言われています。
今回の記事は
マルチスポーツが運動面では具体的にどのような効果があるのか
を検証した論文の紹介です。
論文内容
紹介する論文
対象
実験参加者は、7歳の男女147名(男子:88名、女子:59名)でした。
実験参加者は、2グループに分かれています。
1つはサッカーを専門的に行っているグループ(n=70、女子24)
もう一つは様々なスポーツを行っている(Multisports:マルチスポーツ)グループ(n=77、女子37)です。
どちらのグループも以下の要件を満たしています。
1年以上継続している
トレーニングは1回60分以上
週2回以上トレーニングを行っている
他のスポーツ活動は行っていない
1年間で80%以上トレーニングに参加している
サッカーグループは週3~4回、60~90分のトレーニングを行いました。
マルチスポーツグループは週2回、60分屋内でのトレーニングを行いました。
内1回は水泳、1回は安定性(体幹の強さ)・自発運動(ランニング・ホッピング・スキップ)・操作(ボールスキル)の3つのカテゴリーのいずれかからトレーニングが選択されました。
測定方法
運動協調性テスト:Kiphard–Schilling body coordination test
後ろ歩き(Walking Backward)
幅の異なる3本のバランスビーム(6cm、4.5cm、3cm)上を、後ろ向きに歩くテストです。それぞれのビームで8歩まで評価され、合計72歩が最大得点です。
横移動(Moving Sideways)
2枚の板(25×25cm、厚さ2cm)を20秒以内に、足を交互に乗せて横に移動するテストです。2回の試行で得られた合計の移動数がスコアとなります。
片足跳び(Hopping for Height)
片足で、5cmずつ高さが増していく柔らかい障害物を跳び越えるテストです。1回目で成功すると3点、2回目で2点、3回目で1点が与えられます。左右の足でそれぞれ最大39点ずつ、合計78点が最大得点です。
横跳び(Jumping Sideways)
15秒間で、木製の板(60×4×2cm)を横に跳び越える回数をカウントするテストです。2回の試行で合計のジャンプ数がスコアとなります。
体力テスト
握力
4×10mシャトルラン
立ち幅跳び
20mシャトルラン
の4種目
上記2種類のテストにより、運動能力が測定されました。
結果
マルチスポーツグループはサッカーグループと比較して、
運動協調性テストの全ての種目で良い結果を出しました。
一方で、体力テストでは両グループに有意な差は認められませんでした。
考察
これまでの先行研究と同様に、
マルチスポーツグループは運動協調性テストで良い結果を残しました。
この理由として、サッカーを専門的に行っていると、
出現する運動パターンが限定されることが示されています。
このことが原因で、サッカー群は運動協調性テストで、マルチスポーツグループよりも劣った可能性があります。
体力テストでは有意な差が見られませんでした。
そのため体力と共に運動協調性も養うことのできるマルチスポーツプログラムが7歳前後の子どもに勧められると結論づけられています。
研究の限界
トレーニング以外の時間の運動(遊び等)は統制されていないので、その時間の影響は考慮できていません。
また、実験参加人数も多くないので、慎重に解釈する必要はあります。
まとめ
この論文では、スポーツを限定しすぎてしまうと、限定された運動パターンしか出現しないため、そのことが運動協調性(コーディネーション能力)を伸ばしにくくしてしまう可能性に言及していました。
そのため、様々なスポーツを行うメリットは、
多様な運動パターンを経験できること
だと考えられます。
様々な運動パターンを経験しておくと
専門種目の技能獲得を容易にする可能性があると思っているので
小学一年生くらいの時には専門種目があったとしても、他のスポーツに触れさせた方が良いのではと思います。
ただこの論文でも触れられているのですが、マルチスポーツプログラムの中に運動協調性テストの種目に近い動きを行うことがあったようです。
そのため、単純に動きの慣れの問題によってテストの結果が良くなったとも考えられるため、そのことにも留意しておきたいところです。
おすすめの本
記事の主旨からはズレてしまうのですが、子どもの育成繋がりで、脳科学的に子どもの成長を考察した本を紹介します。
エッセイ調で読みやすく、子どもの成長に関する理解が深まるのでおすすめの本です。
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