医師の勉強録;宇宙で眠る時ってどうするの??。宇宙飛行士の睡眠改善方法とは。
宇宙飛行士は電話ブースと同じくらいの大きさで、固定された寝袋に入って睡眠をとります。重力がないため、どの位置でも眠ることができますが、浮いたり頭をぶつけたりしないように、寝袋が固定されています。照明、空調、緊急事態の発生が確認できる警告警報装置などが部屋には設置されているため、狭いうえに騒音があります。睡眠薬を服用したクルーは65%程度と多数を占めており、宇宙における睡眠の課題を浮き彫りにしています。
睡眠時間はとても大切
睡眠時間はとても大切です。
私も例外でなく、7時間以上寝ないと翌日の活動に
影響が出ます。
仕事柄当直がありますが、当直翌日の業務は
明らかに効率が落ちていることがわかります。
では宇宙で睡眠をとる場合、、、、どんな課題があるのでしょうか??
宇宙飛行士はどうやって寝ているのか
宇宙ステーションには6つの小さなプライベートスペースがあります。
それぞれが電話ブースと同じくらいの大きさで、
固定された寝袋に入って宇宙飛行士は眠ることができます。
重力がないため、どの位置でも眠ることができますが、
浮いたり頭をぶつけたりしないように、寝袋が固定されています。
照明、空調、緊急事態の発生が確認できる警告警報装置などが
部屋には設置されているため、狭いうえに騒音があります。
現在、宇宙ステーションには7人いるので、
乗組員の1人がスペースXクルードラゴンの貨物倉で眠っています。
宇宙飛行士は協定世界時(UTC)に基づいて睡眠時間を設定し、
午後10時前に寝て、午前6時頃に起きます。
宇宙ステーションは1回転あたり約90分の速度で地球を周回しているため、45分ごとに朝と夜を通過します。
宇宙飛行士の睡眠改善方法
睡眠時間と起床時間のスケジューリング
人間の概日リズムと個人の典型的な睡眠習慣を考慮したスケジューリング、日中のパフォーマンス、睡眠覚醒のリズムを確保するために重要です。
照明、食事療法、運動、および睡眠補助の情報などです。
睡眠の知識教育と訓練
睡眠の質と量に影響を与える要因、
または睡眠に影響を与える可能性のある行動、環境条件を
認識することは良質な睡眠を促進するために重要です。
適切なタイミングでの運動、
夜間のデジタルデバイスからの光の最小化、食事の選択は
より良い睡眠につながり、概日リズムのずれを防ぐのに役立ちます。
薬剤ではない睡眠および覚醒物質
メラトニンおよびカフェイン入り製品は、
概日リズムの乱れに対処するために使用される場合があります。
認知行動療法
睡眠認知行動療法(CBT)は、乗組員がその日の出来事、睡眠前の準備、
睡眠衛生の順守、リラクゼーション方法、などに取り組むことに
役立ちます。
薬理学的介入
上記の調整工夫でどうにもこうにならない場合に
薬剤介入を開始します。
と言っても多くの宇宙飛行士がお世話になっているようです。
宇宙における睡眠の課題
宇宙飛行士では不眠は非常に頻度が高くなっております。
ミッション中の60%~70%の夜でクルーが不眠を自覚しています。
実際、睡眠薬の使用頻度が高く、
睡眠薬はスペースシャトル内で二番目に多く服用される薬物です。
睡眠薬を服用したクルーは65%程度とも言われており、
その中の18%は2剤以上の睡眠薬を使用しているとされています。
理由について具体的にあげると、以下のポイントになります。
・睡眠構造の変化(中途覚醒の増加・深睡眠の減少など)
・生体リズムの脱同調リスクを高める生活要因
(低照度環境,スペースシャトルミッションでの 90 分周期での
明暗サイクルやシフトスケジュールなど)
・微小重力による宇宙酔いや体液シフトによる身体環境の変化
・精神的緊張・ストレス,他のクルーの存在
・特殊な睡眠環境(換気ファンなどの騒音や低湿度、寒さ、
特殊な就床スタイルへ)
・睡眠負債(多忙な作業により十分な睡眠時間
を確保できず,平均 6.5 時間程度と短時間睡眠である)
感想
適応力お化けの宇宙飛行士達でさえ、睡眠薬が必要となる
宇宙環境はとんでもないなぁと思い直しました。
一方で、宇宙の方がよく眠れたと発言している宇宙飛行士も
いるようで、、、、不思議です。
とりあえず、宇宙での睡眠状況が一刻も早く改善することが望まれます。
【参考資料】
臨床神経 2012;52:1321-1324
https://www.nasa.gov/audience/foreducators/stem-on-station/ditl_sleeping
https://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/184.html
https://www.youtube.com/watch?v=UyFYgeE32f0