起坐呼吸(Orthopnea)とは?
起坐呼吸とは、仰向けに寝ていると呼吸が苦しくなり、座るか上体を起こすと呼吸が楽になる症状を指します。これは、主に心臓や肺の疾患によって引き起こされるものです。
原因
1.心不全
・起坐呼吸の最も一般的な原因は、左心不全です。
・左心室の機能が低下すると、心臓が肺から流れてくる血液を十分に送り出せなくなり、血液が肺にうっ滞(滞る)します。
・その結果、肺に水分がたまり(肺うっ血)、肺が正常に働かなくなり、呼吸困難が生じます。
・仰向けになると、血液が肺にさらに集まりやすくなるため、呼吸が悪化します。一方、座ることで重力により血液が下半身に移動し、肺への血流が減少して呼吸が楽になります。
2.慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・COPD患者でも起坐呼吸が起こることがあります。仰向けになると横隔膜が押し上げられ、呼吸が制限されるためです。
3.肥満や睡眠時無呼吸症候群
・肥満や気道の閉塞も、仰向けで呼吸を悪化させる原因となることがあります。
症状
・仰向けで呼吸困難を感じる
・夜間、呼吸困難で目が覚める(パロキシズム性夜間呼吸困難:PND)
・座ったり体を起こすと呼吸が楽になる
・体を横に倒した姿勢でも楽にならない場合がある
診断
1.問診
・仰向けになると呼吸が苦しくなるかどうかを尋ねる。
・夜間、息苦しさで目が覚めるかを確認。
2.身体診察
・肺うっ血の兆候(肺のラ音、チアノーゼなど)。
3.検査
・胸部X線:肺うっ血や肺水腫の有無を確認。
・心エコー:心不全の評価。
・血液検査:心不全マーカー(BNPやNT-proBNP)の測定。
治療
起坐呼吸の治療は、原因疾患に応じて行います。
1.心不全の場合
・利尿薬:体内の余分な水分を排出し、肺うっ血を軽減。
・血管拡張薬:心臓の負担を軽減。
・心不全の基礎治療(β遮断薬やACE阻害薬)。
2.COPDの場合
・吸入薬:気道を拡張して呼吸を楽にする。
・酸素療法:必要に応じて酸素投与。
3.睡眠時無呼吸症候群の場合
・CPAP療法(持続的陽圧呼吸療法):気道の閉塞を防ぐ。
ケアと看護のポイント
1.楽な体位の保持
・患者が呼吸困難を感じた場合、すぐに上体を起こせる環境を整える(クッションや電動ベッドを活用)。
2.呼吸困難の観察
・呼吸状態や皮膚の色(チアノーゼの有無)をこまめにチェック。
3.夜間の対応
・夜間に呼吸困難が生じる場合は、ベッドを調整して頭を高くする姿勢を保つ。
4.疾患の管理
・患者の基本疾患(心不全やCOPD)の管理を徹底する。
注意点
・起坐呼吸は、重篤な心不全の兆候であることが多く、放置すると命に関わる可能性があります。早急な医療機関への受診が必要です。