【回想】第47回日本アカデミー賞受賞作
不勉強なことに、あまり映画の賞には詳しくなく、受賞しているから観てみる、ということは滅多にない。
そうなのだが、今回の「日本アカデミー賞」最優秀賞・受賞作品の多くを、僕が実際に映画館で観、そして非常に感銘を受けた作品であった。
なので今回は記念に、改めて簡単に感想を書くと共に、当時の拙記事を参照することにしようと思う。
僕は、“受賞するような良いモノを観ているんだぞ”と自慢したい訳ではなく、素晴らしい作品をリアルタイムで接することができたことを感謝しつつ、これからも趣味として楽しんでいきたいという、ひとつの記念碑として、このエッセイを執筆する。
『ゴジラ-1.0』
ゴジラと戦後まもない日本の疲弊しきった戦力。真正面からの戦いは、占領下であることからも不可能に近い。人々は残されたわずかなもので、より可能性の高い「一手」を考案し、成功させなければならない。
本作の見事なところは、バトル場面だけを追及した特撮というわけではなく、人々の心理状態を冒頭から描き続けているところだろう。決して人情ものではないのも、個人的に良かった。
目次前に紹介してある、拙記事のひと言感想メモには、「戦時中の工学エリートとして“学者”がいい味を出してる。緻密な設定。」と書いてある。
この時代の前後、学者という肩書きは権威そのものであろうと思われる。しかし、戦中・戦後まもないこの時期の学者の中には、戦闘員としてではなく、作戦参謀や兵器製造の一員として活躍する者も多かったことだろう。
町工場のスタッフとも違う、特異な存在としての学者。そこが印象深かった。
『君たちはどう生きるか』
先日、ついに本作の『絵コンテ』を買ってしまった。僕はあまり絵コンテを買うことはなく、いま手元にあるのは『劇場版 新世紀エヴァンゲリオン序』と、この一作である。
なお、絵コンテを読むメリットは、監督自身の指示や意図が書かれているからである。まさに(アニメ)映画の設計書なのだ。
絵コンテを買いたくなったのは、宮崎駿のドキュメンタリーを視聴した後になってから。
本作に登場する人物のモチーフをしきりに高畑勲であると述べていたこと、そして物心ついてから、映画館でじっくりジブリの新作を観たのが、僕にとってはこの映画だったから、より深く味わいたいと思い購入した。
もちろん、映画を観た際には、僕のポストカードコレクションに、本作も加わっている。
ひと言メモには、「宣伝無しという宣伝に引っかかったミーハー感を圧し殺しながら初日に。良さは、後天的味覚といったところか。」と書いてある。
この映画は、ほとんど情報公開がなされないまま、上映された。そのことに対しての、妙なプライドを書き綴っている。
後半の内容は、観てすぐは分かりづらかった箇所も、少し落ち着いて思い起こすことで、全体像が見えだす。
すると、なるほど、ハラハラドキドキのエンターテインメントではなかったかもしれないが、凄かったのは間違いなしだなと、納得する。そんな思いを述べている。
『PERFECT DAYS』
僕が映画館で観た映画では、一番最近のことなので、未だに感慨深い一作。本作だけはパンフレットも購入している。それも、観に行った館に無かったため、別の映画館に足を運んで。
本作がノベライズすれば、ぜひとも買いたいのだが、そういう気配がなかったため、パンフレットをチョイスした。
上に紹介した記事でも太字にしてあるが、「似た出来事の繰り返しであっても、全く同じ日は一つとして存在しない」ということを僕は感じた。
フィルムカメラ(二眼レフ)を実際にいじりだしたのも、本作の影響であることは、先述している。
フィルムカメラは、実際に現像するまでは、いかに構図にこだわろうとも、しっかりと撮れているかは分からない。
ある意味、僕の日々もそのようなものだろう。僕の場合は、日記を書いているので、過去のことはどうこう言える。
しかし、これからの日々を憂いても仕方がない。今日なにをするか。
主人公は変わらぬ日々を、あえて変えようとはしない。世界の変化を独りで観察できているからだ。
映画は様々なことをその都度考え直させる。主人公に託してその物語は一応の幕をとじるが、視聴者はその先を生きねばならない。何を観、何を感じたで終わるのではなく、どういう影響を受けたのかを考えることもまた、映画の醍醐味だろうと思うのだ。
再度くりかえすようだが、ノミネート作品の全てを観た訳ではないが、最優秀賞を受賞したこれらの作品に出会えたことに、今一度感謝したい。