「其山有丹」(『魏志倭人伝』)
『魏志倭人伝』に、
「出真珠、青玉。其山有丹」
(真珠や青玉が産出される。同国の山には丹がある。)
とあります。
問題①主語は倭国か、邪馬台国か?
問題②「丹」は「弁柄(赤い顔料)」か、「辰砂(硫化水銀)」か?
「邪馬台国=阿波」説では、主語を「邪馬台国」、「丹=辰砂」だとし、「日本唯一の辰砂の古代鉱山遺跡がある阿波こそ邪馬台国である」と主張しています。ただ、真珠や青玉が採れるかどうかの検討がなされていないように思われます。
主語が「邪馬台国」であれば、内陸の奈良盆地(纏向)では真珠が採れないので、邪馬台国ではないことになります。
現代人の感覚では、「人工真珠の産地は伊勢、青玉=翡翠の産地は糸魚川の河口、つまりどちらも海岸で、山では、中央構造帯で丹が採れる」ですから、「邪馬台国」という狭い範囲というより、日本全体「倭国」を指すように思えます。
青丹よし寧楽(なら)の都は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり
この「青丹よし」は「奈良」に掛かる枕詞です。枕詞は「語調を整える言葉」として訳されてきませんでしたが、今では積極的に訳されています。「青丹よし奈良の都は」は、「青(緑色)や丹(朱色)に塗られた建物が立ち並ぶ華やかな奈良の都は」と訳すのが通説ですが、異説では、「青=鉄、丹=辰砂」として、「貴重な鉄も、辰砂も、全国から集められて豊富にある奈良の都は」と訳します。(辰砂は、伊勢国丹生(現・三重県多気町)、大和水銀鉱山(奈良県宇陀市菟田野町)、吉野川上流などで採れます。)
邪馬台国=阿波説のみそは、先に書いたように「阿波には辰砂が出る「若林山遺跡」(徳島県阿南市水井町(すいいちょう))や「加茂宮ノ前遺跡」(徳島県阿南市加茂町)があること」ですが、「鉱山遺跡」に指定されていなくても、辰砂が採れる場所は、
・「丹生」という地名の場所
・「丹生神社」のある場所
・「丹羽国」は「丹場国」
で、特に中央構造帯では採れます。
そもそも、丹=辰砂ではなく、丹=弁柄の可能性もあると思われますが、「辰砂(朱)は邪馬台国の重要な輸出品だった」とする説もあります。