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メリーゴーランドで眠る

はじめまして、守株です。気絶という名前のお店でメイドをしています。メイド服と読書とコミュニケーションが好きで、無秩序とおかたづけが嫌いです。
わたしは文章を書くのが大大大大大好きなので、語りたい!と思ったことや書きたい!と思ったことをよく書き連ねる癖があります。そこで(せっかくメイドさんとして色んな人と交流する機会をいただいたこともあって)そんな徒然をえいっ!って気持ちで放流することにしました^.  ̫ .^ ੭ わたしという人を知ってもらうきっかけになったら、そしてもっと仲良くなるきっかけになったらうれしいな〜♡
来月もかわいく生きようね✝️


観た作品

①デッドプール1・2・3

名づけって行為はその人を役割のなかに閉じ込めてしまうからこそ、愛にも呪いにもなりうる。というかほとんどの場合呪いになるんだと思う。この世の宿命ってだいたい呪いで、だから自分の運命を見詰められる人が好き。その血の運命に殉ずるも抗うも自由だけど、呪いを超克して愛することができたらそれはもう本当にかっこいい。
デッドプールは下品で浮薄で壊れてるしメンタル弱いけど、そういう意味でとってもかっこいいヒーローだ。彼は何者かというと、元々傭兵稼業をしていた男で、強くて洒落てて彼女のことを超溺愛してる一般人だった。でもある日ガンの宣告を受け、それを治すために非合法実験の実験体にさせられ、結果的に整った容姿と引き換えに不死身の肉体を手に入れた。それからというもの彼は、自分で実験した科学者をブッ殺すために暴れはじめた。これが、死んだもんがちのギャンブルに負け続ける「デッドプール(死の賭け)」のはじまり。
デッドプールは(彼がマスクをかぶっているということが象徴しているけど)すごく自分を虚飾する。マスクの下(本当の顔や本心)をみられるのが怖くて仕方ないのはいまの自分に自信がないからだと思うし、自尊心が足りないのは恋人がいても埋まらない愛の穴があるからだと思う。親からの愛。原初の承認。これが足りないから彼は人に嫌われないようにわざとお気楽に振る舞っているのかなあ、という憐みを生ませないための最強の自己防衛、「第四の壁の超克」。自分が物語世界の住人であることも、「こちら側」の存在も特殊能力で彼は知っているのだ。だからこの映画にはメタ発言が多いし、誰も安全地帯から彼を憐むことは許されない。あらゆる世界と断絶できないデッドプールは可哀想で、可愛そうでもあるのだ。
対して、本心を打ち明けるときには必ずマスクを外すのも彼の魅力だと思う。「デッドプール&ウルヴァリン」で、ウルヴァリンに「お前は俺と違って世界を変えられる」って語り掛けるときに「お前」ってことを強調するために「you」って3回くらい言ってて良かった…。仲間思いで人を信用できて人に託すことができて、デッドプールをヒーローたらしめる所以が詰まったシーンだった。マスクをかぶってメタモルフォーゼすることで、運命という呪いを乗り越え生きる彼に、死の女神はいつか優しく微笑むのだろうか。

②かげきしょうじょ!!

