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corocorocco
フィッシュストーリー | 伊坂幸太郎
図書館で何度も借りている本で、唐突に改めて読みたくなったのでKindle で買ってしまった。数百円で、奥行きのある世界観と、時間を操るテクニックがいつでも読めるようになった。
伊坂幸太郎は、物語に出てくる登場人物の個性が大きな持ち味だと思ってます。それぞれの人物が、なんとなく愛嬌があって、恐ろしいシーンとかあるんだけど、それでも心のどこかではある程度のレベルでのコメディ感を残しながら読んでいるような気がしています。
今回は、ポテチに出てくる女性二人の可愛らしさがとても良いと思いました。
あとは、会話のテンポと、歯切れの良い内容。残すべき言葉を必要最小限なものだけ残していて、そのおかげで、少ない言葉でも物語の筋を掴むことができます。長嶋有も同じような雰囲気を持っていると思います。
伊坂幸太郎の本は、だいたい読んでいますが、上記2つは、どの作品にも共通して言えることかなと思ってます。マリアビートルに出てきていたきかんしゃトーマス系の薀蓄はさすがにやりすぎだと思いましたが笑
いつも、読みながら、「自分もこんな感じに書けたらなぁ」なんて思います。
中に入っている短編の中では、フィッシュストーリーが一番好きです。映画を見てしまっているというのもあるんですけど、具体的な映像が思い浮かぶんですね。居酒屋の、タバコ臭い中で、音楽について語り合っているところとか。レコーディング・スタジオでの殺伐とした感じとか。投げやりな一発録りとか。
結局売れなかったんだと思います。だけど、それがいくつもの時代を超越して、あの空白が大きな意味を持ったっていうところ、ホント、ただただそのアイデアに脱帽です。