プレコンセプションケアって何??
プレコンセプションケアの定義
「前思春期から生殖可能年齢にあるすべての人々の身体的,心理的お よび社会的な健康の保持および増進」と定義されます。
その名の通り、妊娠を計画する前のケアを指す概念ですが、その範囲は非常に広いものとなっています。上記の定義の通りで、プレコンセプションケアは、単に妊娠を希望するカップルに関連するものだけではありません。繰り返しますが、それは、「前思春期から生殖可能年齢にあるすべての人々の身体的、心理的および社会的な健康の保持および増進」を目指すものとして定義されます。
身体的健康の保持および増進
プレコンセプションケアでは、生活習慣病の予防や感染症のスクリーニングなど、一般的な健康の維持が重要と言われています。
妊娠する前の段階で、栄養不足、アルコールやタバコの摂取、薬物使用などのリスクを低減することが求められます。
また、性感染症の予防や適切なワクチン接種なども、妊娠を希望する人々には特に重要です。
心理的健康の保持および増進:
精神的健康も重要な項目として掲げられています。
ストレス、うつ病、不安障害などの精神的な課題は、生殖の健康や妊娠のアウトカムに影響を与える可能性があります。
プレコンセプションケアの中で、心理的健康のサポートやカウンセリングが提供されることで、将来の親となる人々が健全な精神状態で妊娠・出産に臨むことが可能となります。
社会的健康の保持および増進:
社会的健康とは、社会的な環境やコミュニティの中での健康を指します。これには、家庭の環境、職場の状況、経済的な安定性などが含まれます。
家庭内暴力や経済的な困難は、妊娠や出産のリスクを増加させる可能性があります。
プレコンセプションケアでは、これらの社会的な要因を認識し、適切なサポートや介入を提供することが重要としています。
CDCによるプレコンセプションケアの10の勧告
米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は下記のようにプレコン セプションケアについて、
勧告も行っています
生涯についての自己責任:各個人やカップルには、リプロダクティブライフプランを持つことが重要です。これにより、計画的な妊娠や家族計画が可能となり、意図しない妊娠やそのリスクを減少させることができます。
消費者意識の向上:異なる年代、リテラシー、文化背景の人々に合わせて、プレコンセプションケアの重要性や情報を提供し、社会全体の認識を高めることが求められます。
予防医療:生殖可能年齢のすべての女性にリスク評価や教育、指導を提供することで、生殖に関連するリスクを低減し、より良好な妊娠アウトカムを追求します。
リスクに対する介入:スクリーニングを通じて判明したリスク、特に優先度の高いものに対して、適切な介入を行う必要があります。
妊娠間ケア:妊娠と妊娠の間の期間は、特に前回の妊娠で問題が発生した女性(乳児死亡、胎児死亡など)にとって重要です。これを活用して、集中的なケアや介入を行うことが推奨されます。
妊娠前健診:妊娠を計画している個人やカップルには、妊娠前の健診を提供することで、リスクの早期発見や対処が可能となります。
低所得女性への保険:経済的な困難から女性の健康が守られるよう、公的・私的健康保険の提供を拡大し、プレコンセプションケアや妊娠間ケアへのアクセスを改善することが重要です。
公衆衛生戦略:既存の地域保健プログラムにプレコンセプションヘルスの要素を組み込み、特に前回の妊娠・出産で問題があった女性へのケアを重点的に行うことが勧められています。
研究:プレコンセプションケアのエビデンスを強化し、そのエビデンスを基にケアの品質やアウトカムの改善に努めることが必要です。
モニタリング:公衆衛生のサーベイランスや研究の枠組みを利用して、プレコンセプションヘルスの状況や効果を定期的に監視・評価することが推奨されています。
このようにプレコンセプションケアは、
妊娠を計画するすべての人々が最良の健康状態でその過程を迎える可能性を向上させるための総合的なアプローチのことです。
健康的な妊娠や出産、さらには子供の健康な成長をサポートする土壌が築かれるためにも日本でも取り組みが広がっています。
参考資料
Johnson, K et al:Recommendations to improve preconception health and health care―United States. A report of the CDC/ATSDR Preconception Care Work Group and the Select Panel on Preconception Care. MMWR Recomm Rep 2006; 55:1‒23.
Floyd RL, et al:A national action plan for promoting preconception health and health care in the United States(2012‒ 2014). J Womens Health(Larchmt)2013;22:797‒802.