読書感想文 遠隔操作
#わたしの本棚
米国のミステリー作家ジェフリー・ディーヴァーの小説「スティール・キス」を読んだ。脊椎損傷の犯罪学者リンカーン・ライムのシリーズ十二作目だ。
ライムが初めて登場する「ボーン・コレクター」という20年以上前の作品は、映画になり、白人のライムを黒人俳優のデンゼル・ワシントンが演じて話題になった。残念ながら映画の方はシリーズ化しなかった。
「スティール・キス」は通行人がエスカレーターの誤作動で、乗降板の終点の開いた穴に落ち、歯車に巻き込まれてじわじわ死んでいくところからはじまる。犯人は電子制御付きの電気、ガス調理器具や乗用車などを遠隔操作で武器に変えてターゲットを何人も殺していくのだ。
IoT(モノのインターネット)という言葉が広まったころ、個人情報が盗まれたり、車が盗難にあったりする危険性について議論があったのを覚えている。
パンデミックのさなか、新聞に、サイバー攻撃が急増しており、スマート家電の不具合も報告されているという記事があった。発信元は海外のサーバーを複数経由しており、特定できていない。今のところ、家電が人を襲ったという情報はない。
どの家庭にも便利なスマート家電がいくつかあるだろう。我が家には、アイホンで操作する調理器や掃除機がある。セキュリティはユーザーの責任か、製造会社の責任なのか。本のストーリー展開はともかく、ありうる話として読めるのだ。読み進む間ずっと、遠隔操作されているかのように首の後ろがザワザワしていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?