ベルクソン 著 ドゥルーズ 編『記憶と生』を読んで


感想本文
 ベルクソンは、持続のなかに多様性と単一性をみていて、作用と反作用のように、一方だけを分析しても、それは現象の一側面でしか無いと考えており、混沌や無が、秩序や実在より少ないと考えるのではなく、混沌や無は、知覚の主観的な記憶の収縮が分割する以前であり、混沌と無からなる虚無の誤謬に陥らないような努力を携えながら、《直観》という、動き自体に内在しつつも主観的な体験、記憶を一旦外した、純粋持続という相互浸透を方法とし、時間の厚みを措定して、物質と記憶、科学と形而上学 ※1の両方を考えたのではないだろうか?そこには、観念論と実在論の超越の工夫があるのでは……、と考えている。
 とはいえ、ミッシェル・セールが『分布』で、ベルクソンはオーギュスト・コントらがやろうとしていた事を繰り返しているにすぎないと建設的な批判を述べていた箇所 ※2が自分の中で引っかかっているので、ベルクソンだけに引き込まれ過ぎないように努力しながら、ベイトソンも参照して考えていきたい。

※1 プラトンからプロティノスまでのキーワード
 世界と魂、肉体、不死性、真理、理性、知性、神、浄化、節制、魂(自己)への配慮、三位一体、超越論的、形而上学、直観、理念、生命、永遠と時間、思考、感覚、場所的な運動と停止、栄養摂取、植物的魂、動物的魂、理性的魂、現実態、幸福、はたらき、よく生きる、分別、共通の場所、徳・卓越性、感情、能力、制作、自己及び世界との関係、状態・(性向)、原子、調和、魂の降下、一者(ト・ヘン)、欲求、自由な意志、同一性、永遠(アイオーン)、時間化(クロノオー)、空間、使用と享受、道具、記憶・知解(理解)・意志、輪廻転生、神による創造と救済、存在者性(ペルソナ)、人格

※1 ミッシェル・セール『分布』から気になった箇所の引用
 ベルクソン哲学の巨大な成功は、彼が躊躇なく〈科学〉の、〈知性〉の、そして実践の諸成果を、直観の、本能の、そして〈形而上学〉の諸成果から切り離したことに起因している。われわれがいるような文化圏にあっては、この種の分割を条件にしない限り、哲学が普及しないのは、ほぼ確実である。よい立地を占領しうるためには、悪がどこにあるのかをどうしてもいわなくてはならないのだ。 p. 171

ベルクソンの〈科学〉、私はこのことばを彼が批判し、知性の側に置いた科学という意味にしているのだが、これは科学ではないと改めていわなければならない。まず第一に、科学が大文字で存在するなどということは恐らくはなかったことだからであるし、またとりわけ、彼がそれについて語ることのすべては、容易にお里の知れる日付つきの知、つまりあるパラダイムを驚くべき忠実度で復元したものにになっているからである。歴史的に評定可能な周知の段階、これは再びフランス学派の段階てあって、洗礼名をあげるならばラグランジュ、ラプラス、フーリエの足跡が残り、哲学的にはオーギュスト・コントによって代表される。この点ではベルクソンが誠実さに欠けるところはないのであって、ベルクソンの読者の眼力が無邪気だとしても、私の責任ではない。彼は絶えず、実証科学という用語を用いているが、そこに実証主義的科学を読み取るのに、込み入った解読の操作は不要である。したがって、この科学というのは、まさに実証主義が最終的なものとして通用させようとした、諸段階のうちの一つなのであり、十九世紀が理工科学校やその二番煎じの形骸化と衰退を通して運んでいる特殊なモデルなのである。これこそ、数学に天賦の才を持っていたといわれる若い哲学者が、フランスの教育界で普及していた教科書から学んでいたものである。何人も何の苦労もなく、ベルクソン哲学が指摘した特質や欠陥をベルクソンのうちに見出すことができる。ラプラス、ラグランジュ、コント、フーリエを読み直してみるだけで、ベルクソンのやっていることが彼らの要約だということがはっきり分かる。 pp. 171−172

 分析と批判は、コントやフランス学派や標定可能な特定の歴史的モデルには及ぶのであるが、科学一般に及ぶことはないのだ。それらはたとえばボルツマンに及び、エネルギー論と原子論との論争における態度的決定をもたらす。こういうわけでベルクソン哲学は科学と形而上学の間の、時間と空間の間の、時間と空間の外の、歴史の外の中空にぽっつり浮かんでいるわけではなくて、同時代人たちを興奮させた討論において態度を表明しているのである。だからこそ二分法があり、分割があるわけだが、これはつねに〈最後の審判〉の戦術である。 p. 173

参考文献
アダムタカハシ「魂の不死の哲学」第一回〜第四回
金森修『〔シリーズ・哲学のエッセンス〕ベルクソン 人は過去の奴隷なのだろうか』NHK出版
ベルクソン『記憶と生』未知谷

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