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システムの活用を促すモメンタムを作る時のポイントまとめ
こんにちは。
GMOペパボ株式会社のハンドメイドマーケットサービス「minne」でデザイナーをしております、sziaoreoです。
サービスデザインに携わっていると、「せっかく作った機能がなかなか使われない…」というシーンやお悩みを見かけます。
そういった時は、作ったシステム(仕組み・機能)を動かすモメンタム(システムを作動・稼働させ続けるエネルギー)が不足しているケースが多いようです。
新機能やキャンペーンや新規プロダクトやアップデートなど、とにかく何らかの施策については常に「システムとモメンタム」の両面が考慮され成立している状態が理想ですよね。
こちらの記事では、リリースしたコンテンツをより良くユーザーに使ってもらうためのモメンタム作りのポイントついてコミュニケーションデザインの観点からご紹介します。
まずシステムを使ってもらうためにモメンタムを作る上で大切なことは...
システムの使い方とインセンティブを知らせること
最高の道具を作っても、その魅力や有用性がきちんと伝わらなければ、ユーザーはそれを使う意味を見出せなくなってしまいます。そもそも使い方がわからなければ使ってもらえません。
どこから使えるのか、どういうときに使えるのか、使うと何が起きるのかを示します。
ユーザーのステータスや立場に応じて伝えたいインセンティブを整理する
インセンティブをより感じてもらうため、そのシステムがないときの課題感の認識を促す
プロダクトにおけるユーザビリティ向上を図るのはもちろん、ガイドラインも用意する
告知の際には「リリースしました」だけでなく、インセンティブについて触れた案内を出す
そしてこのインセンティブを事前にはっきりさせておくことで、どのタッチポイントにどうやってモメンタムを作るべきかの判断がしやすくなります。
また、インセンティブについてのテキストは簡易版・リッチ版でまとめて用意しておくとモメンタムを作る際に各方面への協力も仰ぎやすく、各所での案内での表記揺れも防げます。
インセンティブを整理・言語化するときに大切なことは…
機能的価値を意味的価値に変換すること
最近リリースされた「minneのダウンロード販売」を例に説明します。
「minneのダウンロード販売」の販売者にとっての機能的価値は「デジタルコンテンツを売れる」こと。
しかし、「minneでデジタルコンテンツを販売できるようになりました!」という訴求だけでは「そもそもなぜデジタルコンテンツを売れるのが良いことなのか?」が販売者には伝わりません。
minneのダウンロード販売を「良いこと」として自分ごと化して想像を膨らませるには情報が不足した状態です。
ここで機能的価値を「minneでデジタルコンテンツを売ることがあなたの作家活動や人生にどんな素敵なことを起こすか」という意味的価値に変換してみましょう。例えば…
ダウンロード販売は「ただデジタルの作品が売れる」というだけでなく、あなたが持っている「スキルやノウハウまでコンテンツ化して売れる」ということ
在庫管理や発送の手間がないので作家活動が時間や場所に制限されなくなり、より自由で可能性豊かなものになること
デジタルコンテンツなら1つの作品でもパソコンの壁紙にするもよし、ポストカードにするもよし、購入者に提供できる作品の楽しみ方がアイディア次第で無限大であること
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このように訴求されるだけで、minneのダウンロード販売でもっと何か新しいことができそうな、作家活動が楽しくなりそうな気がして来ませんか?
新しいシステムのインセンティブをターゲットユーザーに対してわかりやすく噛み砕いたり、相手にインスピレーションを与えるような訴求を行う「価値の変換・付加」が、モメンタム作りでは非常に重要なステップです。
また意味価値の言語化にはサービス自体のブランドやビジョンを踏まえることでユーザーにより一貫性のある体験を提供し、ブランドインシデントを防ぐことにもつながります。
価値変換を通したインセンティブをユーザーに伝える上で大切なことは...
