【保存版】Z世代・デジタルネイティブ世代とこれからのマーケティング
はじめまして。2022年の7月に電通を退社し、8月から(株)manage4という会社でデジタルネイティブ世代をターゲットとした事業開発、ブランディングを中心にマーケティング支援全般を行っている佐々木と申します。転職前の直近3年間は電通デジタルへの出向中にデジタルネイティブ世代(Z世代・M世代含む)に特化したコンサルチームを設立し、その運営と20社以上のクライアントのコミュニケーション課題、事業開発課題の解決に奔走してきました。
このnoteでは、昨今すっかりバズワードとして定着しつつある「Z世代」を含む、デジタルネイティブ世代をターゲットにしたマーケティングについて書いています。金融、通信、アパレル、メディアサービス、食品、飲料、SNS、エネルギー、政府関連など領域問わず様々な業種・業態のクライアント様の課題に向き合ってきた中での実践知やTIPSを書けるだけ書ききりました。ボリュームとしては約2.8万字、事例の数は約30個で、卒論ぶりの特盛りになりましたがご容赦ください…!
本noteの執筆に至った背景は、
どの企業にとっても未来の顧客になり得る重要セグメントでありつつも、行動様式や価値観のギャップが大きく理解されづらい。
一方で、シンクタンク機能や社会学的なアプローチで分析している企業や団体は多くあるが、Doの部分でTIPSが整理されるケースが少ない。
様々なチャレンジを行っている事業会社や代理店も増えてきており、もう少し潤滑油があれば、一気にこの市場が加速していく
と考えているためです。この市場が盛り上がることで、古いままになっている多くの物事がアップデートされ、より生活が豊かになる。生きやすい社会になる。そんな一助になれたらと思っています。
このnoteは、デジタルネイティブ世代(Z世代/M世代/若年層ほか)に対して
何らかの関心を持たれている全ての方
事業を既に推進されている事業会社マーケターの方
事業や施策を検討されている方
ソリューション提供や代理店サイドでクライアント支援をされている方
いずれの方にも参考にしていただける内容になると思います。
全く知見のない方にも参考にしていただけるよう、やや基本的な部分から記載していきますので、興味領域に応じて摘まみ食いしていってください。
自己紹介:manage4の佐々木駿です
内容に入る前に、自己紹介も兼ねてざっくりと私の経歴をお伝えします。
主な実績部分については、色々と「あれ俺がやった案件!問題」がややこしいので、携わったクライアント企業様のロゴ掲出のみとさせていただきます。
超ざっくりまとめると、以下のようなキャリアでした。
・総合広告代理店に新卒入社
・マーケ畑で、長らくデジタル領域のキャリア
・ザ広告ではなく事業・サービス寄りの仕事が多く、
・大手企業のDX支援とデジタルネイティブ世代特化型のチーム運営、
企業支援(事業開発/ブランディング)の2足の草鞋で支援領域を拡大し、
・今の会社(manage4)では、領域や組織の壁を越えてマーケ全方位での
支援に挑戦中
といった感じです。略歴は以下に・・・
2013年~:
電通若者研究部(ワカモン)の学生リサーチャーとして参加
2015年~:
電通入社後マーケティング局へ配属。KPIマネジメントやデータ起点のコミュニケーション戦略や事業戦略策定に携わる。
2016年~:
設立タイミングから電通デジタルへ出向。デジタルトランスフォーメーション領域の部署で、企業のDX戦略策定、デジタルを活用したマーケティングプロセスの高度化、サービス開発、大規模データ活用等の案件を中心に従事。
2019年~:
電通デジタル内にデジタルネイティブ課題特化型のコンサルチーム「YNGpot.(ヤングポット)」を設立。全社から領域別の若手スペシャリストを招集し、リーダーを兼任。2021年に、体制強化とYNGpot.のヘッドクオーター組織として「デジタルネイティブルーム」を設立。
デジタルネイティブ世代をターゲットとした事業開発/新規サービス開発/事業戦略策定/ブランディング・コミュニケーション施策の企画・実施に従事。
この組織立ち上げの功績として、個人として、チームとして全社表彰を2度受賞させていただき、デジタルネイティブ市場への対応は組織的にも評価頂けた挑戦でした。
2022年~:
電通デジタル出向解除と同時に電通を退職し、(株)manage4に入社。
デジタルネイティブ事業部長として、領域や組織の垣根を超えた全方位マーケティング支援に挑戦中。なお、世代関係なく、スタートアップ~大企業まで、事業開発やハンズオン型のマーケ推進支援、ブランディングやプロモーションの企画・実施も普通にやっています!
導入:デジタルネイティブ世代という表現
電通デジタル在籍中にチームを立ち上げた際にも散々議論した内容ではありましたが、あえて年齢や生まれ年の区分ではなく「デジタルネイティブ」という表現を使っています。
22年現在次点のバズワードは圧倒的に「Z世代」なのですが、世代で切りたいという意図よりも「デジタルに慣れ親しんだ消費者の行動様式や価値観の変化、これからメインストリームになるであろう新たな潮流の兆し」を突破口にしてマーケティングのアップデートを行うことを主目的に据えているためです。
例えば、40代だろうが50代だろうが、メルカリで物が売れる喜びを味わったり、定価で買うよりも新古品が安く手に入るようになったりすると、普段の消費や買い替えのタイミングで2次流通先の確認がマストになり、この行為は不可逆性を帯びると考えられます。こうした兆しが若年層ほど先に見つかりやすいが、若年層だけのものでもない、という視点で、どうマーケティングに活かしていくかを考えよう、といったイメージです。
従って、ターゲットセグメント的な視点ではZ世代やミレニアル世代、もっと言うとZ世代よりも後に生まれたα世代のような置き方のほうが一般的ですが、このnoteではデジタルネイティブという言葉を至る所で使用させていただきます。
ただし、この後語るような内容はZ世代(22年現在で、20歳前後の年齢)のほうが傾向としては顕著に出やすいものが多い、と思って読んでいただけたらと思います。
※一般的に、ミレニアル世代=デジタルパイオニア、Z世代=デジタルネイティブと説明されるケースもあったりします。世代や呼称上の一般的な定義は次章で記載しますね。
導入②:言葉の定義と基礎的な解説
前置きが続き恐縮ですが、このnoteで出てくる世代表現や基礎的な市場理解のための解説を記しておきます。かなり初歩的な内容も含まれるので、既知の方やさっさと具体をば!とご所望の方は飛ばしちゃってください。
生まれ年別の世代表現
厳密には明確な定義がなく所説あるようですが、欧米で生まれた表現で、X世代・Y世代に続く世代として表現されたZ世代。そして、現在はその後に続くα世代。アルファベットの並びと別に語られるミレニアル世代。それぞれ該当する生まれ年は下記のようなゾーンで説明をされることが多いです。
・ミレニアル世代 :1980年~1995年生まれ
・Z世代 :1996年~2012年生まれ
・α世代 :2013年以降
早速若干細かい数字にズレがありますが(笑)、PERSOL社の記事に日本やアメリカでの呼称としてわかりやすい表があったので掲載させていただきます。(生まれ年の始点終点に若干のずれがあっても本質的にほとんど差はないと思ってもらって大丈夫です。)
Z世代の特徴理解と難儀なポイント
世代と呼びつつも10代20代のような10歳刻みよりも広く、対象期間が15歳分上下で離れている。これがZ世代の説明をややこしくしているポイントの1つだと言えます。高校生~大学生~社会人と可処分時間も可処分金額もだいぶ違うので、あくまで大枠を掴みつつも、局所的にみられる傾向を全てに当てはめるような錯覚に陥らないことが重要です。
Z世代とは?デジタルネイティブ世代とは?のような解説記事は巷に大量に溢れているのと、切り取るテーマによって話がだいぶ変わってくるので、ここで触れるのは概観を掴むレベルに留めます。
