アスリーツ
ダヴィンチ」で見つけて、
「あっ。これ、今、ちょうど読みたいやつ!!」と
今まで読んだことがなかった
『バッテリー』で有名なあさのあつこさんの小説を読んだ。
『アスリーツ』
ビームライフル部(射撃部)の女子高生が主人公の話。
息子が高校デビューした部活の話を聞いても、全然ぴんとこなくて
YouTubeで試合の様子を見たりもしたけれど、
それでも、魅力がまだ分からなくて、
「説明書」的なものも苦手なので
私が一番とっつきやすい「小説」の形で読めたらなぁ、、、と薄っすら思っていて
あさのさんのこの小説は、私のニーズを過不足なく満たして下さり・・・
ありがとうございます!!
しゅんの部活の話と
YouTubeで見た映像と
小説の中の話が、どんどん重なっていって
若い子向けの生き生きした文体も
「そんなうまいこといかないでしょ」というような展開も含めて
小説がどんどん面白くなっていく。
教室三部屋分はあるだろう広いスペースに、あのジャケットを身に着けた選手たちがずらりと並んでいる。十メートル先には小さい箱型の標的がやはり等間隔に並んでいた。
BRS40JW ビームライフル少年女子立射四十発競技。
10点の的は僅か一ミリ。
選手の手元のディスプレイには、コンマ一桁での数字が浮かび上がる。
10点の的に中ると、標的のランプが点灯した。
満点の得点は10.9×40、つまり436点。
試合時間、三十分。その間に四十発全てを撃つ。
男子だと、もっと時間も長くて打つ数も多いとしゅんが言っていた。
十メートル先の一ミリの的にあてる・・・
ライフルめちゃめちゃ重いって・・・
それ、、ほぼ不可能ではないですか・・・(-_-)
日常の中にライフルを構え撃つという動作は、まずない。
陸上も水泳も野球もサッカーも、他の競技も、日常の動作、行動と繋がっている。
しかし、ライフル競技は異質だ。日々の通常の動きと明らかに隔たっている。
これも、、しゅんから聞いて驚いたことと重なる。
私は部活は球技だったし、しゅんもずっと剣道をしていて、
これまでずっと「競技」は「動いてなんぼ」だった。
ひょっとしたら「根性」で何とかできる場面もあったかもしれない。
しゅんが
「(これまでと)全然違う・・・」という
「どんだけ”、動かないか ”なんだよ。」と。
初めての世界です。
他の競技なら、少しでも動きやすく、少しでも身体の負荷を減らすべく考案されるだろうが、
ライフルはまるで違う。ここまで、身体を束縛する競技があるだろうか?
大げさに言えば、スポーツへの認識が揺らぐようだった。
より速く、より強く、より高く、より遠くを目指すのが競技だと思ってきた。
それは、間違っていない。大半のスポーツがそうなのだ。
射撃は違う。
戦うべき相手は外より内にいる。そんな気がしてならない。
十メートル先の直径一ミリの的を射る。そのためには、身体をどう動かすかではなく、
どう静止させるかが要となるのだ。
鎧みたいなジャケットを着ている選手たち
試合会場には音楽が流れている、そんな映像を見たけれど、
この前初めて試合を経験したしゅんは、
・・・そんなだった と言う。
剣道の試合とは全然違って、開会式で
長々と正座してお偉いさんたちの話を聞くこともなく、合同稽古みたいなものない。
試合中も音楽が流れていると・・・
自分の持ち時間は、銃を置いても、何か飲んだりしてもいいのだそう。
射撃の基本姿勢は固定だ。もっとも安定した姿勢をどう保つか。
少しでも速く、少しでも遠くに、どれほど柔軟に強靭にしなやかに身体が動くか。動かせるか。それが勝敗の分かれ目となる‐ ほとんどの競技が是とする理屈が、射撃には通用しない。
静止、固定、集中。
立ち位置からほとんど動くことなく、一ミリの的を狙って四十発を撃つ。
徹底的に一人。どこまでも一人。
しゅんに言わせると、
ここで勝つには
もう、「努力」 とか関係なくて、そもそも「センス」なのだと。
だとしたら、この小説は、初めての試合で全国大会出場、その後オリンピックへの展開の
「そんなうまくいくわけないがな!!」の架空の女の子の話ではなく、
この話は
残酷だけど、
そもそも才能なんです、センスなんです、努力とか「好き!!」ではどうにも・・・という
「現実」をなのかも。
しゅんが始めた新しいこと
ビームライフルに興味を持ちたいという動機で読んでみたんだけど、
ライフルとは関係ない部分で
この小説で、私がぐっときたところをひとつ。
主人公沙耶は、描写からいって、かわいいのにそれに自覚がない子。
運動神経もいい。多分、何やってもよくできそうな子。
彼女を射撃部に誘ったのが親友の花奈。
この子も描写からいって、かわいいし、明るいし、派手で人気者のイメージ。
二人のも超進学校に通う頭のいい女子たち。
女子高生たちの部活の中で、嫉妬、いじめ、人間関係も変わっていくのだが。
沙耶について
沙耶は自分のどこかに頑なな硬い部分があると知っている。
小さいころ、可愛げないとよく、言われた。他人と親しく交わるより、独りが好きだった。
―中略―
わたしは、あまり他人に好かれない者なのだと。
花奈といると、よく笑えた。おかしてくおもしろくて笑えた。けれど、人見知りや人付き合いの不器用さが直ったわけではない。自分の中の頑なな場所が柔らかく耕されたわけではないのだ。
紅実子(先輩)たちが花奈をちゃん付けで、沙耶を苗字で呼ぶのも、おそらく纏う雰囲気のせいだろう。
ここの人間描写上手い!!
美人で頭が良くてとびぬけてライフル競技の才能がある非の打ちどころのない女の子
彼女が、先輩から、ちゃん付けで呼ばれてない ということをうっすら気にしていること
他人に好かれないと自分で思っていること。
そして、ここには特に描かれてないけれど
彼女自身は自分のライフルの才能をはっきり自覚したと思う。
で、周りの人間関係がどうあれ、一番いい選択をして、物語は終わる。
「これ、読みやすいから読んでみ。で、読んだ上で、喋ろ~ 」としゅんに言ったけど
「そんな(一発目で全国大会とか上手くいくとか)都合のいい話、大嫌い!! 」ってさ(^^;)
彼は、日曜日、試合で遠くまで行くとのこと。
私は仕事。
時間が合ったら、帰りに駅で待ち合わせしよう。