浮気・暴力・モラハラ:私が有責配偶者です。離婚請求はできますか?--連載13
(1)有責配偶者から離婚は請求できるのか?
こうしたご相談もよくいただきます。有責性というのは、浮気とか、暴力とか、悪意の遺棄とか色々とありますよね。
結論から言えば、請求はできます。
「私は浮気をしたので、離婚請求はできないと思うのですが」
「相手方が浮気をしているのだから、私に離婚請求なんてできませんよね」
というご相談をいただきますが、これは間違いです。
正確には、有責配偶者側からでも離婚請求はできます。けれど、訴訟にした場合には、ある一定の条件が揃わなければ、離婚判決がでることは期待できないというお話になります。もちろん事情によっては離婚判決がでる場合もありますが、それには厳しい条件が必要となるのです。
(2)有責配偶者からの離婚請求がすぐには裁判で認められないのは何故なのか?
まず、どういった場合に有責配偶者からの離婚請求が認められるのか、という話しの前に、なぜ有責配偶者からの離婚請求が認められないのかという点を説明しましょう。
それは、以前の記事に書いた慰謝料のところにも関係してきます。慰謝料が認められるのは、相手のした行為が“不法行為だから”という説明をしましたが、つまり有責配偶者は“不法行為をした人”ということになるわけです。
正直言えば、万を超える相談を受けてきた中では、浮気や暴言などを養護する意図ではありませんが、ただ、そういう生活状況下であれば(精神的な虐待に近いような生活。ちなみに、これも証拠があれば有責性ということいなりますが。とはいえ、浮気などに比べると、法的には甘いな・・と感じることがあります)、何かに逃げなければ自分を保てないということもあるのかもしれないと感じることもあります。もちろん、順番が違うわけですが。
いずれせよ、感のよい方はお分かりかと思いますが、有責配偶者というのは、民法770条に反した方と言えるわけで、つまり法に反したわけですから、不法行為者ということになります。
この不法行為者からの離婚請求を認める判決を裁判所が出してしまえば、それは、ある意味、不法に手を貸すということにもなると思いませんか?
もちろん、事情は様々ですから、端的にそう言いきれるものではありませんよ。ケースバイケースなところもあります。しかし例外を除けば、やはり原則的には、不法行為者の要求に裁判所が応じることはできませんよね。
ただ、行為や結果だけを見れば有責性があるといっても、その有責行為の前に、誰がみても夫婦関係が破綻している状況があれば、そんな場合にまで、婚姻関係を法で縛るというのも、法律婚の主旨から考えれば望ましいことではありません。ですので、ある一定の場合には、有責配偶者からの離婚請求を認めることもあります。
(3)有責配偶者からの離婚請求が認められる条件とは?
※ 一般的には、離婚後の親権者、離婚前の監護権者が妻であることが多いですので、ここでは、有責配偶者を男性として説明をいたします(判例を元にしておりますので、逆のケースの方は、どうぞご容赦くださいませ)。
1.夫婦の別居期間が相当の期間に及ぶこと
相当の期間というのは、夫婦の年齢、同居期間等とのバランスで判断をされますので、5~8年前後は必要と言われております。ただ、結婚期間の短い方と長い方を同じに扱うことはできませんので、あくまでケースバイケースではあります。いずれにしても、長期間要するものと考えてください。
※ 最近は、弁護士さんと話をしていても、「3年間程別居をして、ちゃんと婚姻費用を支払っていれば、婚姻期間や証拠如何では、以前のような長期間の別居が必要になることは無い」とは聞きます。
2.未成熟の子がいないこと(子供が大きくなっていること)
1のような相当期間の別居を経ても、子供が小さければさらに長期間の別居が必要ということになります(ここも、徐々に裁判での事情は変わってきているようにも思えますが)。
3.相手方配偶者が、離婚によって、精神的、経済的、社会的に過酷な状況に置かれないこと
簡単に言えば、十分な財産分与や慰謝料、場合によっては離婚後の生活の支援等も行われ、妻子共に困窮をしない状況であるかというようなことです。
前提として長期の別居が必要ですから、逆に、有責性のない側としても、別の方との再婚を考えたい・・、新たな人生を考えたい・・、となることは多く、よって短期間の別居や訴訟にはならずに離婚が進むということも珍しくはありません。けれど、相手方配偶者の合意が引き出せなければ簡単に離婚はできないのです。
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