具体的に「社会情勢の影響」、「デジタル化の波と情報接点の変化」、「消費のトリガー」の3つの視点からポイントをお伝えします。このパートの最後にいくつか参考情報のソースをまとめますので、より深く理解されたい方はそちらも活用ください。
ポイント1:安全神話の崩壊と根拠なき通説・慣習の打破
2000年に生まれたZ世代の人生と22年の間の社会変化をイメージしてみる。
生まれた時からインターネットがあり、物心ついた時にはスマホがすぐそばに。便利な世界でスタートを切ったかと思えば、リーマンショックや震災・天災、そしてコロナと…平穏が崩れるシーンを若いうちから見聞きしたり、経験したり。
あらゆるコンテンツや世界の情報が簡単に検索できるようになった、探しに行けるようになった、タイムラインに流れるようになった。一方で、SNSではきらびやかに活躍している(ように見える、も含む)人の投稿ばかりが目に付く。
ブラック企業やサビ残への規制が強まり、働き方改革と同時にハラスメントも強く取り締まられ始めるようになった。これまで弱い立場だった側の主張が通りやすくなった。多様性を尊重する空気もだいぶ強くなった。
大企業に入ってもリストラ(早期退職)が行われる現実を横目に見つつ、YouTuberを皮切りに「好きなことで稼げる」ことを証明する人たちの登場が仕事の概念を拡大していった。SNSで月商○○万円、みたいな奴らもたくさん出てきた。
みたいなことが最近までの世の中の動きの断片だとすると、そもそも一昔前に語られていた「大学を出て、大手に努めて、ガッツリ働き・稼いで、結婚して、マイホームと車を買って~」のような成功のレール/安全神話が消滅していることに当然気づく。その中で何者かになるための道のりが続く。
選択肢は多様化する一方で、選択を迫られる状態が続く。色々なものが可視化されすぎて、失敗できない勝負が続く。あらゆる事象に対して、自分にとっての意味や意義を高速に計算して判断していかねばならない。
従来の当たり前がひっくり返る瞬間、アウトローや異端とされていたものが賞賛される様、影響力を持つ様を何度も見てきた。
ならば、あらゆる物事も自分たちなりの合理的な判断軸で決めよう。Whyを意識して「根拠なき通説や慣習は無視しよう」。
そんな変化が起こってきたのではないかと考えています。
乾杯はビール、社会人になったら保険に入ろう、飲み会は先輩が奢ってやれ、結婚指輪は給料〇か月分、、、消えていった一昔前の通説や慣習は数知れず…。
皆が思い浮かべる安全神話がないからこそ、意味や意義が注視され、個の思想やスタンスが問われる側面が強まっているように感じます。
ポイント2:情報における権威性の変化とバーティカル性
よく出てくる類のお話。〇年に比べて、〇年でデータ通信のトラフィック量は何十、何百、何千倍に!という話を聞いたことがあるはず。ここでは数値として何倍になったかはどうでもいいので割愛するが、事実として果てしなく増えている。※一応それっぽいものは載せておきます。
ここでのポイントは、デジタル化が急速に進む中で「突破力の高い情報の質と、情報ソースの権威性が変化しつつある」点について抑えておくことだと思っています。
上述の通り、選択肢が膨れ上がる中で失敗できない選択を迫られ続けると当然正解へのショートカットが欲しくなる。その傾向として見られる動きを4つほど説明します。
2-(1)検索はGoogle/Yahoo!からあらゆるサービス/SNS上で
今時の若者はググるからタグ(ハッシュタグの略)る、さらにその先では…
みたいな話もよく目にしますが、超ざっくりまとめると、ここでの回答は、「用途別に検索媒体と検索方法をめちゃくちゃ使い分けている」ではないでしょうか。
・総合解、一般解、一般常識、若干難しい話:普通にググる
・トレンドの店/体験:TikTok、Instagramのストーリーズ
・移動先(エリア)のスポット:Instagramの#、Google Map、食べログ
・速報性の高いもの:Twitter
・ノウハウ、解説:YouTube
みたいな感じで…
※テーマ別・目的別のソーシャル利用状況の大規模定量調査やりたいですね
わかりやすい投稿がこちら
その他、この辺の記事もよかったら読んでみてください
なので、マーケ視点で考えると情報はモノ(用途)に合わせて、分散させておかないといけない側面が強まっているという話に繋がります。
(こうしてまた情報は増えていく…)
2-(2)バーティカル性・一次情報が強い
これはサービス単位でもアカウント単位でも言える話。特定テーマについて精通している、熱狂的な人が集まる場に情報を取りに行くのが最短ルート。
例えば、サービス単位でいうと
・服(コーデ) =WEAR、StyleHint
・映画 =Filmarks
・コスメ =@cosme、LIPS
・飲食店 =Retty、食べログ
ただしこれも、初期は熱狂度が高い場であったがスケールの拡大と共に総合解、大衆評価に近づきつつある。そうなると次は専門性の高い個人の方に焦点が向いていく。
ご飯だったら・・・、コスメだったら・・・、漫画だったら・・・
それぞれ領域別にマイクロインフルエンサーが存在している。
これらのトレンドに共通するのは、
・バーティカル性(垂直性)=広さではなく、深さ
・1次情報=キュレートではなく、実体験に基づく生の情報
が求められるようになってきていること。
そういった情報・個人に権威性が移管されつつある、ということです。
TikTokもYouTubeもインスタもTwitterもSNSを伸ばすときの戦略視点でも「特定テーマ」の情報を挙げ続けて、信用の蓄積と共にカテゴリーキラーを狙う事が正攻法としてもよく語られる。もちろん、人気テーマは飽和しつつあるが、ニッチだろうと世の中に数万人は求めている人がいて、その人たちを囲うだけでも(YouTubeの広告で考えると)10万~20万はさっと稼げてしまう時代という訳です。
2-(3)効率重視×デバイスよりもコンテンツ重視
ちなみに、よく出てくる質問ですが「TV」は死んでいません。いくつかの定量的なデータから見てみます。
Z世代ではファネルにおけるどのフェーズでも「インフルエンサー」の情報が1位でしたが、信頼できる情報では「テレビの情報」が1位。セグメントをぎちぎちに絞るのであれば、やはりインフルエンサーの起用が強いという話になりそうです。
また、NHKが5年置きに行っている生活実態調査の抜粋がこちら。10代20代の半分くらいはテレビを見ていないことになる。※行為者率=15分以上見ていたら「行為者」としてカウントする、という定義
別の観点で、ビデオリサーチ社のサービス利用時間を可視化したグラフがこちら。サービスの利用率を時間帯別に分解したもの。
他世代の一般結果はこちら
解釈の仕方は色々ある気がしますが、事実として、若年層ほどTVの利用時間や利用率は過去と比べれば下がっている。そしてSNSやデジタルサービスは上がっている。ただし、サービス単体で見た時にはまだまだTVのパワーは舐められるものではない、リーチ視点でも情報ソースの権威性としてもまだまだ強いのでは?という話です。
このあたりのトレンド理解を助けるものとして2つの視点も記しておきます。
巷では若者の「タイパ=タイムパフォーマンス(時間対効果)」重視の話が良く流れるようになりましたが、シンプルに可処分時間の奪い合いの中で情報収集も娯楽も行われているので当然効率化が進んでいるということです。
タイパの参考はこちら
さらに、「TVを見たい」という意欲よりも「面白いコンテンツを見たい」という意欲が先に来るので、正直デバイスやメディアが違っていても見られれば良い、という側面もあるのだと考えています。
集客面、リーチ面の話と権利関連の話が入り乱れるので一概に評価できませんが、あらゆるコンテンツが「切り抜き」で流出する時代。余計なCMや煽り演出は切り捨てられ、美味しい部分だけショート動画化されて、TikTokやYouTubeで回っている。数字がついてしまっている実態からもこのあたりは証明されているのではないかと思います。
