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認知症患者の平均余命と施設入所までの時間~地理的な異質性のメカニズムとリードタイムバイアス

 認知症は、高齢者における身体機能の障害介護依存死亡の主要因であり、高齢化に伴い有病割合も増加傾向にあります。一方で、認知症の有病割合や発症率の長期的な傾向性は、国や地域によって異なる(地理的な異質性)ことが知られています(Stephan BCM, et al.2018;PMID: 30347617/Prince M, et al. 2016;PMID: 27473681)
 
 認知症診断後の生命予後についても、国や地域で公式見解が異なり、米国や英国では4~8年欧州では1.5~10年と大きな乖離があります(2023 Alzheimer's disease facts and figures:PMID: 36918389/Alzheimer’s Society. The later stage of dementia. 2020/pflege.de. Demenz: Lebenserwartung
 
 また、認知症の病状経過においては、生命予後のみが重要なアウトカムとは限りません。記憶力の低下に伴う生活の質の低下介護者の負担増加施設への入所など、生活者の視点で考えると、認知症の予後に含まれる意味や概念は多様です。

 今回の記事では、認知症患者や介護者にとって、最も関心が高いアウトカムを文献ベースで考察したうえで、認知症の病状経過に関する最新の研究結果をレビューます。

認知症の病状進行における最重要アウトカムとは?

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