紫陽凛

「しようりん」と読みます。 小説、エッセイと短歌。たまに文学徒。 一応本が出ました

紫陽凛

「しようりん」と読みます。 小説、エッセイと短歌。たまに文学徒。 一応本が出ました

最近の記事

怪奇幻想迷走珍道中

 望郷の念に囚われながら椎名林檎「正しい街」の歌詞をなぞる。  義姉が買ってきた「福島土産」の「いかにんじん」が、祖父母の作ってくれたあのいかとにんじんの和物とそっくり同じだということに気づいてから、長期の休みをとって実家に帰省したくなっている。  無論あの忌々しい家にではなく、あのわたしにとって極めて正しかった街に、である。  先生がたはお元気でいらっしゃるだろうか。わたしのことなどとうにお忘れだろう。  「手作りのものについて考えを述べなさい」という、模擬テストの20

    • この記事に、題名をひとつつけるとしたら。

       逃げてるだけなのかな、とあたしは思う。パソコンの前に来るとどれだけ考えて詰めに詰めた設定も、寄り添うように過去まで考えたキャラたちも一斉に静まりかえってそっぽを向いちゃう。いや、全員、「せーの」の合図でどっか消えてしまう。やめろ消えるな。せめてなんかあるでしょ。1ミリくらい何か残してよ。  と思うんだけど、逃げてるだけ、逃げてるだけって言葉が頭から抜けない。設定がこまごまと書かれたルーズリーフ見下ろしても、それ本当におもろいと思ったんですかwって冷笑する人がいる。私だ。だ

      • この記事に相応しいタイトルをつけよ。

         紫陽凛はホラーが苦手である。大々的に喧伝したことはないけれど、怪異・物の怪・人間の、主に「怖さ」を主題とした小説に「怖さ」を感じない。だからなんだと思ってしまう。  彼女自身これは(一般の読者として)致命的な欠陥なのではないだろうかと思っているのだが、治療したところでホラーが書けるわけでもなし、ホラーが読めなくとも生きていけるし、この空前絶後のホラーブームに乗れないのも致し方ない。だが周りが声を揃えて「良い」と言うものの良さがわからないことは多少の寂しさを彼女の中に残すわ

        • この記事にふさわしいタイトルを入力してください

           私の本棚はカラーボックスを三つつなげただけの安物だ。ざっくばらんに本を詰められていて、ふとした拍子に中身を全部吐き出してしまいそう。棚の寸法が足りなくて横に倒して積んでいる本もあるし、並んだ背表紙と棚の間に詰め込まれた本もある。やたらめったらに引き出して中身がスカスカになった二段目では、状態の悪い文庫本が斜めに倒れて重なっていて、昔好んで読んでいた三浦しをんの小説のタイトルを久方ぶりに晒している。  本をやたらめったらに引き出して私が何をしようとしていたかというと、単純に

          でっかいぬ

          夕焼けが赤くってさ 吐く息は白く濁ってた 君と僕と街をゆく  決まった時刻 道路 違いなんてわかんない僕は いっつもたいくつさ 君は違いを嗅いでいて どこに何があるか いっつもお見通し 雲が分厚くってさ 夜空は暗くて見えなかった 君と僕と街をゆく 違った季節 色彩 ひかり 違いとかわかるのかな 違いなんてわかんない君の 立ちんぼと待ちぼうけ 枯れた紫陽花の花 よそのおうちの夜ご飯の匂いがするね こわい車の、テールランプが眩しいね 君と僕は違いすぎていて 共有できないことば

          でっかいぬ

          逆噴射2024ライナーノーツ

          そもそも 紫陽凛は逆噴射のぎゃの字も知らないまま十月初日を迎えました。なので、当然逆噴射小説大賞には初参加となります。  一日に1000文字くらいは書いておきたいよなぁというダラッダラの惰性でカクヨムの自主企画や自分の連載をごちゃごちゃと書いていたさなか、フォロワーから「今年も逆噴射が」の語を聞き興味を持った次第です。なのでプラクティスタグの存在も知らぬまま、暴投につぐ暴投を重ねて二作品出しました。許してください。次はちゃんとプラクティスをします。 プロ詐欺師のサツジン全く

          逆噴射2024ライナーノーツ

          パイロキネシス

           軌道エレベータ《ケイオス》の五二階を吹っ飛ばした爆弾魔はまだ捕まっていない。星間ニュースは口々に爆弾だと騒ぎ立てている。俺なら――急に人間が発火ないし爆発することが当然の世の中であれば真っ先にそちらを疑うのだが、ニュースの内部の奴らや民衆なんかは「ありえない」という前提にとらわれて動けないでいる。哀れだ。  人間が宇宙にその居場所を求めたのが五百年前で、能力者が現れ始めたのが三百年前。能力者周りの制度が整ったのが五十年前だ。まだ人種として新参の我々能力者はタグで管理され、家