色々書きましたが、あまりに権威性が分散しすぎた結果、情報を正しく咀嚼できなくなり、キュレーションメディアやセレクトショップのような存在、もっというと雑誌やテレビのようなトラディショナルメディアのパワーが再興するのでは…?みたいなことを思ってたりもする今日この頃です。
ポイント3:消費のドライバーは多角化
「今時の若者はお金を使わない!」という発言も、なんとなく上の世代の方々が口にしがちなフレーズですが、これも少し実態は違うように感じます。
ここでの暫定解は「使うタイミングを絞っているだけで、計画的に散在している」と言った感じでしょうか。
ここ最近「推し活」のような言葉を耳にすることが増えたと思います。これは、現時点で財布のリミッターが外れる最強の要素と言っても過言ではないと思っています。そして単にアイドルや人物・キャラクターを指す言葉としてだけでなく、好きなもの・コトへの熱中が重要性を増しています。これら「推し・好き」の存在は「消費=自己表現の手段」としての側面を強く表していると捉えられるためです。詳しくは、下にある電通デジタル「YNGpot.」が自主調査から発信している記事を読んでいただければと思いますが、
好きなもの=時間やお金を投じているモノ=自分の個性の一部
といった意味を持っているということです。
ソーシャルの世界であらゆる人とつながれる時代に、何者かであることを説明する。その際に「私ってこういう人です」を説明するときのツールとしてこの「好き・推し」がいい働きをしてくれるという訳です。
参考記事はこちら:
「推し」がどの程度Z世代にとって当たり前のものかはこちらの記事をご覧ください。
上記を踏まえつつ、ここ数年の消費トレンドをいくつか…
・計画的な散財
可処分金額の中でどこに集中投下をするのかをしっかり考えています。そのためには無駄な飲み会を断ったり、日々の生活を少しだけ節約したりと努力を怠らない。先ほどの「好き・推し」が分かりやすいですが、旅行や買い物、コンサートなどいろいろな領域でリミッターを外す瞬間をもっています。
後半で説明しますが、この「推し・好き」を企業側が応援してあげるような施策はかなり有効な切り口です。
・世界観や思想への共感
BASEやShopifyなどの登場から、D2Cブームの影響も相まって、強烈な消費やの課題感から生まれたアイテムや、強い思想を伴うブランドが続々と登場しました。「スペックよりもストーリー」と表現されることもありますが、買うことによって「ストーリーや思想をまとえる、語れる良さが明確にある」ものへの注目が高まったように感じます。これによってファストブランドとハイブランドの中間に位置する絶妙なラインのブランドが淘汰されつつも、残るブランドはより強固な存在として成長し続けているように思います。
少し大きめの例になりますが、All Birdsやパタゴニア、無印良品など…バリューチェーン全体でブランドを表現・体現している企業はやはり強いなと感じます。
・応援消費、投げ銭
少し前までは一部の人にのみ楽しまれていた、ライバー市場やクラウドファンディング市場。これもコロナによる巣ごもりや消費縮小をトリガーにしてかなり一般化されたように思います。消費=モノを買う、だけはない、意味の拡張が起こったように思えます。
※ライバー界隈の投げ銭やクラファン界隈の支援者のメイン層はもう少し上の世代
繰り返しになりますが、お金を使わない訳ではなく、狙いを定めて一気に使う傾向が強いという方が正しい解釈かと思います。
参考:理解を深めるための有識者の解説
ざっくりと書いてしまった部分も多いので参考情報として、有識者の方々の解説記事もまとめておきます。社会学的な視点での解説や、当事者目線のリアルな声で説明がなされていますので、気になる方は是非ご覧ください。
若者研究の第一人者でもある原田躍平さんの解説動画
ご本人もZ世代で経営者の大槻さん(FinT)、今瀧さん(僕と私と)が語られている記事
若者リサーチではかなり有名なSHIBUYA109 lab 長田さんとトライバルメディアハウス代表の池田さんの対談記事
デジタルネイティブ世代への注目背景
このパートでは「そもそも何故、Z世代マーケやらデジタルネイティブ世代への対応の文脈が注目されつつあるのか」についてお話しします。
ちょっと前まで大晦日の目玉番組だった「ガキの使いやあらへんで」。この枠が今年は「ダウンタウン VS Z世代」に決まったと、9月頭に発表がありました。
これに限らず、ニュース記事やTwitter上、さらにはTV番組などでも盛んに使われるようになった「Z世代」というキーワード。Googleトレンドの直近5年の推移を見てもこの1-2年で急激に伸びているのが分かるかと思います。
私がデジタルネイティブ世代向けの課題に特化した専門チームを設立したのが2019年ですが、そのだいぶ以前から「若者の〇〇離れ」という言葉は様々な業界で叫ばれてと思います
・若者の保険離れ
・若者の自動車離れ
・若者の酒離れ・・・等のように
ではなぜ、これほどまでに今話題になっているのか。
デジタルトランスフォーメーションの流行
若年層への注目自体は以前からあったものの、本格的に企業側が事業を起こしたり、大きく予算を投下したりするケースは少なかったように感じます。この動きが昨今代わりつつある。この背景には、数年前からバズワードとして定着したキーワード「デジタルトランスフォーメーション(DX)」のトレンドが密接に絡んでいると考えます。
結論から申し上げれば「DX対応とデジタルネイティブ世代への対応は経営戦略・事業戦略のストーリー上相性の良いテーマである」と考えます。
鶏卵のような話ですが、デジタルネイティブ世代をターゲットとしたマーケティング推進や事業開発、サービス開発を行おうとすると必然的にDX推進の道に合流する。入口は違えど、大きく捉えればこれも一つのDXの道である。
もしくは、企業のDX戦略を構想する中で、今までと異なる顧客体験の提供やマーケティングプロセスの変革が強いられる。であるならば、その流れの中で顧客ポートフォリオとして弱かった若年層アプローチにも活用していこう。
こうした考えが大きな戦略を描く中でわかりやすい指針として打ち出しやすい、という側面もあり、これまで以上に市場形成がされているように感じます。※私は前者の思想をクライアントへの説明やセミナーの場でよく話していました
このような流れもあり、デジタルネイティブ世代への対応は経営課題の一つとして語られることも増え、とりわけ重要性が増している様相が伺えます。以下に、上記を示す例としていくつか大手企業の発信を並べます。
●三菱UFJ銀行:デジタル活用による若年層獲得の明記
●味の素:Z世代特化型の事業部を新設
●損保ジャパン:デジタル戦略部 基本方針内「デジタルネイティブ向けの商品・サービス開発」
IR内の統合レポート(2020)では下記のような記載が。
このような事例は枚挙にいとまがありません。
これまで「さとり世代」や「ゆとり世代」のように若者のことを指す呼称はいくつも出てきましたが、マーケティング文脈の中でここまでしっかりと戦略に取り込まれつつある状態はそうなかったのではないでしょうか。
デジタルネイティブ市場とビジネス創出
序盤で説明したデジタルネイティブ世代の持つ新しい価値観や、古い慣習の打破を前提としたマーケティング対応は、大手企業の新たなビジネス創造にも一役買っています。
●スマドリ(スマドリ株式会社)
お酒を飲む人も、飲まない人も楽しめるドリンクシーンの多様性に対応したアサヒビールと電通デジタルのJV「スマドリ」は、コミュニケーション領域だけでなく渋谷にコンセプトショップ「スマドリバー」を展開。店内ではアプリで注文、デジタル決済が標準フローに。
●粥粥好日《かゆかゆこうじつ》(味の素×ドットミー)
