カルシウム拮抗薬で薬剤性パーキンソニズムがおこるの??~【Review】CCBと薬剤性パーキンソニズムの関連~
この記事は主に医療従事者を読者の対象として想定しています。専門用語の解説などがなされていない箇所がございますが、ご了承ください。なおこの記事情報は最新の医学情報に照らし合わせて随時アップデートしていきます。(最終更新2017年1月29日)
薬剤性パーキンソニズムというと、強力なドパミン受容体遮断作用を有する抗精神病薬が有名ですが、その臨床症状は、特発性パーキンソン病と非常に類似しており、しばしば誤診されていると言われています。
(Mov Disord. 2008 Feb 15;23(3):401-4. PMID: 18067180)
そのため、薬剤性パーキンソンニズムの正確な有病割合やその発症率はあまり明確ではないようです。しかしながら、いくつかの疫学的研究では、パーキンソニズムの原因として薬剤性が第2位に挙げられています。
(Mov Disord. 2003 Mar;18(3):267-74. PMID: 12621629)
(Mov Disord. 2006 Jun;21(6):800-8. PMID: 16482566)
なお、50〜89歳の男性および女性における運動障害の、実に5分の1が薬剤性であるとの指摘もあります。
(Lancet Neurol. 2005 Dec;4(12):815-20. PMID: 16297839)
薬剤性パーキンソニズムのリスクファクターとして最も明らかなのは年齢であり、また性別では男性に比べて女性でリスクが高いことが示唆されています。これはエストロゲンがドーパミン受容体の発現を抑制に関連しているとことが原因だと考えられています。
(Am J Med. 1995 Jul;99(1):48-54. PMID: 7598142)
(Arch Intern Med. 1989 Nov;149(11):2486-92. PMID: 2684075)
(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1988 Jun;51(6):850-4. PMID: 2900293)
また、ドーパミン受容体遮断薬を服用している患者のすべてがパーキンソニズムを発症するわけではないために、遺伝的要因も発症に関与していると考えられています。
(Mov Disord. 1989;4(2):121-8. PMID: 2567491)
抗精神病薬は、薬剤性パーキンソニズムの最も一般的な原因ですが、一部の消化管胃腸運動促進薬や抗てんかん薬、そしてカルシウム拮抗薬でも薬剤性パーキンソニズムを起こし得ると言われています。(図1)
(図1)薬剤性パーキンソニズムを起こし得る主な原因薬剤(J Clin Neurol. 2012 Mar; 8(1): 15–21.より引用)
カルシウム拮抗薬とは個人的には少々意外でしたが、これは特に片頭痛予防に用いる薬剤のようです。
(J Clin Neurol. 2012 Mar;8(1):15-21.PMID: 22523509)
確かにロメリジンの添付文書には「パーキンソニズムの患者」が慎重投与となっており、副作用に錐体外路症状が挙げられています。しかしながら…
実はアムロジピンの添付文書にも、副作用の項目に錐体外路症状の記載がしっかりあるんです。
薬剤性パーキンソニズムは、原因薬剤を中止することで、多くの場合、可逆的ではありますが、症状が完全に解消するには数カ月かかることもあり、一部の患者ではそれが長期間持続することさえあると言われています。
(Postgrad Med J. 2009 Jun;85(1004):322-6. PMID: 19528308)
アムロジピンなど、カルシウム拮抗薬でも降圧薬として用いる薬剤は、プライマリ・ケアの領域でも使用頻度が非常に高く、長期間の投与が必要となるため、もし仮に薬剤性パーキンソニズムが誘発されるのだとしたら、これはなかなか大きな問題だと思います。本当にカルシウム拮抗薬で薬剤性パーキンソニズムは発症しえるのでしょうか。この記事ではカルシウム拮抗薬と薬剤性パーキンソニズムについてエビデンスレビューを行いました。あらためて調べてみると、少々意外な事実?が浮き彫りとなってきましたよ。
【目次】
・[カルシウム拮抗薬による薬剤性パーキンソニズムの特長]
・[カルシウム拮抗薬とパーキンソニズムの関連]
・[メタ分析ではどうなっている?]
・[まとめ]
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