男の世界に拒絶された演技の怪物が、女の世界で男装の麗人を目指す話です…。主人公の渡辺さらさは紅華歌劇音楽学校の予科生、つまり歌劇スターのたまごな15歳。飛び抜けて背が高く、「規格外」と評されるさらさちゃんは昔に歌舞伎を習っていたことがあって、一挙手一投足が優雅で整っていてふと目に留まる。「美しい獣」なんです…。でも向こう見ずで子供じみていて破天荒な振る舞いにその静なる美は隠されていて、だから不意に覗く天性の演技の才能が一等星のようにヤケに光って見える。
「あの星。一番高く、大きく輝く星。あれは渡辺さらさ。あの人はあそこへ行くべき人だ。」
⬆️渡辺さらさに投げかけられた、渡辺さらさのための賛美…。渡辺さらさは一番星にいちばん近くて、銀橋に連なって星座になれるの…。
渡辺さらさは一番星、広大で息の詰まる女の園でひときわ輝く素質と権利を持った男装の女神。でも渡辺さらさには彼氏がいて、(そのリアリティが「かげきしょうじょ!!」の良いところなんだけど、)本当につらい。女は女だけのものではいられなくて、いつかどこかの男の人と一緒になって、でもそれって星座ではなくて…、星を生み出す惑星になるってことだ。この彼氏との馴れ初めもすごく良いんだけど、語りたいことじゃないので割愛。
「かげきしょうじょ!!」が教えてくれることはたくさんあるんだけど、万物流転ってキーワードを強く推していきたい。全てのものは移ろいゆくけど、輝ける魂のうつくしさだけはずっと変わらない。いつか私のからだがしわしわになって、覚えてることが少なくなっても…、渡辺さらさはうつくしいままで、純真な星のきらめきを私に振りまくのだろう。

書いたもの

赤星

左様なら左様なら左様なら、は、いつもあなたのための言葉です。地獄のかみさまがまっしろな息を吐いたから、蜃気楼にとろけて消えてしまったまっくろな日傘。それでも今日も、あの曲はあなたのために真っ赤な星になるのです。
手をつないだまま逃げられたらどれほどよかったでしょう。がらんどうの肉体を抱きしめて、指の先や髪の先、肋骨の先にあなたはもはや無いのだと知ったとき、少女は草臥れ儲けなゆめから醒めて、朝日の中で昨日ののこりを平らげる。

ぐるぐる

3度目の台風が生まれた日、はじめて目の前をトンボが飛んだ日、きみは痩身の幽霊に取り憑かれてみるみるうちにゆめみたいになった。あの日午後6時の真っ赤な夕立をざあざあ浴びてきみは、きゅうと目を細め薄っすら笑ってみせた。ぼくの地平は奇妙にたわんで足元はぐらぐらした。ひらりと肋骨を開いてぎゅうぎゅう唸る胸の軋みを真っ赤な血の畝リをきみのきみだけのための畝りを畝りを畝りを晒け出せば楽に傷つけるから号哭は夕立に任せるしかなかった。ゆめじゃなくてよかったね、とぼくの中のきみが言った。きみはなんにも言わなかった。道路の先で猫をいぢめている岡野君をみていた。ぼくはちいさくにゃあとないて、それきりこの日に閉じ込められてしまった。

灰色の街から

わるいゆめから醒めて、じごくのはじまりっ。改装中の映画館のしたで、ぼくはなんにもなかった。きみがかがやくための闇。きみと指切りげんまんしても、しても、しても、しても、きみの小指の赤色はかみさまが持っていってしまったみたいでどこにもなかった。最後の吉報。この街はきみの、きみの、きみの、きみのにおいがして、ぼく、も、ぐちゃ、ぐ、ちゃになれば真っ赤な臓器まで君に照らしてもらえるんじゃないかしら。きみのうえをゆく鳥やら蝶やらをつかまえては、祈りをこめて、ころ、して、映画のワンシーンみたい?否、きみのために生きるよ。きみの小指の届かない、ぼくのじごくっ。