先ほど紹介した味の素Z世代特化事業部が、創設から1年でリリースしたカップお粥。自社ECで約3カ月間テスト販売を実施(ローンチ時は渋谷スクランブルスクエアでポップアップも実施)。味の素レベルの大企業ながら、事業部化から1年で商品リリースにまでこぎつけているのは本当に凄い…。
●デジホ(第一生命)
ミレニアル世代やZ世代が安心して一歩ふみだせるように応援することをコンセプトにフリーランス向けの所得補償保険や、家事代行費用保険などを商品化。申し込みから給付金の受け取りまで、すべての手続きがスマホ完結のほか、電子マネーでの給付金の受け取りや更なる商品多角化を構想。
●キラキラドンキ(PPIH)
ドン・キホーテに代表される都心のショップがかつてのような尖りを失いマンネリ化してきたところへの新業態。経営層の意見を一蹴しZ世代の声からコンセプト決めや店舗開発、運営を推進。お台場のダイバーシティ内に1店舗目を展開してから人気を博しているようです。
このように、デジタルネイティブ世代の特徴的な価値観や、ライフスタイルの多様化に合わせながら1商品、1事業、さらには1企業として向き合い、世にサービスを創出している事例が続々と増えてきています。
私自身、こうした新しい価値観に合わせたサービスの創出、古い状態のままの商品や体験のアップデートをもっと支援していきたい、そんな思いでこの領域に携わっています。
では、企業側はどのようにアプローチしていくのが良いか。これまでの経験をもとにマーケティング対応のTIPSをお伝えします。
いよいよ本題!!!(前段長くてスミマセン…)
企業側に必要な前準備
ここからは、具体的にどうすればいいの?に応えるお話ができればと思います。大きく、コミュニケーション領域のお話と、事業開発・サービス開発領域の2つの視点でお話ししますが、まずは共通する部分から・・・
大事なポイントはわりとシンプルで、
① ターゲットの声をきちんと知る・聞くために、
② 当事者世代を検討プロセスに巻き込み続けながら、
③ 大人の恣意的な解釈、ビジネス事情をなるべく排除しながら走り切る
を守り切れれば、だいたい良いアウトプットや結果に繋がりました。
これらを実現するためのポイントや、起こりがちな落とし穴について触れていきたいと思います。
まずは何をするにも準備運動的に企業側がやるべきこと。
これからのお話は中規模~大手企業を想定しています。組織の規模や体制によって進め方や時間軸が全く異なると思いますので、念のため断っておきます。
(1)言語を揃える、ニュアンスを理解するための事前リサーチ
このnoteに書いてある内容もそうですが、似たようなテーマ、特定の視点で解説している記事はたくさんあります。少なくとも10記事くらいは読む。
そもそもの生態系や出てくるキーワードが分かっていないと説明されてもピンと来ないことが多くあります。
(2)組織の新卒や若手社員と積極的に話す、ヒアリングをする
お金をかけずに組織のリソースを使うだけでも肌感はつかめます。
(3)チームに若手を必ず入れる
全権限を与える必要はないが、必ず意見を聞ける人間や、チーム内で感覚的なニュアンスや言語の翻訳ができるメンバーを入れる。高年齢メンバーだけでやると恣意的な解釈の混入に気づけないので失敗しやすい。
(4)餅は餅屋に…、エージェンシーにうまく頼る
デジタルネイティブ市場は注目されているのでプレーヤーも増えている。
専門性の違いが若干あるのと、予算感もだいぶ違うので、詳しくは各社に問い合わせて欲しいのですが、ざっと知り得る範囲で専門集団を並べてみます。勝手にポジショニングマップやカオスマップっぽくすると各所から怒られそうなので、テキストで失礼します。
事業会社のマーケ部/宣伝部側に入り、一緒に代理店との連携や調整を支援させていただくようなケースもありますので需要あらばお声掛けください!
それでは、以下ズラリ!
<総合代理店系>特化型チーム
・電通若者研究部(ワカモン)
・電通デジタル YNGpot.(ヤングポット)
・博報堂若者研究所
・ADK ワカスタ
・サイバーエージェント 次世代生活研究所
このあたりの会社は大体のことはできるはずなので、あえて細かいことは記載しません。古巣電通デジタルYNGpot.もごひいきに!
<総合代理店寄り(複数領域カバー)>
・For you inc.
企画~キャスティング~制作まで1社で完結、自社でタレントマネジメントも行っている
・トライバルメディアハウス
特にファンマーケや熱狂マーケに強い印象
・僕と私と ※代表Z世代
ブランド/プロモーション/コンテンツ等幅広い「企画屋」集団
<SNSマーケ寄り>
・テテマーチ
SNS企画・運用/デジタルプロモーション企画/コンテンツ開発/SNS領域におけるよろず屋な印象
・FinT ※代表Z世代
SNS企画・運用/コンテンツ開発/自社メディアも運営しており、その数字に裏付けられたディテールの運用ノウハウを豊富に蓄積。
・Natee
TikTokを中心に、ショート動画全般のプロモーション企画/キャスティング/データドリブンなアプローチが特徴
・TORIHADA
TikToker事務所としては最大手?のPPP STUDIOも運営しながら、TikTokソリューションを提供
・Pien
元VAZの森さんの会社/SNS企画・運用/デジタルプロモ企画/コンテンツ開発
<自社ドメイン×若者>
・SHIBUYA109 lab
店舗やアパレル、webメディアを組み合わせたソリューションを提供
・MERYZ世代研究所
若年女性に強みを持ち、メディアソリューション、コンテンツ開発などを提供
他にも、まだまだ多くの企業内に専門組織があったり、デジタルネイティブ世代に強いエージェンシーが存在したりすると思います。(記載が漏れてしまっている企業さま、すみません。繋がらせてください!)
私、もしくはmanage4では、競合というより、共闘してこの市場を盛り上げていきたい気持ちです。こんな会社もあるよ!我々もこんな取り組みしています!などのご連絡も、どしどしお待ちしております。
では、ここから実際にコミュニケーションや事業開発の中で、どういったポイントに気を付けるべきかについて説明します。
大前提、これやっておけばOKです!みたいな絶対解は存在しないのと、実際には企業ごとの課題感や状況に合わせてプランニングされるものなので、参考にする視点として活用ください。
「推し・好き」に寄り添うトライブマーケティング/スモールマス戦略
最初にお話しするのが「トライブマーケティング」「スモールマス」のアプローチです。これは事業開発/商品開発にせよ、コミュニケーションの話にせよ、どちらにも使える視点です。
これまでの説明でも触れてきた通り、現時点では「推し・好き」の文脈に寄り添うことが最も状況に左右されにくく、効果が出やすい切り口の一つだと思っています。
厄介なのは、この「推し・好き」のコミュニティは非常に分散傾向にあるということ。昔のようにTVで流行っている何かを、みんなが追っかける時代は終わりつつある(マスパワーを持つコンテンツも当然あるが)。
アニメ好き、アイドル好き、ゲーム好き、2.5次元好き、ファッション好き、サウナ好き、筋トレ好き、お酒好き、美食好き・・・・
何でもいいのですがカテゴリが散る。さらにその中でも、
アニメ:ヒーローもの(特に●●)/日常系(特に●●)、
アイドル:K-POP(の中でも●●)/ジャニーズ(の中でも●●)/坂道系(の中でも●●)のようにコミュニティが超分散している時代だと捉えています。
そして、この「推し」や「好き」を抱えている傾向がより強いのが若年層という訳です。この後紹介する話は、一般的には世代関係なく語られる話ですが、現代において若者の含有率が高いという点でリーチしやすい手法だと思ってください。
参考記事:Z世代の8割はオタク活動中(22年7月SHIBUYA109lab 調べ)
この「推し」や「好き」で繋がる集団を狙いに行くターゲティング手法が「トライブマーケティング」と呼ばれていたりします。
※最初に言ったのは博報堂…?
