主婦から寡婦

主婦から寡婦

最近の記事

忌引きじゃたりない

寡婦になった当時、仕事は週2回のパート勤めだった。 夫が仕事大好きだったので、私は時間の融通のきく主婦だった。 パートでも、公務員のような職場だったので、夫の忌引きは6日間も頂けた。 ありがたい。 しかしその6日間で出来たのは、びっくりして空を見上げることと、子供を気遣うこと、遠方の義父母を待って葬儀をどうするか決めることぐらいだった。 とにかく、手続きの連続。 その度に、電話口で「死亡したので解約したい」と言い、書類でも「死亡したため解約」と書く。 ああ、夫は死んで

    • 銀行口座は凍結されるのか

      夫が見えない存在になってから、すぐに、親戚にアドバイスされたことはお金を手元に置け、だった。 まことしやかに噂される、死亡届の後には銀行が凍結される、という話だが、私の体験をお話ししよう。 勝手に凍結されることはなかった。 全ての金融機関、保険、カードなど、こちらが手続きしない限り、勝手に凍結や解約されるものは一つもなかった。 むしろ、アドバイス通りにお金を下ろした結果、後で解約する時に、ゆうちょでは死亡届の日付以降に預金の移動があったことを理由に、解約手続きに時間がか

      • 出張

        夫はこの世を去ってしまったけれど、夫にやましいことはなにひとつなかった。 どうして私たちを残してこんな決断をしたのか、それは夫にしかもはやわからない。 そのかわり、私がはっきりと言えるのは、私は夫のことを愛しているということ。 これからも、ずっと。 彼はそれなりにモテたと思うが、残念ながらもう永遠に私の夫であり、浮気もできない身となった。 生きていた時も、私を大切にしてくれたし、なにより子供のことはものすごく愛して大切にしていた。 自死は残された人は、地獄だ。 夫が脱ぎっ

        • ただの寡婦じゃない

          警察からの電話があっても、しばらくのやりとりでは事故なのか、事件なのか、はっきりしたことは教えてもらえなかった。 最初の電話が17時頃。 20時頃、やっと、警察が、自宅に行くから家にいるように言われる。 どうやら、亡くなったらしいが、原因はわからない。 というより、まったく、なんにもわからない。 何が何だかわからない。 何かの間違いだと思う。 21時。 普通の車で、目立たないように警察の方が来て、写真で身元確認。 夫に間違いないが、まだ全然受け止められない。 事故?事件?

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          寡婦になった瞬間

          ある日突然知らない電話番号から、着信が残される。 日頃から知らない番号は出ないし、わからない時は検索するので、ネットで電話番号を調べてみる。 警察署の番号だ。 なんだろう? 落とし物かな? なんか交通違反したっけ? 初めに浮かんだことはそんなこと。 夕方で、出先だったから家に帰って掛け直すと、担当部署に繋がれて、私の名前や住所を確認される。 まだこの時点で、落とし物か何かだと思っている。 質問が増えて、家族構成に及ぶ。 新しいタイプの詐欺か何かかと思い始める。 個人情

          寡婦になった瞬間

          自死だと伝えるか問題

          人が亡くなった時、理由を言いにくいのが自死の特徴だと思う。 病気で闘病してて。 事故で助からなくて。 突然死で。 こういった時、聞いた相手は驚きと共に間違いなく悲しんでくれると思う。 余計な詮索や、ひやかしの無い、シンプルな悲しみだと思う。 それと比較して、自死はまず相手に言いにくい。 自分でって、何かやましいことでもあったの?と思う人も少なからずいるからだと思う。 では、これこれこういう理由で自死したみたい、と理由まで間髪入れずに伝えるのかと言うと、それも案外難しかっ

          自死だと伝えるか問題

          高価な買い物は続く

          判断しなければならないものは次々とやってくる。 お骨をどうするか。 墓をどうするか。 四十九日をするのか。 やるなら、位牌をはじめとする仏具をどうするか。 死んだことも受け入れられていない状態で、次から次へと課題が湧いてくる。 宗派、お寺、各家庭や地域の慣わしで、正解はない。 だから、こまる。 葬儀の方がまだ、プロの方が導いてある程度決めてくれるが、ここからはかなりの難問だった。 まず、夫の両親の希望を聞いた。 全部、好きにしていいという。 なるほど。 じゃあ、子供と相談し

          高価な買い物は続く

          仏壇なんか買ったことない

          喪主の次は死後の家とも言える、仏壇をどうするか、だ。 買ったこと、ない。 さらに、仏壇のない家で育ったので、何から考えたら良いのか、まったくわからなかった。 まず仏壇を買うかどうか。そこからだ。 それによって、位牌も作るかどうか、作るなら大きさをどうするか、決まってくる。 夫は長男で、実家にも仏壇があった。 しかし実家は遠方だ。 それにより ①仏壇を新たに買う ②仏壇は買わずに、実家に位牌を置く ③仏壇は買わないが、現在の家で供養する の3つの選択肢があった。 夫の実

          仏壇なんか買ったことない

          いきなり喪主

          寡婦になって、たくさんの、初めての体験をした。 驚くことばかりだ。 実際は、泣きながら驚いているのだが、ここでは悲しみについて強調はしない。 大前提として、ものすごく悲しいから。 夫が見えない人(つまり死んでしまって)から、最初の難関は葬儀だ。 たいして葬式なんて行ったこともないのに、いきなり喪主。 あまりのことに、苦笑いするしかなかった。 私たち家族は、近所に知られたくなかったので、セレモニーホールでのささやかな家族葬を希望した。 それに合わせて、担当の人がちゃんと選ぶ

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          その日は突然やってきた

          私にとって、まったく側になかった「自死」。 小説の中、ドラマの中、ニュースの中でしか知らなかった事。 元気いっぱい明るくて、活発な夫がまさか自死するなんて信じられなかった。 (今も、ひょっこり帰ってくるのではないかとおもっている。) 家族も仲良く、仕事も順調。 人が羨ましいと言ってくれるような、普通の、幸せな家族だったと思う。 それが突然。 理由は仕事上の悩みだったようだ。 夫にとっては、許し難い出来事だったのかな。 家族に相談することも、仲間や上司に話すこともなく、1

          その日は突然やってきた

          主婦から寡婦へ

          まさかの出来事。 大好きな夫が自死しました。 その後の出来事は、なかなか人には話せずにいます。 考えていること、困っていること、悲しいこと。 それだけでなく、暮らしていく上で済ませてきた手続きや工夫。 人にも言えず、 人にも聞けず、 現在進行形で死別と向き合う寡婦の記録です。

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