システムを使ったり関連情報への関心が高くなるシーン・タイミングを狙うこと
システムを使うシーン・タイミングに近ければ近いほど、モメンタムとして伝えたメリット情報を覚えている状態でアクションをしてくれる可能性が高いです。逆に遠い場合、せっかく伝えた情報をそのシーンにたどり着くまでに忘れてしまい、告知の効果を最大化できなくなる可能性が高いです。
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例えば作品説明文から簡単にSNS投稿文を生成してくれる「minne AIアシスタント(β)」では、機能リリースのお知らせやSNS上でのアナウンスを行う他、作品登録画面で作品の登録が終わったとき(販売者が作品の宣伝を検討しやすいタイミング)に案内が表示されるようになっています。
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離れたタッチポイントにモメンタムを作る場合、システムの存在を知って興味が湧いた一瞬のチャンスを逃さないようにするために、できるだけシステムを使うシーンに近いタッチポイントへの誘導を用意しておきましょう。
✍️ モメンタムには「フロー型」と「ストック型」があります
【フロー型】
都度手動で行われる一時的な訴求(単利的)
【ストック型】
UIやシステムの中に仕組みを作ることで行われる継続的な訴求(複利的)
一発のインパクトを大きくしてコミュニケーションを取れるのはフロー型が多いですが、毎回人力に頼らずより効率的にシステムの活用を促せるのはストック型。ストック型のモメンタムを導入する際にはフロー型よりもそれなりのリソースを割く必要があるので、機能やシステムの開発時点でモメンタム作りを前提としたロードマップを敷き、見積もっておけるといいですね。
さらにプラスで行うと良いこと
❶ システムを使えているか否か、ステータスをわかりやすくする
ユーザーがそのシステムを使えていないとき、そのステータスを示すUIや案内を出しましょう。これだけでシステムの存在自体を知るきっかけにもなります。
きちんと保存・設定されていないなどの理由で、ユーザーが思った通りに機能を使えていない場合にアラートを出せているかなどをチェックしてみるのも効果的です。
例えばminneで作品を販売する時に素材やアレルギー情報などの特徴を設定できる「作品の特徴機能」では、作品登録画面で作品の特徴が登録されていないときに「未選択である」ことを示すプレースホルダーを表示しました。
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人は「ツァイガルニク効果」といって、完全なものや達成できているものよりも中途半端な状態のものが気になってしまう傾向があります。
上記のように何かを入力したり、設定したりすることが前提のシステムであるなら、「ここまだ入力できていないよ!中途半端な状態だよ!」ということを教えてあげるだけでもモメンタムになり得ます。
❷ システム活用の機会を用意したり、モデルケースを提示する
サービスに共感したファンユーザーは、新しくリリースされたシステムを率先して活用してくれたり、その使い方のアイディアに自分で気付いたり、その内容を発信してくれたりもします。
しかしそうではない一般的なユーザーは、先駆者たちや周りのユーザーの様子を伺ったりしてシステムを活用するまでに足踏みをしてしまうケースも少なくありません。
その場合はサービス側からシステムを活用する機会となる企画を用意したり、使いこなすためのアイディアを提示したり、活用事例やモデルケースを提示するなどで背中を押してみましょう。
例えばminneではデジタルコンテンツの制作や販売を促すため、他の作家・ブランドがどのようなデジタルコンテンツを登録しているのかを記事やtwitterのminne LABアカウント(作家・ブランド向けの情報を発信するアカウント)で紹介したりしています
❸ システムを使うインセンティブを一時的に増幅させる
キャンペーンなどを打ってシステムを使うことで得られるインセンティブをリッチにしたり、システムを使ってくれた人を優遇したりという手もインパクトを作る上ではとても有効です。
しかしこの影響はそのキャンペーンを行なっている期間のみに依存しやすいことや、コストがかかりやすいことから長期間の運用を行うには体力が必要な方法でもあります。
モメンタムを作るために用意しておきたいもの
モメンタムを作るためには事前の準備が必要です。
「システムがリリースできましたので、これからモメンタムを考えましょう」ではなく、「システムを開発・企画するのと同時進行でモメンタムを設計しましょう」というマインドで進めることによって、選択できる手段の幅が広がります。
計測したい数値の洗い出し
システムやモメンタムの成果を図るだけでなく、それらがどんなイベントや行動と連動しているなどの傾向を掴むことができ、次のアクションの種になります。その機能の全容や制限に関する情報
現在どこまでのことができるのかについて正しい情報を把握しておくことでスムーズなモメンタムづくりにつながります。その機能がユーザーに使われる&接触するシーンやそれに近いタッチポイントの洗い出し
どのタッチポイントにどのようなモメンタムを作るか考えるときに役立ちます 整理したタッチポイントや情報を図に起こしてマップにすると、よりモメンタム作りの全容を考えやすくなるのでおすすめです。
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リソースの見積もりと確保
機能開発の一環となると、リソースがエンジニアとプロダクトデザイナーに偏りがちですが、モメンタム作りにはコミュニケーションデザインのアプローチが必要です。
また販促企画の一環となると、リソースがディレクターやコミュニケーションデザイナーに偏りがちですが、先述したストック型のモメンタムを検討したいのであればエンジニアやプロダクトデザイナーの手が必要になることもあります。
事前にどんなモメンタムが必要になりそうかの目処をつけてリソースコストの見積もりをしておきましょう。
おまとめ
まずモメンタムを作る上で大切なことは...
システムの使い方とインセンティブを知らせることインセンティブを整理・言語化するときに大切なことは…
機能的価値を意味的価値に変換すること価値変換を通したインセンティブをユーザーに伝える上で大切なことは...
システムを使ったり関連情報への関心が高くなるタイミング、タッチポイントを狙うこと
❶ システムを使えているか否か、ステータスをわかりやすくする
❷ システム活用の機会を意識的に用意したり、モデルケースを提示する
❸ システムを使うインセンティブを一時的に増幅させるまたモメンタムの手段を広げるためには…
システムを開発・企画するのと同時進行でモメンタム設計を始めること
以上、「システム活用を促すモメンタムを作る時のポイントまとめ」をご紹介しました。 チームでせっかく頑張って作るのだから、新機能の素晴らしさや実施する企画の魅力はぜひユーザーに知ってほしいし、活用してもらいたいですよね。
この記事がサービスのデザインや開発に取り組む人たちのお役に立てたら幸いです。
きてきてペパボ!
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