従来型の大きなワンメッセージをドーン!と発信するだけでなく、いろいろなトライブに合わせて、多文脈・多メッセージで発信しようというもの。
1点留意ポイントは、KOL(Key Opinio Leader)やトライブリーダーに語ってもらう、というような内容も含みますが、インフルエンサーマーケティング的な話に留まらず市場の捉え方として受け取ってください。
また、ニーズが細分化されまくっている状況下で、マスとは呼べないが熱量高く消費をしている、強いニーズがある特定領域に狭く深くアプローチする「スモールマスマーケティング」も近しいアプローチだと考えています。※花王が提唱した概念
ちなみに花王は、ソーシャルリスニングから特定のユーザーの発話、キーワードの使われ方、ユーザーとブランドの関係等を注視することで、潜在的なターゲットセグメントを発見するアプローチをとっています。
いずれも共通するのは、「20代女性×コスメ好き×ファッション意識高」のような従来の「デモグラフィックデータ×サイコグラフィックデータ」の粒度だけでは市場を捉えづらくなっているという事です。広く万遍ないメッセージが届きづらくなっている昨今において、こういったアプローチは、消費者も企業側もwin-winになりやすいのが特徴です。いくつか事例を見てみます。
●カネボウ「KATE」
最近リップモンスターで快進撃中のKATE。実はリップモンスター以外にも特定ゾーンに深くアプローチしている取り組みが!
イラストレーターの米山舞さん起用のド派手PKG(KVかっこよすぎ!)
欲の解放をテーマに、人気イラストレーターとのタイアップ商品を展開。楽曲は呪術廻戦のOPで一躍有名になったEve書下ろし楽曲を使用。
他にもいろいろやっています。
オンライン数量限定で、ヱヴァンゲリヲンの人気キャラ「綾波レイ」とコラボした口紅を発売。「欲」はオフラインで売っているものの、これはオンライン専売。
そもそも、スモールマスは本来EC限定でやるものが多い(ニキビ隠し専用コンシーラーとか)。これは全国の棚をとれるほどのパイではない≒スモールマスであることに起因しています。
また、テストマーケティング的な意味合いを含むことも多いので、いきなり大量ロットで製造せずにECで様子を見る、みたいな視点もあるでしょう。
さらに、2018年にはオタク市場における聖典「コミケ(コミックマーケット)」に初出店。イラストレーターのTCBさんと共同で、オリジナルキャラを制作。さらに、レイヤーさん達にも楽しんでもらえるようにメイクブックが配る施策を展開。コミケゾーンなんて普通に考えたら絶対狙いましょうとならなそうな分野にも潜在的なメイクニーズを見つけて、新しい提案を積極的に行っていた。
余談ですが…、私がもう1社所属しているクリエイターの物販やIPプロモーションを行っている会社でも、イラストレーターやボカロPさんのアイテムが数日で即完する現象が何度も起きています。そして地方Z世代が顧客の中心だったりします。推しパワー恐るべし…!
参考:先日クラウドファンディングを実施した時のもの。達成率1057%…!
●サントリー「オランジーナ」「TANSANG4」
CMも放映していたオランジーナは、全然知らない所でこんな取り組みも。
少し古い事例(2018-19)ですが、人気舞台A3に協賛し、フォトスポットや劇場内での体験ブース、オリジナルの映像番組を用意するなど、ファンが歓喜する体験を用意。公式Twitterへのリプライでもブランド好意が上がっている様子が散見されました。「推し活」をエンパワメントする系は特にわかりやすく喜ばれるのではないかと思っています。
参考までに、2020年初旬頃、当時私が担当していた某ポイントサービスでは若年層の会員獲得に苦戦していました。トライブマーケティングの観点で提案を行い、オランジーナのように2.5次元とのタイアップイベントを実施。ファンの皆さんが喜んでくれそうな体験を企画・展開したところ、過去デジタル施策のCPAを半額まで下げる結果となりクライアントが驚いていたのを覚えています。(ほかにも色々仕込んでいたのですが、同時期にコロナが始まりほとんど実施できず…)
2.5次元は今もなお絶賛盛り上がっていて、市場やお金の動きも活発化しています。
●サントリー「ZONe」
エナジードリンクのZONeは飲むものを無敵のゾーンへ導く、というコンセプトのもと、クリエイター領域にかなり深くアプローチし続けている。絵師さん、アニメクリエイター、トラックメイカー、そして学生クリエイター(デザイン学校)とタイアップし続け独自の世界観を構築。
比較的リリース初期から投資し続け、ブランドイメージもその領域に振っている印象があります。レットブルがエクストリームスポーツに協賛し続けているのと近しいアプローチかもしれないですね。
●大塚製薬「イオンウォーター」
サウナ好きの皆さん!これまでの「推し」とは毛色が若干違うのと、若者に限った話ではないですがいつのまにか銭湯やサウナ施設がイオンウォーターにハックされていますよね。これも「好き」に入り込むわかりやすい例だと思うのです。1500店以上のサウナ施設で販売されているらしく、一過性のキャンペーンで終わりではなく、長期的なブランド資産としても活きるポテンシャルを占めているのではないかと考えます…!
尚、私もサウナ好きなので気になりまして調べたのですが、サウナイキタイに登録されているサウナ施設数は10,043店(2022年6月時点)の模様。結構な頻度でイオンウォーター見ますよね。「オロポ」ブームによるオリジナルのポカリも合わせると20-30%くらいのシェアはあるのでは?と思います。
こうしてみると、消費財&2次元、2.5次元多めになってしまいましたが…
いわゆる10年前のオタク文化からよりカジュアルなものとして「推し」領域はどんどん広がっています。他にも当てはまりそうな事例があれば是非教えてください!
ちなみに、推し切り口で相性のいいカテゴリはこのあたりみたいです。
これらのアプローチにおける留意点を2つほど。
安易にコラボすればいいという話でもなく、トライブ内の生態系・お作法・ツボをしっかりリサーチしたうえで(下手に絡むと消費者の方が詳しいので火傷する)、日ごろの推しへの活動をエンパワメントしたり、応援したりするような体験の提供が喜ばれる
リアル接点(イベント等)だけで実施すると、コストに対してリーチ規模が見合わなくなりがちなので、デジタル上でその場にいないトライブの人達にも体験してもらえる設計が必要(2.5次元の話でいうと、特典映像配信は特定条件をクリアした人全員が見られるようにデジタルで行うような)
尚、こうした市場の細分化傾向は新規ビジネス領域にも影響しています。大きくはないが、熱狂がある市場。大きくはないが、非常に強い課題意識が確かに存在している市場。大手の優先度的にはだいぶ下の方にあり、参入してこないであろう市場。短期でこれらのニーズに応えて1~10億円規模のビジネスを回す「スモールビジネス(通称スモビジ)」が増えてきている点からも納得がいきます。
スモールマスも、束ねるとミドルマスになる
単一トライブ、スモールマスも束ねればある程度の規模感が出るため、ミドルマス化しリーチの観点も一定カバーできる。ソーシャル上の情報発信だけでなく、TVCMをはじめとしたマスコミュニケーションまで昇華できるとも考えられます。
ただ、CMレベルになると対象とする年代を絞りすぎるのも非効率だったりするので、そこは注意が必要です。一般的に言われているトライブマーケティングはこっちに近いかもしれません。それらの例もいくつか。
●カゴメ GO!ME!
