無愛想な記者
11/3の祝日は半日取材だった。祝日は普段仕事は休みなので、どこかで代休をもらうつもりだ。
その日は授賞式の取材だった。書道の公募があったのだ。会場には半紙や条幅が展示されていた。僕はそれらの写真を撮り、受賞者にインタビューをしにいった。
会場は大阪市内のホテル。記者になってホテルに行くことが増えた。全国への出張ではホテルに泊まるし、こういう授賞式や株主総会もホテルでやることが多い。
業界が業界なので、僕が話す相手はいつも歳上だ。若い女の子とずいぶん長く話していない。彼女もいないのに、こんなんでいいのかなぁ……とは思わないけど。
取材は先輩が同行してくれた。先輩は歴15年のベテラン。会場に入るといろんな人から声をかけられていた。僕はそれを見ていた。
僕には話す人がいなかった。会ったことがある人は何人もいるのに、誰も僕に話しかけなかった。僕は1人でこういう大人数が集まる取材に行く時、大抵隅っこで突っ立っている。無理に話しかけるのが不自然に思えるから。でも記者としてはよくないんだと思う。先輩はそれを分かりながら、突っ立ってることなく誰かと話そうとしてきたんだと思う。記者が仕事先で情報を集めずにどうする。
あと僕は無理に笑うのが苦手なのだ。一度自分と話してみたい。やはり深刻な感じが出ているんだろうか? だから初対面の人と話していてふと自分が深刻な顔をしていると気付いたとき、またやっちまったと思うわけ。
でも記者が全然向いてない職だとは思わない。もっと向いてない仕事がたくさんある。記事を書くことが全てなのであって、どれだけ無愛想でも聞くことを聞けばとりあえずはいいわけだ。
もし第一線の記者がみんな愛想が良くて、僕が引き出せるはずのない文言をズバズバ引き出して、僕が丸一日考えてやっと出るようなタイトルを10秒で思いつく……なんてことならお手上げだけど。