21.合同展に参加して、新規の取引先を獲得するために
自分のECサイトで売って成長しているクリエイターも多いのですが、ここでは小売店へ卸売して販路を拡大していくための手段として展示会の活用について考えます。自社の商品力に加えて小売店の販売力や発信力を活用することでビジネスの成長速度が早まります。
新規の小売店等への取引を始めるために、合同展出展は効果的です。2020年春は開催延期が多い状況ですが、次回開催の告知がもう始まっているものもあります。半年先の出展の準備をしましょう。
テーマ26:新規ショップを展示会で開拓
◆ショップ選びの考え方
「パリコレで活躍するような人気デザイナーの商品を扱う有名セレクトショップに自分の商品を置いてもらう」という目標を持ってモチベーションを高めるのは賛成です。ただ、そこに至る過程をどのように考えるかが問題。
トップクラスのショップで扱ってもらうために、格下の店には商品を入れないというデザイナーがいます。本当にそれでいいのでしょうか?
トップクラスのショップで競合するのは、世界トップクラスのブランド商品です。相手には何年もかけて顧客を作り、商品を磨き、激烈な生き残り競争に勝ち残ってきた力があります。創業期のブランドが世界トップクラスのブランドと互角に戦えるはずがありません。
ショップにとっても、人気ブランドの商品は安心して取り扱うことができますし、店の格がアップする、集客力がある、利幅が大きい、売れ残りリスクが少ないといいこと尽くめです。
トップクラスのショップとの取り引きを始めるというのは、今店頭にあるブランド商品に割かれている仕入れ予算を自社ブランドで奪うこと。つまり、既存ブランドと比較され、選ばれなければならないのです。
多くの場合は、創業期のブランドは仕入れ優先順位の最下位集団入り。最下位になっては、チャンスが生まれません。半端な個性では埋没してしまいます。
どんなに頑張っても勝てない競合相手に正面からぶつかっていって、勝つまで頑張るというのは、情熱の持ち方としてはいいのかもしれませんが、ビジネスとしてはオススメできません。
あえて人気ブランドが強い土俵で戦うのではなく、「創業期のブランドのなかではずば抜けて商品力がある」とか「完成度が高い」とか「個性がある」という評価を得られるように、競争相手を選んで戦うのです。
自分のブランドを高く評価してくれるなら、小さい店でも地方でもかまいません。それらのショップで実績を出すことが自信につながり、顧客を作り、ブランドを確立します。そのうえで、次のステップに向かえばいいのです。
お客様の数がブランドの価値なのですから、売れないうちにブランドイメージを心配しても意味がありません。
もちろん、相手が小さい店だろうと地方のショップだろうと、攻め方を考えるのは必須です。店舗をリサーチして欠けているアイテムを見つけ出せれば、取り引きを始めやすいのではないでしょうか。これらの情報はホームページからでも推理できます。
ビジネスは、負ければ負けるほど資金がなくなり、思い切ったことができなくなります。ビジネスにおける冒険は、余裕があるからできること。
余裕がないときに無謀な賭けをすることは避け、どんなに小さくても勝負に勝って実績を作り、徐々に成長することが大切です。
◆展示会は頼るのではなく、活用する
合同展や展示会に出展するという同じ行動を取っていても、頼るのと活用するのとでは心構えが違います。頼るというのは、出展すればなんとかなるだろうという受身の姿勢。「どうすれば成果があがるだろう」と考えて十分対策を練り、攻めの姿勢で臨むのが活用するということです。
例えば、集客ひとつにもその姿勢は表れます。展示会主催者に集客を頼っている場合は、来場者が少ないと文句を言いたくなり、うまくいけば自分のおかげ。鳥のヒナみたいに口を開けて、誰かが餌を運んでくれるのを待っています。このような人は、展示会中は販促・営業に力を入れ、展示会後はお客様へのフォローが必要だとわからないでしょう。展示会出展はゴールではなく、スタートです。出展することで満足してはいけません。
もし活用する意識を持っていれば、取り引きをしたいショップに「ほかのブランドも出展する合同展なので、ぜひ見に来てください」とバイヤーのメリットを伝えて、少しでも来場率を高めようとするでしょう。うまく行かなくても、それは自分の準備不足だと考えますから、次回に向けて作戦を練り直します。そして、うまくいけば展示会のおかげだからと主催者や来場者にお礼状を書いて感謝を表すのです。
合同展を活用する人は、自社個展を開くのと同じくらい力を入れて準備をし、臨むのではないでしょうか。
事前営業に力を入れてお客様をその期間に呼んで賑やかさを出したり、取材のお願いをしたり、名前を印象づけるツールを用意したり……。
ある程度の規模の企業では、営業担当者がこれらの準備を行います。バイヤーは一般企業の営業担当者の対応を基準に、それより上か下かと考えるでしょう。ですから、営業の手を抜けば、他企業とさらに差が広がってしまいます。
販促・営業ができて、お礼状まで出せれば、「若いのにしっかりしている」と好意的に受け止めてもらえるものです。
一方、頼っているブランドに対しては「普通のこともできないくらい頼りない」と思われていまうでしょう。
活用しようという前向きな人は好意的に受け止められ、何とかしてもらおうという依存的な人は頼りないと思われるということです。
実際、自分のブランドやデザイナー自身を好意的に印象付けることに対して執着がないブランドが多いので、ここがほかとの差をつけるポイントになります。