令和に突入し、KAGOMEのリブランディングシーンとして、次世代を担う若者をスポンサードするプロジェクトを展開。
動画クリエイター:ねお、ロックバンド:KEYTALK、声優:飯田里穂、アニメーター:新井陽次郎のMIX感あふれる布陣。
●サントリー食品「ペプシ」
TikTokをはじめSNSで話題の新進気鋭クリエイターを広告塔に、彼らを応援するファンの方々も巻き込んだキャンペーン。集まったLikeが報酬に直結し、上位者の映像作品がCM放映権を手にするというもの。
ケチャップ、指男、会社員のチバ、たかだべあ、おめがシスターズ、Kei Stories、大川優介、ローカルカンピオーネ、Kevin’s English Roomらが参加。
●Honda「VEZEL」
若年層向けオンリーではないので広めに集められているが、親和性の高いゾーンも盛り盛り。キャスト各々のファンの目線が集まるというもの。
玉城ティナ、モーリー・ロバートソン、アントニー、クララ・ブラン、ミチ、井浦新、よしあき、あさぎーにょ、布川敏和、る鹿、Licaxxx、エバンズ・マラカイ、ロイ、たまねぎ
ちなみにCMキャストと別に、起用音楽面でも特徴が。VEZELは2016年からSuchmos→SIRUP→King Gnu→藤井風とブレイク直前(既に売れてるが)の新進気鋭アーティストを起用し続けており、CMと別にVEZEL LIVEという独自音楽企画を展開していたりする。これもこれで音楽トライブ向けアプローチと言えると思います。
アーティトのMatt、モデルのクリス-ウェブ佳子、料理研究家のリュウジ、タレントの重盛さと美と異なる領域のトライブリーダー的存在をアンバサダーとして起用。ビューティー、インテリア、料理、ファッションそれぞれのカテゴリ別の利用例を提示。
あくまで、数ある切り口の1つでしかないですが空前絶後の推しブーム、好きや趣味の価値が高まっているこのタイミングに、トライブマーケティングやスモールマスの発想はデジタルネイティブとの接点構築におけるブレイクスルーに繋がり得るかもしれません。
✕認知→興味、〇興味=認知
さて、ここではトライブマーケティングやスモールマスの話にも通ずる、ファネル視点での補足をします。何事も最短ルートで検討と意思決定を繰り返しているデジタルネイティブ世代にとって、いわゆるファネル構造の話も従来のそれとは変わっている。
TikTok for Buisnessの2021年レポートでは「興味突破」というキーワードが用いられ、コンバージョンに最も相関するのは「興味」フェーズであることが語られていました。
昨年の日経TRENDYとクロストレンドが発表した『ヒット商品ベスト30』における第1位が、もはやブランド名ではなく「TikTok売れ」だったことは記憶に新しい。ショート動画様式の中で、興味を引くアイキャッチやトンマナで、細かな商品・サービスの説明、ベネフィットの解説まで一気に行われることがCVに直結する構造として成立している結果だと言える。
さらに違った切り口も。2019年にGoogleが提唱した「パルス消費」のモデルがこちら。デジタル時代の情報取得と購買の関係を説明したものである。
従来のAIDMAモデルを前提とした、段階的に購入への距離を縮めていくプロセスから、パルス(電流や脈拍)のように、ピコン!ときたら即コンバージョンするような購入ケースが増えているというお話。
そして、このパルス消費を引き起こすトリガー要素を、Googleは下記のように説明しています。
特に「お得」「興味をそそる」「正解に早くたどり着ける」要素が個人的に効きやすいと思います。
このような消費プロセスのトレンドと合わせて、そもそも情報氾濫禍にいるデジタルネイティブは興味のないものを遮断している(せざるを得ない)ことを認識しておくべきです。
それらを組み合わせると、現在においては「認知と興味はほぼ同時に起こる」「興味の入り口を設けられなければ認知されない」という事態になってくる訳です。
では興味を持ってもらうために気を付けるべきことは何か。
検討の際に、チェックポイント代わりに使用してみてください。
消費者の「好き」や「役立つ」に寄り添えているか
見ざるを得ない「言い訳(例:好きや推し)」や、さきほどのパルスセン サーの6つのポイントを満たしているか何を言うか、だけでなく、誰が言うか(適切な話者)にも気を配れているか
フォロワー数偏重ではなく、トライブリーダーやエンゲージメントを意識できているかインフルエンサー起用時に「本人の言葉」で語ってもらえているか
ギチギチに加筆し倒した、企業言葉の台本を押し付けてないか単純にCMや動画素材の横流しになってしまっていないか
メディア特性を活かしたギミックや体験、キャストが盛り込まれているかシェアしたくなる、乗っかりたくなるような余白があるか
真似できる・アレンジできる・チョイ足しできる・音はめできる、などのユーザーが遊べる余白はあるか
個人的これから来るんじゃないかマーケトレンド6選
さて、このパートの最後に、昨今のショート動画ブームやSNSの流れから見る、次に来そうなマーケのやり口(無知なだけでもう実践されているかも)について個人的な思惑を並べさせていただきます。
① メディア横断型のショート動画統合プロモーション
TikTok×リール×LINE VOOM×YouTube Shortsの「個のパワー最大活用」と「効果や影響の統合分析」。特に後者はまだ対応できていない気がする。初代インスタグラマーはYouTubeやTikTokの波に対応できなかったが、ショート動画界隈は横展がめちゃくちゃ利く。一方で、今の事業者サイドはインスタメイン、TikTokメイン、YouTubeメインのように別れがちになっていて総合プロデュースできるプレイヤーは少ない印象です(対応せねば・・・!)。
今のところUI自体は似たような感じだが、アルゴリズム、拡散性、フォローフォロワーの関係などもサービスごとに異なる点が多いので、適性を活かしながら全体をハックできるとTVに匹敵するパワーも絵空事ではない気がする…!
② インフォマ・プロダクトプレイスメント × ソシャドラ・ショート動画
テレビにおけるCM以外の代表的なアプローチとして、インフォマーシャル※1やプロダクトプレイスメント※2の2つの手法があります。これも令和スタイルにアップデートされていくんじゃないかと考えています。
※1インフォマーシャル:番組の途中で番組連動のガッツリ解説型CMみたいなのが流れるコンテンツフォーマット
※2プロダクトプレイスメント:コンテンツや映像の中に、しれっと、かつ、しっかりブランドがそのままの形で入り込んでいる訴求方法
例:ヒルナンデス中のインフォマーシャル
例:アニメシーン内のプロダクトプレイスメント
そして、SNSの台頭とともに徐々に一般化してきた短尺(2、3分~10分くらい)、SNSドリブンなコンテンツフォーマット「ソーシャルドラマ(通称ソシャドラ)」
●ソフトバンク「ワイモバイル」
2018年の取り組みですが、ソシャドラの先駆け的存在
●POPTEEN×TikTokドラマから、商品開発・販売
●アサヒ飲料「放課後カルピス」
現在は契約切れか何かでページなくなってる…?ようですが、第1話は100万再生いった模様
脱線するが…、21年後半には「にじさんじ」とのコラボ施策もやられていたみたいですね。旬なトライブにもしっかりアプローチされてらっしゃる。
●ソニーミュージックがソシャドラ専用アカウントを設立
と、こんな感じで2018年あたりに流行るか!?と思ったが爆発はせず、再びじわじわきつつあるように思えるソーシャルドラマ。
短いが注視される作品の中で、特定ブランドが頻度高く登場したり、ストーリーの中で象徴的なシーンで使われたり、モチーフのような存在になっているなど、見せ方はいろいろ工夫できそうです。
またドラマ形式以外のコンテンツも当然増えてきており、従来型のガッツリ企業の人がしゃべるインフォマ形式を別のやり方で取り入れる方法も普通にありそうですよね。コンテンツのトーンに合わせて「ファンである出演者が語る構図」や「博識キャラや解説キャラの人が力説する」ようなインフォマは、むしろ従来のものより抵抗なく観られるような気がしています。
※寸劇形式だったり、台本を読ませる形ではなく、クリエイターの言葉で語ってもらう前提になります
