「山」「海」「空」すべて繋がっていた。
「ミツバチの生息しやすい環境をいかに保つか。あくまで蜂蜜はその過程で生まれる副産物なんです。」
そう語るのはミツバチと継続的な関係を築き上げ、その地域で共存していく努力を続けておられる養蜂家の長生博行さん。
柑橘栽培の「山」、漁業の「海」の仕事を経て、今は養蜂の「空」と向き合う。
自然の摂理、循環を知り尽くしたエキスパートだ。
以前は釣船の案内人もしていたとか…(面白い人だね)
とにかく養蜂を取り巻くあらゆる環境に精通している。
松山空港から車で2時間半、四国最西端の佐田岬半島へ。
東西50kmに渡る日本で一番細長い半島は、瀬戸内海と宇和海にはさまれた温暖な気候。
ミツバチは半島の南北を自由に行き来して、元気にのびのびと花の蜜を集めることができる。
4年ぶりに長生さんと再会した。
変わらず元気そうだ。嬉しくなる。
さっそく養蜂の現場へ。
少し山に入った茂みの中に…いるいる!元気に飛びまっわてる!
かぶった防護ネットの上からバチバチ当たってくるが恐怖感はなく、むしろ愛おしく感じるから不思議だ。一生懸命に蜜を集めているんだ。
何度か足首をチクリと刺されたが、それさえ愛おしい。(ドMかよ…)
蜜箱の状態を真剣に確認している長生さんが、養蜂を取り巻く様々な環境について深く話をしてくれた。
農業、漁業、地球温暖化、生産者の高齢化、国によって異なる養蜂の背景、
ミツバチの習性、天敵、農薬の影響、病気、などなど。
ミツバチの種類、習性について。
日本ミツバチはいろんな花から蜜を取る習性があって、行動範囲は狭く1km圏内。
西洋ミツバチは単一の花から蜜を取る習性があって、行動範囲は広く2km圏内。
南北が狭く、標高も200〜300mくらいしかない佐田岬は最高の環境だね。
天敵について。
時々、スズメバチが蜜箱を襲いに来ていた。
スズメバチは肉食だからミツバチを襲ってくる。
中の幼虫を狙っているのだ。幼虫は高タンパクだから貴重な栄養源になるんだそう。
バチーン!!!
すかさず長生さんが叩き落とす!
ぶんぶんミツバチが飛び回っているのになんで気づくんですか?
「音でわかるんよ。」
飛ぶ音聞き分けられるのか…。すごいな。
農薬の影響について。
例えば近くの柑橘畑に農薬を手散布した場合と、スプリンクラーで一斉散布された場合のミツバチの死骸の量が桁違いに違うこと。
手散布された畑近くの蜜箱には、入り口付近で息絶えている蜂が数匹確認できた。
スプリンクラーの影響がある蜜箱では…。
蜜箱ごと全滅していることもあるそうだ。想像しただけで恐ろしい…。
だから長生さんはなるべく農薬の影響が届かない場所に蜜箱を設置していた。
農業にも精通している長生さんだから見える景色があるんだろうな。
普段、お菓子作りで蜂蜜を使っているが、さすがにこの養蜂現場の実態までは考えが及んでいなかった。
自然の恵みを分けてもらっているということを忘れてはいけないな。
作業をしながらたくさんのお話をしていただいたが、長生さんの言葉は
常に優しく、そして深かった。
作業がひと段落ついてタバコを吸う長生さんがまた絵になるのだ。
毎回わざわざ紙に葉タバコを巻く。
面倒臭いがこれがイライラを鎮めてくれる良い時間なんだそうだ。
吸う本数も減るらしい…。
各地の生産者さんとお話しして毎回改めて知るんだけど、ひとつの物事を成すにはそのまわりの環境も整えないと成立しないということ。
養蜂も農業も漁業も、もちろん人間関係、人生も(ちょっと話が大きくなったが…)。
山が過度の伐採や農薬で荒れれば当然蜂は住み着かないし、海へ流れ出る水も汚染され魚にも影響。汚染された海水がやがて雨として山に降るんだから、また汚染される…。
一見自分には関係ないようなことが、巡りめぐって自分に帰ってくる。
だから目の前のことには真剣に向き合わないとね。
子供の頃、蜂は恐かったけど(2週続けて刺された事がある…マジで)、健気に蜜を集めるミツバチたちはなんか愛おしく可愛らしかった。
しかし真面目によく働くね〜。
俺も見習わないと。
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