よく言われるのは、合同展には二度、三度出展しないと効果がないということ。もちろん、頼るタイプは問題外。二度、三度出展しても効果は出ないでしょう。
積極的に活用しようとしていて、ブランドコンセプトに個性がある、商品も作りこんでいる、展示も良い、接客も良いという高いレベルの出展者でもなかなか契約が取れないような場合は、信用力が問題になっている可能性があります。この場合は特に、続けて出ることが企業力のアピールにつながり、効果が生まれるでしょう。
ただし、くれぐれも「最初は成果が出なくて当たり前」と自分に言い聞かせて、思考停止することのないようにしてください。
◆出展のタイミング
展示会への出展はタイミングが重要です。年1~2回開催の見本市、合同展などに出展する場合、時期を逸するとビジネス展開が1年遅くなることもあります。これが創業時期には致命的な損失になる場合が。
通常、合同展などでは今後のアプローチのための見込み客集めを行います。その見込み客に営業をして商品を納入し、代金を回収するには半年程度の期間が必要。つまり、半年先の顧客を作るのです。
得意なのはカットソーなどの夏物なのか、コートなど冬物重衣料なのか。アイテムには展開すべきタイミングがありますから、それを逃すと次年度まで売り上げを作ることが難しくなります。
「体制が整ったら展示会に出展します」という創業者。それを待って出展して顧客を探し始めたら、ビジネスのスタートは半年間ずれ込み、売り上げがたたない時期が延びて、その間にかなりの販売機会ロスが出てしまうでしょう。体制が整うことを見越して早い時期に出展申し込みするぐらいでちょうどいいのではないでしょうか。
そのためにも数年間のシーズンごとの事業プランは用意しておいたほうがいいでしょう。
◆合同展か個展かを選ぶ
展示会とひとくちにいっても、合同展もあれば個展もあります。どちらがいいのかを判断するひとつの目安は、出展の目的です。新規客獲得に重点を置くなら来場者数が多い合同展。見込み客のリストが十分あったり、既存客のフォローに重点を置くならじっくり商談できる個展です。
このほか、親しいブランドで集まって開催するグループ展は、開催しやすく、費用対効果も良い場合があります。
以下は主な合同展示会の紹介です。
各合同展は出展する前に、来場者やほかの出展ブランドが自分ブランドのテイストに合うかどうか、必ず確認してください。なお、詳細については各ホームページをご覧ください。
◆小さなブランド向けの合同展
展 示 会 1● rooms http://www.roomsroom.com/
実力派の若手ブランドが揃う。ほかの展示会に比べて全体的にプレゼンテーションがうまく、センスが良いブースが目立つ。コンセプトにこだわりを持つブランドが多い。
時期:年2回(2月と9月頃)
場所:国立代々木競技場第一体育館(六本木ヒルズの場合も)
コスト:★☆☆☆☆(高い) 集客 :★★★☆☆(やや多い) 展示 :★★★★☆(レベル高い) 審査 :★★☆☆☆(難しい) 成果 :★★★☆☆(出展者のレベル次第)
展示会2● rooms yellowブース
rooms内で開催される新規ブランド、新クリエイターのためのコーナー。審査倍率が高いが、注目を集めやすく、出展できると大きく飛躍できるチャンスにつながる。
時期:roomsと同様場所:roomsと同様
コスト:★★★★☆(安い) 集客:★★★☆☆(やや多い) 展示 :★★★☆☆☆(普通) 審査:★☆☆☆☆(とても厳しい)
成果 :★★★★★(高反応)
展 示 会3● PLUG IN http://www.senken-ex.com/plugin/
繊研新聞社主催の中規模な合同展。出展者は、実力のある企業と新進ブランドのミックス。落ち着いた雰囲気で、じっくり商品を見てもらいやすい展示会。時期:年1回
場所:東京美術倶楽部
コスト:★★★★☆(安い) 集客:★★★☆☆(普通)
展示 :★★☆☆☆(普通) 審査:★★★★☆(出展しやすい) 成果 :★★★☆☆(出展者次第)
展示会4● マニコレ in GIFT SHOW http://manicolle.com/
国内最大規模の雑貨見本市である東京インターナショナル・ギフト・ショー内で開催するmanicolle tokyo。来場客も多いが、全体で2000社もの多くの企業が出展するため、埋没する可能性も。ファッション雑貨ではチャンスが生まれやすい。
時期:年2回(2月と9月)
場所:東京ビッグサイトで開催の東京インターナショナル・ギフト・ショー内コスト:★★★★☆(安い) 集客:★★★★☆(多い)
展示 :★★★☆☆(普通) 審査:★★★☆☆(出展しやすい) 成果 :★★★★☆(注目度高)
展示会5● デザイン・フェスタ http://www.designfesta.com/
大規模なクリエイターのフリーマーケット。絵画からアパレル、雑貨、パフォーマンスまで幅広いクリエイターが集まる。一般来場者が多く、バイヤーは少ない。
時期:年2回(5月と11月) 場所:東京ビッグサイト
コスト:★★★★★(安い) 集客:★★★★☆(多い)
展示 :★☆☆☆☆(簡単) 審査:★★★★★(先着順)
※2020年現在で出展しやすいのは、上記以外に
※このNOTEは2010年発行「好きを仕事にする自分ブランドのつくりかた」の一部を再編集して公開しています。
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