由美子ちゃん

由美子ちゃんのおうちの卵焼きは甘あくて、それが玉のようにうつくしいあの子の唯一の瑕だった。となりの団地に匿された小公女。お兄ちゃんのお下がりの青いランドセルをゆらしてわたしの前を行く、スラリと伸びた背は中学生よりもきらきらしていた。長い睫毛。長い黒髪。長い肢体。短い洋服。由美子ちゃん。
その日の豚肉はいつもなんとなく乳臭くて、目の前の席の由美子ちゃんはそれを貴族のごとき箸さばきでもぎゅもぎゅ食べた。プールのあとの教室は噎せかえるほど塩素の臭いで蒸していた。水気を帯びた肌にじりじり12時半の真っ黄色な陽が照りつけて、逃げ水。由美子ちゃんの水色のTシャツも汗と水滴でじんわり湿って青色の水玉模様がぽつぽつ滲んでいた。由美子ちゃん。由美子ちゃん。『ごんぎつね』の音読でつかえては、先生にため息をつかれていた一時間目の由美子ちゃん。計算テストの表面を最後までずぅっと、ずぅっと、うなだれながら解いていた二時間目の由美子ちゃん。リコーダーのドレミの運指ができなかった三時間目の由美子ちゃん。
海を泳ぐ魚みたいにからだを煌めかせて、クロールする四時間目の由美子ちゃん。由美子ちゃん。由美子ちゃん。あなたも、肉なの?由美子ちゃんを食べたらどんな味なのかしらん。咀嚼を続ける由美子ちゃんの口許を見つ見つ乳臭い豚肉を、ぱくっ…………。由美子ちゃん。肉づきがわるいので、骨ばかり残ってしまって、血の味も、あまり、しなくて、でも…。由美子ちゃん。きっとあのおうちの卵焼きみたいに甘あい味はしなくて、きっと、きっと……。ふと、由美子ちゃんの呼ぶ声に顔を上げる。
「これ、ね」
肉を箸で刺して、ひとこと。
「お母さんのにおいがする」
ああ。甘あいよ。由美子ちゃん。いつかふたりで海に行こうね。

終点にて

今日にはさよなら。午前五時の水色を天使が回天すると消えてしまうわたしの代わりに、ただあたしだけが暗がりに湖をさらけ出して天使の口づけを待っている。
毒林檎を齧る。それで、一日。きゅうくらりんにとろけるあたまで天使の口づけを待っている。それで、一日。鈍行列車で眠る。
あの日裂けたきみを燃やし終わったあとは、肉体なんてなくなった場所でついに、真っ白のフリルに看取られてあたし、永遠の海できみと不道徳を踊りたい。天使の口付けを待っている。

天国へ行こう

駅前ビル3階のジムでいつもハムスターみたいに自転車をから回している下川くんは、帰りは必ずマクドナルドに寄って無意味な自己研鑽に磨きをかけている。3回目のデートの日、隣町のカラオケに持ち込んだ追分だんごをほおばったあと文学の死んだバンドの曲を歌って、歌って、歌いつくして、疲れはてた下川くんは気の抜けたメロンソーダを一気に流しこむと私を無造作に抱きしめた。まるでそうするのが当たり前みたいに。からっぽの下川くん。体温がなんだか妙にあたたかかった。
下川くんはメロンソーダだった。本物に乗れないくせにジムで自転車をから回して、偽物のステージでバンドマンの仕草をする。魔法が使えないのに魔法使いのような立ち居振る舞いをして、150円出せばよりどりみどりのドリンクバーの一つだなんて知らないで。
「好きだよ」
そればっかり、馬鹿の一つ覚えみたいに、ああ。きわめて道徳的で、健康的で、面白みに欠ける、けど…。
「わたし、も」
天国に行くのはきみのような子供で、ぢごくにいくのはきっと私だ。下川くん。きっと、大人になっても、きっと魔法使いの振りを続けてね。

君を、きみを、きみを、きみを、君を!見つけにゆくのです。
曇りの日は君の真っ白がなんだか水面に映えて眩しいから僕は何だかまだここにいなければいけない気がします。君には聴こえないかも知れない特別な歌をうたおう。君がきみがきみがきみがきみがくれたあえやかな幽体だけをただ優しく撫ぜる。
かどわかして、でも守ってね。白波に紛れてきっといなくなってしまうとおもうし。
雨降る晩の別れ際に君がくれた誰かから盗んだ傘みたいな罪悪や倒錯を探して切った十字の先に悪天候の似合う君を思います。願わくば君を向いて咲く向日葵になりたかった。白昼夢のいろした波間はきみがひろげた裾野みたいでつめたい。
きみに温度をさがして生きる僕を、闇のなかからみつめていて。

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