100年の孤独/放哉に想う〈Vol.12〉 肉体を苛めつくして訪れる
南に面した窓のある4人部屋奥右側にわたしのベッドはありました。お天気のよい日は朝日が病室のカーテンをオレンジ色に染めました。
再発したがんを摘出したのち、わたしの臓腑は長い間、痛みがとれませんでした。結局1カ月ほど鎮痛剤を飲みつづけました。
痛みは辛いものです。辛い痛みはやがて、不安や恐怖などさまざまな影を心に落としました。院内はコロナの感染予防のため、家族との面会も制限されていました。
そんなとき、ふと『海も暮れきる』の一節が頭に浮かんできました。
放哉の気持ちが、ほんの少し分かったような気になったのでした。