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ハロルドハリバット―受け身で生きてきた君へ送るゲーム
ハロルドハリバット(Harold Halibut)というゲームがちょっと前に発売され、実況配信をし、クリアした。
このゲームは受け身……自分で何かを決めたり、自分がリーダーになったりすることから逃げてきた人たちへ送るゲームである。
ハロルドハリバットは、崩壊寸前の地球から、優秀な選ばれた人だけを集めて、ノアの方舟的に地球を離脱した宇宙船が、未知の惑星の海に不時着し、主人公のハロルドたちがその海域から脱出するまでを描いたSFアドベンチャーである。
このゲームをやってみて、あなたが最初に感じる感情は「退屈」である。僕もそうだった。
なぜ、そんなゲームをオススメするのか??
このゲームが、開発期間10年かけた、全編手作りのクレイアニメで、画期的なビジュアルだから?
違う。
このゲームのエンディングの感動を、あなたにも伝えたい。しかし、このエンディングへの伏線として「序盤の退屈」があるし、中盤以降も退屈なパートはままある。
ハロルドもまた退屈を感じており、エンディングにてある理由でその退屈が解消される。
あなたの人生が退屈な理由は、受け身で生きているからではないだろうか。
なんとも失礼な提言だが、誰しも人生を受け身で生きている。学校でそれなりに勉強をして、ほどほどにサボって、いつの間にか就職して、家と会社の往復をするようになった。違う?
会社をやめて、Youtuberなんかをやって、好きなことで生きていく。そんなことができたら、どれだけ素敵だろう。
端的に言うと、主人公ハロルドはこの夢を、大きな犠牲を払って実行する。SFの皮をかぶった自分探しアドベンチャーである。
ただそれだけ。ハロルドが自分の好きなように生きるようになる。たったそれだけなのに、エンディングでは涙が止まらなかった。
それは、私にはハロルドと同じ選択はできない、と思い知ったからだ。
好きなように生きることは、私にはどうあがいても無理だ。
そう思い知る理由はぜひゲームをプレイしてほしいが、
私には無理だと悟ることによって、受け身で生きることを肯定できるようになった。
人間は、別の可能性があると現状から脱したいという気持ちがどうしても芽生えてしまうものだと思う。その可能性を絶つという、絶望を味わうゲームだ。
まあ……なにも感じないという人もいると思う。というか、ネタバレになるからといって結末をぼかしているから、イマイチこの文章があなたの頭に入っていかないと思う。
それでも、なんらかの引っかかりを覚えているなら、ぜひハロルドハリバットをプレイしてほしい。
全編で10時間程度の短い体験である。
受け身で生きている退屈を……僕と同じように肯定できるようになってほしい。そして、ささやかながら、何かを自分で決めるようになってほしいのだ。
配信はこちら。