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身元保証に関する法律

医療機関や介護施設等に入る際の費用の支払いを保証する「身元保証サービス」。身元保証サービスってどういう法律に基づいたサービスなのかな?と気になったので、調べてみました。

入所や入院等の際に保証人等が求められますが、法律で明文化されている「保証人」「連帯保証人」「身元引受人」は次のとおりのようです。今回は、身元保証に関する法律をピックアップしてみます。内閣府HPにあった資料(https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2016/225/doc/20160614_shiryou2_2_2.pdf)を参考に、条文は最新のものを記載してみました。

保証人

(保証人の責任等)
第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

(催告の抗弁)
第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁)
第453条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

(催告の抗弁及び検索の抗弁の効果)
第455条 第452条又は第453条の規定により保証人の請求又は証明があったにもかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。

民法

要約すると、
・債務者が債務を履行しない時にその履行の責任を負う。
・ただし、保証人はまず債務者に請求するよう求めることができる(催告の抗弁)。
・また、債務者に弁済するだけの資力があり、執行が容易であると証明した時は、債務者の財産から弁済をする(検索の抗弁)。

連帯保証人

(連帯保証の場合の特則)
第454条 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前2条(452条:催告の抗弁・453条:検索の抗弁)の権利を有しない。

民法

ざっくり訳:
債務者が返済しない時に返済する責任を追うのが保証人ですが、保証人は返済を迫られても「それ、先に債務者に言ってよー」と言える訳で、債務者が返済できるようなら債務者から返してもらえるよ、という訳です。

ただ、連帯保証人になった場合は、「先に債務者に言ってよー」と言うこともできず、債務者が返済能力があった場合に「債務者から返してもらってよー」ということもできません。

(個人根保証契約の保証人の責任等)
第465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

※改正民法

身元引受人(身元保証に関する法律)

身元保証に関する法律(「身元保証法」)は、全6条の法律で、昭和8年(1933年)4月1日に公布されたようです。内容も就職に関するような内容になっています。根拠法令として90年以上経っているのですね。身元保証契約は、期間を定めなかったときは3年、期間を定めても最長5年までと定められています。

身元保証に関する法律(第1条~第6条)の内容
①期間の定めのない身元保証契約は、成立の日から3年間有効とする。ただし、商工業見習者の身元保証契約は5年間有効とする。
②身元保証契約の期間は5年を超えてはならない。5年を超えた契約は5年に短縮する。更新することができるが、更新した時から5年を超えてはならない。
③次のような場合は、使用者は身元保証人に遅滞なく通知しなければならない。
・ 労働者に業務上不適任または不誠実な行為があり、身元保証人の責任となるような問題を引き起こすおそれがあることを知ったとき。
・ 使用者が労働者の職務や勤務地を変更したために身元保証人の責任が重くなる可能性が生じたり、身元保証人が労働者を監督することが難しくなるとき。
④身元保証人は上記の通知を受けた場合、または自らその事実を知った場合には、将来に向けて契約の解除をすることができる。
⑤裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任およびその金額を定めるとき、労働者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由およびその際の注意の程度、労働者の職務または身上の変化、その他一切の事情を照らし合わせて判断する。
⑥この法律の規定に違反する特約で、身元保証人に不利益なものはすべて無効とする。

身元保証に関する法律

高齢者等終身サポート事業のニーズの増加が今後見込まれる中で、業務の内容が金融庁・消費者庁・総務省・法務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省と幅広い分野にまたがっており、指導監督に当たる行政機関が明確ではないという問題があります。事業者もさまざま業種から出現(?)している状態です。
病院・介護施設は身元保証人がいないことを理由に、入院・入所等を拒む等の取扱いを行うことのないよう関係各省より指導されていますが、実際問題難しい部分もあると思われます。引き続き、動向を見守りたいと思います。


参考資料:
「身元保証」や 「お亡くなりになられた後」を 支援するサービスの契約を お考えのみなさまへ(消費者庁)

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_018/pdf/caution_018_180905_0001.pdf

身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン及び事例集(厚生労働省)

働く上で知っておきたいこと(厚生労働省)
https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/var/rev0/0115/1050/201641311104.pdf


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終活ライターみん
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