“笑い男”をきっかけにサリンジャーを手に取りし者
アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」が2002年に放送された。作中で発生した笑い男事件。それが、2024年2月より始まったことは、本作を知る者にとっては有名だ。
あたかも作中のように、僕らは「笑い男」をひとつのコンテンツとして認識しているから。記念サイトも公式から登場。
いくつかの企画の中には、上記の画像のように、笑い男のロゴ無料配布というものもある。
ある意味「あなたにとって攻殻機動隊と言えば?」と聞いてみれば、笑い男と答える人も少なくないだろうと思わせるほどには人気なのだ。僕は士郎正宗の原作マンガの他、たとえばタチコマのプラモデルも持っていたりする。バリが多くて、個人的に少し作りづらかった印象。
そんな色んな思い出やイメージを個々人が持っているだろうが、本作をきっかけにアメリカの著名な作家、サリンジャーの小説に触れてみようとした者は少なくないだろうし、また僕もその一人であることは打ち明けておこう。
そもそも僕は村上春樹の作品を読んでいない。
そんな彼が訳したことでも有名なサリンジャーの作品は、どこか自分の好みではないのだろうという偏見によって、遠ざけてきたものだ。
それに、僕はアメリカ文学というジャンル自体、読むことが滅多にない。せいぜい関心があるのはマーク・トウェインくらいか。
だが、「トグサ」が付箋を挟んだ『ライ麦畑でつかまえて』を片手に、一節を暗唱したりしていると、無性に読んでみたくなる。
この感覚は、エヴァで「裏死海文書」というものが登場すると、実際の死海文書について調べてしまうのに似ている。
もしかすると、これを読んでいる方にも、似たような経験があるのでは。
ちなみに、サリンジャーの短編「笑い男」が収録されている『ナイン・ストーリーズ』が、河出文庫より新たに出版されている。なお僕は、従来の訳である、新潮文庫版を購入。
現実の僕らは、もはや間接的に電脳化しているようなもの。その上で、もし笑い男のような者が既にいるとすれば、きっと僕の今回のnoteなど茶番にすら感じないだろう。笑い男についての感想をネットに書き込む僕という人間を覗き込む者がいるならば。
だからこそ、重要なキーワードとして、本作には「ゴースト」という概念が登場するのだ。
サリンジャーを買うのも、ネット上で笑い男のロゴを楽しむというのも、全て傾向性のあるものに過ぎない。そこで、自分のゴーストがどう囁くかが、そのひと個人の生き方へと進むわけである。