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いきなり喪主

寡婦になって、たくさんの、初めての体験をした。
驚くことばかりだ。
実際は、泣きながら驚いているのだが、ここでは悲しみについて強調はしない。
大前提として、ものすごく悲しいから。

夫が見えない人(つまり死んでしまって)から、最初の難関は葬儀だ。
たいして葬式なんて行ったこともないのに、いきなり喪主。
あまりのことに、苦笑いするしかなかった。

私たち家族は、近所に知られたくなかったので、セレモニーホールでのささやかな家族葬を希望した。
それに合わせて、担当の人がちゃんと選ぶものを指示してくれる。
時々家族の意見が合わず、困ったなーと思うことはあったが、最後は喪主の権限で決めさせてもらった。

喪主なんてしたことないから、落ち着かなくてゆっくり悲しめなかった。
一番悲しかった瞬間は、子供達が喪主の私と並んで、遺影や位牌、遺骨を持たされた時だ。
さすがにその時は、俯きながらボロボロ泣いた。

夫の身体と最後のお別れだったけど、悲しすぎて記憶は曖昧だ。
ただ、棺を閉じる前に、最後の彼にキスはできた。
そして、火葬後の本人確認で一人だけ最初にお骨と対面するのも、喪主の私だった。
肉体の最後と、魂の最初は、私が見届けることができた。

寡婦って、そんなことにしか喜びを見つけられない。

初体験はまだまだ続く。

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