          パイロキネシス

          プロ詐欺師のサツジン

           戯曲にサロメって妖婦がいたように俺の目の前には沙羅という激烈ヤバい女がいて、俺の舌を引き抜いて網で炙って食いたいという。サロメだってヨハネの首は食わなかった。それに俺にとって話せなくなることは死ぬより辛いことなのでそれなら殺してくれ頼むと沙羅に話すのだが、沙羅は「環くんに会えないのはだめ。でも環くんが他の人と話すのもダメ。それがあたしの愛なわけ」と真っ当そうながら全て狂った発言をする。あんまり酷いので、俺は隙を見て沙羅の心臓をナイフで刺して殺す。  殺した。  さてどうする

          プロ詐欺師のサツジン

          ある日の日記

           pixivと日本SF作家クラブ共催の「日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」に一つ作品を応募したところで一区切りついたのか、また何を書いたらいいやらさっぱり分からなくなってしまった。  審査されるN部門はもう出してしまったから、今年から併設されたフリー部門にでも出してみればいいだろうか。と過去のお題を見たけれどいまいちピンとこず、仕方ないので部屋の片づけに着手する。  結論から言うと使いかけのネタ帳ノートが十冊以上出てきた。作品になったものから「成ら」なかったもの、

          ある日の日記

          80年代アイドルポップを齧る

           旅が嫌で仕方がなかったある日、窮屈な高速バスの中でアップルミュージックを弄っていたらふと思い出した。あるYouTubeの動画についていたコメント。  まめぐはカバーがすごいよ。聞いてみて。  まめぐというのは声優「中島愛」さんの愛称です。YouTubeでは「るろうに剣心」テーマソングをカバーしています。  思い出したからには探してみるほかない! 「中島愛」のページを見つけると真っ先に目に入ってくるのが「マクロスF」のランカ・リー。  そう、中島愛こそ超時空シンデレラ

          80年代アイドルポップを齧る

          ~4/30【魂で歌え!イメソン布教フェスタ】感想会会場

          紫陽凛(以後「紫」):みなさん、こんにちは!  カクヨムにて開催されました【魂で歌え!イメソン布教フェスタ】は無事4月30日をもって閉会いたしました! こちらはその主催三名による感想大会会場でございます! ではお二人とも、自己紹介をよろしくどうぞ。 凛ちゃん(以後「凛」):凛ちゃんです。ただの凛ちゃんなので気軽に凛ちゃんと呼んでください! あじさいちゃん(以後「あ」):初めまして、こんにちは。ムーンライトノベルスで大人向けTL作品を書いています、あじさいちゃんと申します。

          ~4/30【魂で歌え!イメソン布教フェスタ】感想会会場

          くらくくろく

          触れたくて 震えてる声が  って一節がずうっと頭の中をリフレインするので、ずっと真夜中でいいのに。「暗く黒く」を聞かなければならない気がしている。でもワイヤレスイヤホンが電池切れなので聞けない。  pixivにて「日本SFクラブの小さな小説コンテスト」通称さなコンが幕を開けて、絶筆中、否ちょっと筆休め中の私はどうしようかなと思っている。相も変わらず何も考えることができないし、さなコンの開示情報を読めなくてフォロワーさんに箇条書きにまとめてもらうなどした。本当は参加するつも

          くらくくろく

          やめちゃうか

           すごい調子が悪くて会社を休んでしまった。どれくらい悪いかというと、10段階のうち9くらい悪い。普段は5のあたりを漂っているのにすこぶる悪い。  休ませてくださいと言ったきり職場への電話を切ってそのまま出かけた。  罪悪感の中で本屋へ行き、ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」とカズオイシグロ「わたしを離さないで」「夜想曲集」の3冊を買い、買った本の重たさのままに腕をだらんと垂らした。  何やってんだろうな。  カバンの中に制服を入れてこなかった、代わりにみやしろちうこ

          やめちゃうか

          今、なんの音楽を聴いても泣き出しそうだから、無音で旅をしてる。

          今、なんの音楽を聴いても泣き出しそうだから、無音で旅をしてる。

          助手席ジュークボックス

           昨日も今日も助手席に座っていた。スマホはBluetoothでカーナビに繋いでApple musicの音楽を垂れ流せるようにしてある。数少ない旅行の機会を楽しむためである。  この週末は三兄弟(私弟妹)三人で旅行に出かけた。姉妹は嫁いで長男は地元に帰って……別々の場所から訳あって集結し、祖父母を伴い、妹の子供を連れての六人旅であった。  私はゲストである赤子を退屈させないよう、そして慣れない運転で2時間運転する弟を眠らせないようにする使命を背負っていた。祖父母に悪いが、人力

          助手席ジュークボックス

          帰省の途中のとりとめ

           ひどく頭が痛いので、休憩のサービスエリアでホットココアを買って飲む。5分の休憩は限られているからそのまま高速バス内に戻って出発を待つ。戻ってくる人たちを待つと、運転手はカウンターを持って、かちかちと人数を数える。  ひどい頭痛と昨日から頭を悩ましている異常な憂鬱感について、理由はわかっているのだけどあえてここにはそのことは書かない。私にできるのはこれをやり過ごすことだけで対抗することではないからだ。書いたってどうしようもない。赤が白になることはなく、赤は赤いままである。

          帰省の途中のとりとめ