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医師の勉強録;前澤社長も経験された宇宙での食事における課題

宇宙での食は課題が山積み:宇宙飛行士はカロリー不足になっています。
要員としては、微小重力(鼻が詰まる、腸が動きにくくなる、、など)、
閉鎖環境(騒音、におい、二酸化炭素濃度)などが挙げられます。
今後これらの課題に対して解決策を見つけていく必要があります。

●はじめに

地上でも生きていくうえでなくてはならないもの
「食」
そしてそれは楽しみであったり、
コミュニケーションツールであったりします。
宇宙飛行士のアンケートで、最も楽しみにしている時間に
「食事」を選択している人も多いようです。
宇宙における「食」の課題を探っていきましょう。

●宇宙ミッションと食料供給の概要

宇宙に最初に人間が入ったのは1961年のユーリイガガーリンでした。
飛行時間は合計108分、
食べ物はピューレ肉とチョコレートソースのスクイーズチューブに
限られていました。

その後のロシアと米国をはじめとした宇宙探索が
数日から数か月に伸びていくに従って、
食料は密封されたポーチ、小さな缶、熱安定性食品
などと変化を遂げていきました。

1998年の国際宇宙ステーション(ISS)の設立になると、
食糧供給は大幅に変化しました。
ISSに搭乗する約6人の宇宙飛行士へ食料を供給するために
宇宙だけでなく地上での様々なサプライチェーンが加わっていきました。
現在ISSでは200を超える多様なメニューが利用可能になっています。

米国航空宇宙局(NASA)の次のステップは、
火星への有人ミッションです。
これには約2.5〜3年かかります。
地球から約400kmの距離でISSに食料を補給することと、
地球から約2億2500万kmの距離にある火星へ
食料を供給することは全く別物です。

国際宇宙ステーション(ISS)では、
滞在期間が長いため毎日の献立は決めておらず、
16日間単位でパッケージ化されたものを
各宇宙飛行士がパッケージの中から自分の好みの食品を選んでいきます。
またそれとは別にボーナス食といって、
宇宙飛行士が事前に選んだ食事もあります。

①費用面:
6人の乗組員を3年間、
1日1人あたり1.8 kgの食料とすると、
12トンもの食料を要する。
宇宙への打ち上げ費用は15000ドル/kg(170万円程度)であるとすると、
合計で約1億8000万ドル(198億円)になります。

②飛行中の未知の放射線レベルが食品に及ぼす影響:
宇宙放射線の影響で食品が食べられなくなる可能性があります。

③宇宙飛行士の食欲減退などによる摂取カロリー不足:
ISSに関する長期的な研究から宇宙飛行士は
必要な1日のカロリー摂取量の達成が難しいことが判明しています。
ISSでの6〜12か月の期間にわたって
重大な影響を引き起こさないと推定されていますが、
より長期的な火星ミッションでの影響は不明です。

●宇宙飛行中の宇宙飛行士が
食事量の減少を来している証拠


宇宙飛行中の宇宙飛行士の体重減少は水喪失、
筋肉、脂肪の喪失が原因と考えられます。

水と筋肉量の減少は微小重力によって
引き起こされると考えられていますが、
長期の任務で約2kgの脂肪が失われることは、
カロリー供給が不十分であることを示しています。

個々の宇宙飛行士のエネルギー必要量は、
安静時の代謝率、運動量、毎日トレーニングに関連する活動係数
を使用して計算されます。
それによると宇宙飛行士に供給される食事は、
約2,800 kcal /日を提供するように設計されています。

11人の宇宙飛行士のグループで28週間にわたる調査をした結果、
一貫したカロリー不足を示していました。

●カロリー不足を説明する潜在的な要因

設定カロリーの間違い

経年的に繰り返し計算しているため可能性低いとのことです。
ほとんどの宇宙飛行士で食物の摂取不足あり、
1日の平均推奨カロリー摂取量の80%程度の摂取とされています。

Sensory properties of space food

=味、食感、見た目などの食の官能性

宇宙飛行士は宇宙へ行く前に宇宙食を試食するため
各々の好みに沿って宇宙食はカスタマイズされます。

しかしながら、宇宙環境へ行くと味、食感、
見た目などの食の官能性が変化し、
地上では好まれていた食事が好みで無くなるといった
変化が生じるようです。

Multisensory flavor perception

=多くの感覚による風味の知覚

視覚や嗅覚なども含めて風味の知覚が形成されていることから、
地上と異なる、宇宙環境での影響が出る可能性があることが
挙げられます。

Food rehydration
=食品の再度水添加

フリーズドライの製品に使用する
宇宙船内の水自体に揮発性および不揮発性の化合物が
濃縮されている可能性があります(再利用のため)。
それによって、flavorが異なる可能性があります。

Environment inside spacecraft
=宇宙船内の環境


CO 2レベルは地球上の0.04%と比較して0.4%で10倍高く、
酸味​​受容体またはいくつかの三叉神経受容体を活性化する可能性があります(ISSの環境は気圧と酸素含有量が
地球と同じになるように制御されています)。

騒音は味覚や味覚に影響を与える可能性があります。
日中のレベルは70dBで、ピークは92 dBです。
騒音は風味や食欲とも関連がある可能性が研究で指摘されています。

食事環境は味の知覚に影響を及ぼします。
ISSでは、ナプキン、カトラリー、バックミュージックなど、
ディナーテーブルの通常の機能がまったくない食事環境となっています。

Psychological effects
=精神的な影響

精神衛生の状態、その時の気分によって、食事への
取り組み方が変わってくる報告があります。

Taste and smell receptors
=味覚レセプターの影響

味を感じる仕組みに味覚の受容体(レセプター)
の変化があります。
重力の影響などでこれらのレセプターに変化が生まれている
可能性が指摘されています。

Physiological changes
=生理学的変化

体液シフトによる鼻づまりで嗅覚が低下すること
や腸内細菌叢の変化が指摘されています。
微小重力による消化管運動の低下により、
食物の通過時間が延長することも指摘されています。

Shelf life of foods
=食品の貯蔵寿命


宇宙食は現在3年の貯蔵寿命を必要としますが、
潜在的な火星ミッションのために、5年の貯蔵寿命が予測されています。
宇宙放射線による食品への影響が懸念されます。

まとめと感想

課題を中心に様々な内容を列挙していきました。
生理学的な問題から、精神的な問題、環境要因と
幅広い要因が指摘されています。
宇宙での食体験をより良いものにするためにさらなる
研究が必要と思われます。

【参考文献】

・Compr Rev Food Sci Food Saf.2020;19:3439–3475.

Factors affecting flavor perception in space: Does thespacecraft environment influence food intake byastronauts?

・JAXA公式サイト



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