夜の海

真っ暗な闇に砂浜は塗られてしまった
そのなかで しずかに歌うような
波音ばかりが響いていた
しずかな しずかな夜の海

海の水面みなもを 月が
子を寝かしつける母親のような
あたたかい慈愛に満ちた眼差しで見つめ
海はその眼差しに応えるように光っていた

私は砂浜の上に坐り込んでいた
私は私の行く末を憂い
暗い気持でここにやって来たが

ひとつの絵画のような神秘に溢れた
この夜の海を見つめていると
暗い気持も とろとろと溶け出すようであった


(2024.9.8)

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