最後に、わたしの個人的推しTikTokerでショートドラマを脚本~演者~監督まで全て行っている「ごっこ倶楽部」を紹介します。短尺のドラマ中にいくつかプロダクトプレイスメントのアプローチが見られます。商品が主役でなく、「コンテンツ」が前提にあるからこそ違和感や嫌悪感なく見られる素敵さがあると思っています。動画を観ていると既に何社かタイアップしているみたいですね。
画像はReFaコラボのもの。
③ ショート動画×デジタルサイネージ・VISIONの活用
21年の日経トレンディで1位を取った言葉「TikTok売れ」。従来のAIDMAモデルのような段階的なファネルステップを無視した、興味から購入まで一撃で到達するモデルは本当に驚異的だなと感じました。それをリアルチャネルでも再現しようとする取り組みでTikTokマーケに強いTORIHADA社とファミリーマートビジョンの新しい取り組み。
店にあるビジョンでTiKTok流しちゃおうよ、というもの。TikTok売れもECで直ぐ買えるもの以外は、近くの店舗に行く必要があった。そのラストワンマイルを埋めた状態で、TikTok売れを再現できるのかは非常に興味深いですね。一定成果でそう、みたいな話になってくると、イオンやセブン&アイや百貨店、映画館などいろんな流通や館がこぞって真似しそうな気がします。
さて、この取り組み以外にも、街には縦型のサイネージや動画を流せる場がいくつか存在します。
こういう縦型のサイネージ、地味に今の動画フォーマットにも相性良いんじゃないかと思っています。場所によるでしょうし、通勤通学タイミングのような足を止められない状況で相性の良い見せ方を考える必要がある等、工夫ポイントは色々あると思いますが、まだまだ使われていない面にショート動画が進出していくケースは増えていきそうな気がします。
個人的には、バス停やエレベーターなど待ち時間が発生する場所のほうが相性良いんじゃないかと思っています。
(エレベータは動画いけるが、バス停の広告は恐らくほぼ静止画ですかね)
④ 従業員、営業員のメディア活用、個人のメディア化
InstagramやTikTokでスタイリストさんが個人でアカウントを運用しているのを目にするのは一般的になりました。所属先のブランドではなく、個人のスキルやアウトプットで指名を取り稼ぐ時代に。サロンのスタイリストだけでなく、車のディーラーですら、個人で発信している人から買いたいと指名で連絡が入る時代。あらゆるプロフェッショナルがバイネームで指名されるチャンスを秘めているということです。
この延長で、企業の営業スタッフや販売員も個々人が情報発信を強化し売り上げを伸ばしていくような動きが増えてくると思っています。
美容部員がビューティコンサルタントとしてHow toやTips動画を公開し、オンライン接客の概念を拡張。イエベやブルベ、肌タイプなども個々人が載せながら人に焦点を当てるようにしているのも良いなと思いました。
1年間でほぼ毎日投稿を行いその本数は500本近くになり、フォロワー数は15万4000人まで増加。
可愛いCAがリップシンクやダンスをやっているだけではない!広報部の方が企業の情報発信をしていたり、CSR活動や経営者インタビューなども公開したりと、裏側まで含めてしっかり情報を発信。コロナで弱まってしまった顧客接点を取り戻している。シンプルにこの胆力や着実な努力に敬服!そして社員にスキル移管されて定着している様子も凄い。
↓は有料会員記事ですが、Instagramのリールもうまく活用し、フォロワー数の拡大も同時に達成されていたようです。
⑤ 切り抜き動画ハック型のリーチブースト
YouTubeのコンテンツを中心に、長尺コンテンツを短尺のダイジェスト型や予告型にまとめ上げ、放出し、総リーチ量を増やしている「切り抜き動画」の存在。権利的にあらかじめOKなものはリーチ補完に役立つ。
これまではマス施策展開時にweb動画広告をYouTubeのTrueViewやFaceBook/Instagramなど効率がいいデジタル媒体でリーチ補完用に流していた。そこの予算を一部削り、切り抜きを仕込んで流通させまくる、みたいな補填アプローチも重要になってきそうな予感がします(アルバイト雇うとか)。一方で、番組などの違法切り抜き系も多すぎてどこかで規制入るんじゃないか、とも思っているので、この辺りはプラットフォーマーの動向に注目ですね。※切り抜きハックは、クリエイター側では当たり前のように行われている
⑥ TikTokのビルボード代替
Tani Yuuki、悠里、RIN音、Imaseに代表されるように、既に音楽の流行発信基地の一定部分をTikTokが担っていると思います。ネクストブレイクアーティストしかり、施策に相性の良い音源や、ブランドが最初にコラボするアーティストの探索場所としてTikTokは外せない場所になるでしょう(一部既になっている)。そして今レーベルや事務所側は、ダイヤの原石発掘から自社アーティストをブレイクさせるためにTikTokを血眼になってハックしようとしているのではないかと思います。
事業開発編:重要な5つのポイント
続いて、事業開発編です。ここでのお話は、あくまで「デジタルネイティブ世代」向けに事業開発やサービス開発を行う上でのポイントについて記載します。一般的な「新規事業開発のメソッドや虎の巻」をお求めの方は、それ用の書籍や記事を参照ください。ここでの内容は、どちらかというと、そういったメソッドと併用して取り入れていただくべき内容だと思います。
大手企業の事業開発・サービス開発案件(構想含む)に直近4年間で7件携わりましたがその経験から特に重要だと感じたポイントを先に記載します。
チーム:若手(当事者)and上世代で本気の後見人が揃うこと
アプローチ:新市場×新製品は、必ずアセットありきで考える
参考事例:自社アセットとターゲット世代との接着点の探り方
プロセス:共創=全プロセスにターゲット世代の声を取り込む
社内突破:上申時には、数字と生声と、見て・触れるものを
チーム:若手and本気の後見人が揃うこと
これまで何度か例に出させていただいた、味の素「Z世代事業創造部」の例は、大企業における新規事業展開例の中で多くの企業にとってベンチマークになると考えています。これほど大きな組織で、かつZ世代という領域で、オフィシャルに組織を立ち上げ1年で商品を出すスピード感のやり切り具合を、過去見たことがありませんでした。
これは仮説ですが、チームの立て役者としてリーダーで30代唯一のメンバー「山田さん」の存在が大きかったのではないかと考えます。詳細は記事を読んでいただけたらと思いますが、外資コンサル時代のビジネス分析やM&A/アライアンス実行支援の経験や、それ以前には海外事業開発の経験をされている。その経験と本気で事業を立ち上げようという志に、経営陣の本気の経営戦略が合致した環境下だからこそ、この最速アウトプットに至れたのだと思います。
近しい事例では、精密機器メーカーのキヤノンさんでも・・・
●キヤノンMJ 企業内起業「ichikara Lab」を設立
余談ですが、私の最初のクライアントがキヤノンマーケティングジャパンさんでした。(因果を感じる…)
さて、こうした取り組みは他の企業でも増えてくると思われます。その心としましては、2つの論理がいい具合に交わるためです。
・大企業における若手の退職が増えている/勢いのある若手のガス抜きが必要
・経営戦略上、新しい収益源やデジタルネイティブ向けの新規事業が必要
少し前までは大企業での安全神話や終身雇用が前提になっていたものの、現代においてはそれが崩壊している。そんな中で、ルーチンワークや下積み時代に見切りをつけるケースが増えてきているのだと思います。
こうした背景によって、今後多くの会社で関連企業に出向させたり、新規事業検討に若手を積極登用したりするケースが増えると思いますが、ここでやはり「本気の志を持った、上の立場の存在」がマストになります。
もちろんかなりの経験や素質を持った若手人材も存在すると思いますが、いきなり異動してきた社会人3~5年目だけでは、上を通せる検討深度と材料集めが満足にできづらい。
一方で、仮にこれが達成できたとしても、意思決定層が本気でない場合、上申フローの途中で塩漬けにされるオチが待っている。もしくは、およそ3年置きに発生するジョブローテで担当が変わる、上の人が変わる等の外部要因で話がうやむやになる、みたいな結末を何度か見てきました。
