第21回 姉の死、そしてもう一人の親友との別れ
藤原実方の娘と月夜の今生の別れをしてまもなく、ついに香子の病身だった姉は亡くなります。推定年齢香子26歳、姉27歳。『源氏物語』宇治十帖の大君も25歳で「ものの枯れゆくように亡くなった」とあります。一方、自分を重ねた中の君は「明るくて可憐」とちょっと自分に甘い?
「宇治十帖」での、世渡りの下手な父親と二人姉妹のひっそりとした暮らしはまさに自分たちを反映させたのでしょう。
更に追い打つ様に、香子のたった一人残された親友(従姉)も香子の元を去ります。父親の平維将が肥前の国司に任じられ一家で向かったのです。実方の娘は陸奥へ、維将の娘は肥前に向かいます。
そして惟将の娘は現地で結婚して娘を儲けたものの、結局3年ほどで病死してしまいます。やっぱり今生の別れとなったのでした。
この娘は成長して、やがて祖父母と一緒に肥前から帰ってきます。香子はそれを「玉鬘」の投影したのではないでしょうか?
もともと、夕顔の遺児玉鬘がなんでわざわざ肥前に行く必要があるのか?そんな事が論じられたそうです。
事実として亡くなった小夜姫(拙著『源氏物語誕生』での名)の忘れ形見として知保姫(同)を見た香子は何かインスピレーションを感じたでしょう。夕顔は亡くなっても玉鬘として生き返る、と?