なので、モノがいいかに関わらず、そもそも組織的な制約が結構根深かったりする、というのがトラップだったりします。
アプローチ:新市場×新製品はアセットありきで考える
経営戦略や事業戦略で用いられる「アンゾフの成長マトリクス」というフレームをご存じの方も多いと思います。
デジタルネイティブ世代向けの新規事業や新サービス開発も、このフレームを例に考えると分かりやすいです。
多くの企業の場合、右下:若年層(新市場)に対して、新商品/サービスを作ろう、となることが多いのですが、ここでの注意ポイントは「必ず自社アセットを前提に強い課題の解決や強いニーズの充足ができるか」を強く意識することです。
過去のPJで「事業ドメインは一旦無視して、本当に今の大学生が求めているもの、悩んでいる事から考えたい」という条件で出発したことがありました。結果、複数案の中に意図的に事業シナジーありきのものを忍ばせましたが、最終工程では忍ばせたもの以外は全てドロップになった経験があります。
この他のPJでも、よほど資本に余裕があり、M&Aありきで検討していいものを除けば、ほぼ確実に自社アセット評価時や、答申時に事業シナジー要素や調達部分を刺されるケースが多かったです。顧客視点として思想は素晴らしいのですが、それに寄りすぎても通せないという感じですね。
別のパートでも記載しますが、真っ当にターゲットボリュームや既存商品の単価感、サービスの課金額などを当てはめていくと、わかりやすく稼げそう!とはならない事が多い。そこに加えて、初期から外部調達が多いものや立ち上げにコストがかかるものは、余計に通りづらくなる要素です。ポジティブに見せることにも限界があるので、できるだけネガティブをなくす状態を心掛けるのも重要だったりするわけです。
リスクを下げて行うには、左下の既存製品×新市場(若年層)に近い発想でアプローチする方が望ましいのではないかと考えます。
本来は、モノは全く変えずに、売りに行くセグメントを変えて売り上げを伸ばす、みたいな話なのですが、
ここでの解釈は「既存製品」は、中身は同じでも見せ方を変えられる、もしくは自社バリューチェーンの中でマイナーチェンジ可能なもの、を良しとするという捉え方です。言い換えれば、「今まで近しいものすら作ったことない、まったくの別物でなければOK」といった感じでしょうか。
次のパートでいくつか参考事例を…
参考事例:アセットのズラし方
●江崎グリコ「ギフトポッキー」
国民的お菓子のポッキー。スーパーをはじめ通常接点以外での購入促進やギフトシーンに切り込むために、パッケージや梱包材料を工夫。一部商圏を絞っての展開でしたがSNS上での反応もよく、グッドデザイン賞にも選ばれた商品でした。
●PLUS「COE365」
デザイントーンも良いので是非…
“エコ”と“エモい”を掛け合わせた“エモロジー”をテーマにした文房具を発売。これも「モノ」自体は今まで作っていたものと変わらないと思われます。見せ方やそれと合わせて提供する体験部分でのズラしによって成立しているのではないでしょうか。
●PLAZA×カンロ「EMOTIONAL CANDY」
これはフレーバーも含めて新規要素が高いものかとは思いますが、自社アセットでほぼほぼ完結する内容だからこそチャレンジできたものだと思われます。(デザインや音楽などの仕掛け・体験は別)
以上のように、「新規市場×新規製品」といきなり意気込むのではなく、既存の商品や既存のアセットの中で届けられるものがないか、から出発するもののほうが、突破率が高いのではないかと考えます。
私がいま取り組んでいる金融企業の新サービス開発も、大学と親和性の高い既存商品を出発点に、利便性を高めながら紙ベースでやり取りされていたものをアプリに置き換えるDXプロジェクトとして進行しています。こちらはまもなくリリースを迎えるので、その際にお話しできればと思います。
別のPJで、プロトタイプを作り数百名規模でPoCまで行ったがボツになった事例がありましたが、肌感ではビジネスモデルの根幹になる要素のうち、半分も自社アセットでまかなえていないものは総じて途中で頓挫したように思えます。
プロセス:ターゲット世代の声を取り込む
「ターゲットのことは、きちんとターゲットに聞きながら進めよう」という、こちらは非常にシンプルな話です。 この話の前提として、「共創」という言葉がいい様に使われすぎている印象があります。
実際の所「一緒にアイディエーションをしただけ」のものが非常に多く、その後の過程は大人のほうで責任をもってやりました!系のケースが多いように思います。良くても、インサイト理解時のヒアリングとセットくらい。
これは10社あったら8社くらいは陥ると思いますが、ターゲット当事者の声を聞けない状況下で進めていくと、ほぼ確実に「大人の都合の良い解釈」「ビジネス的な事情による軌道修正」が混入して、もともとあったニュアンスや良さが失われがちです。
そのために、具体化や磨きこみの段階でも、プロセスの随所にターゲットの声を確認できる場を設けておくことが重要です。最近では産学連携が進んでいるケースも増えています。それ以外にも、調査会社やエージェンシーに間に入ってもらい、デジタルネイティブ世代をPJメンバーとして招致したり、一定期間協力メンバーとしてヒアリングに付き合ってもらったり等の環境整備が良いと思います。
ちなみに、コンペティション寄りの形式ですが、ソニーのこういった取り組みも非常に素敵だなと思います。何年にも渡ってやっている点が凄いのと、採用ブランディングにも非常に効きそうな印象です。
●ソニー「Sony Creators Gate 「U24 CO-CHALLENGE」
社内突破:数字と生声と、見て・触れるものを
デジタルネイティブ世代を意識して、サービスや商品を考案すると「今までとは見た目や思想、体験が違うもの」 が生まれます。時には社内で強く信じられていた物事を否定するような文脈になったり、年の離れた上層部の方からは得体のしれないモノとして受け止められるかもしれません。
そのために、 上申時には下記3つを揃えた状態でぶつけることが突破率を上げるための努力として不可欠です。
定量ファクト:事業数字上のシミュレーションや定量的な評価
定性ファクト:ターゲットの生声(インタビュー結果)、もしくは現場にターゲットを連れていく。その場で伝えてもらう。
誰が見てもわかるモノ:コンセプトV、サービスプロトタイプ、新デザイン
特に3つ目も重要で、紙ベースで語るのではなく、なるべくスマホ上で触ってもらったり、実物で見てもらったりしながら世界観を理解してもらうことが重要です。構想Phaseではドキュメントのまとめで終わることが多いですが、初期Phaseでは簡易モックや簡易プロトなど「モノ」に食い込んだ形で終えることにより2nd Phaseへの移行確率を上げられると思っています。
最後に:社会のアップデートを一緒に
ここまで、長文・駄文に付き合っていただきありがとうございました。初noteということで、かなり見苦しい部分や読みづらい部分も多かったと思います。
最後に改めて、私の思いを述べさせていただきます。
繰り返しになりますが、デジタルネイティブ世代への対応によって、古い慣習や価値観をアップデートし、今よりも少し豊かな社会に導いていく。そのためのお手伝いをしていきたいと考えています。
ただし、当然一人では無力な存在ゆえ、多くのパートナーの皆様やクライアント企業様との共闘なくして実践はできないと思っています。
このnoteを読んでいただき、
・何か少しでもビビッと来た方
・シンプルに課題に直面されている方
・同じ領域で戦われている方
・この市場を盛り上げようとコミットされている方
是非是非、情報交換させてください。
また、noteに対するご指摘や、ご意見、違った見解や参考になる事例などコメントもお待ちしていますので、なんでもご連絡ください。
Twitter:syun_shun (情報発信も頑張ってます!)
連絡先:sasaki@manage4.com
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以上、ご一読いただきありがとうございました!
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